314神猫 ミーちゃん、強さより癒しです。

「未知の領域へ出発にゃ!」


「み~!」


「にゃ!」


「「おぉー!」」


「お前らいつも元気だな……」



 腹ペコ魔人達はこれがデフォルトですよ。と言うより、ジンさんとルーさんはまた二日酔いですね。



「ジンさんのお誘いは断れないんだよ。ネロ」


「なんだ? ルー。それは嫌々、飲んでるって事か?」


「そ、そんなことないっす! 喜んでお供するっす!」



 ルーさん……弱ぇ。長い物には巻かれるんだね……まあ、俺もだけど。



 さて、今どこに居るかと言うと流れ迷宮の五階層、只今絶賛建築ラッシュの廃墟の街。目の前に六階層に続く階段がある。そう、迷宮探査の続きである。もちろん、ラルくんをモフりながら嫌々するレティさんを、無理やり引っ張って連れて来ている。



「くっ。我が夫でなければ命を刈り取るものを……」



 なんか物騒な事を言ってますが無視して先に進みましょう。今回は最下層まで行くからね。



「み~!」



 ちなみに、廃虚ではギルド職員以外にクイントの大工さんと迷宮の獣人の方達が建物を修復したり、新たに建てている。獣人の方達は大工さんについて技術を学ぶという意味合いもある。迷宮の外で新たに村を作るのに役に立つ事だろうから。




 階段を降りた六階層の敵は、スコーピオンローグとピルバグスイパーとわかっているのでサクサク進みましょう。取り敢えず、安全地帯を見つける事が最優先で、余裕があれば隠し部屋も見つけたいところだ。


 ルーさんが先頭を歩き索敵と罠が無いかを調べながら歩く。流石に六階層ともなると罠があるようだ。今のところ、ルーさんが二つ発見して回避している。


 一つは石つぶてが飛んでくる罠。罠のある場所を通ると壁に穴が開き、石が飛んでくる。試しに罠を起動させると、一セン位の石が大量に飛んでくる。当たると痛そうだけど、致命傷にはならないと思う。どちらかと言うと嫌がらせのように感じる罠だ。


 もう一つは、通路の一部を踏むと睡眠効果のあるガスが吹き出す罠。どうして睡眠効果があるかわかったかと言うと、踏むなと言ったのにペロが踏んだからだ……興味本位は猫をも殺すを地で行った困った奴だ。ミーちゃんのミネラルウォーターを顔にぶっかけて起こしてあげたけどね。



「みぃ……」



 出てくるモンスターはジンさんが宗方姉弟に率先して倒させている。鬼コーチは健在。倒したモンスターはミーちゃんバッグに収納。クイントでは売れ無いけど他でなら売れるはず。うちの私兵団の支給防具として加工してもらっても良いと思う。


 しかし、広い。とにかく広い。五階層が村がいくつもある広さだから、六階層もそれくらいの広さがあったらどうしようかと思ってしまう。右回りで進んでいるけど、未だに正四角形の角に届いていない。と言うより、本当に正四角形なのか? 一階層から四階層までがそうだったから、そう思い込んでるだけなのかもしれない。


 長方形や三角形であってもおかしくはない。今のところ円では無い事は確実だけどね。外周を回っているからそれは間違い無いけど、下層に降りる階段や道が中央付近にあったら涙が出るね。



「そう言えば、カオリン達の先輩方、ロタリンギアに無事に帰還したそうだぞ」


「ふ~ん」


「あの中から生き残ったって、蛆虫並の生命力ですね」



 蛆虫って……まあ、俺も奥村さん以外はどうでも良いけど、ついでに宗方姉弟は会談中に殺された事になっている事も伝えておく。



「階段なんてあったかなぁ?」


「み~?」


「姉さん……階段じゃなくて会談ね」


「み~!」



 カオリンの中では階段で転んで死んだ事にでもなってるのか? 三人共生き残っていた事から火種は消えるどころか、更に燃え上る事だろう。必ずまた、相見える事になる。穏便に話し合いで済めば良いけど、まあ無理だろうね。あぁ、やだやだ。



「敵さんがお出迎えだぞ」



 ジンさんから声が掛かる。スコーピオンローグの集団だ。こいつら今の俺達にとってはザコと言って良い。注意するのはハサミと尻尾に付いた毒針くらい。毒にやられたとしても、ミーちゃんのミネラルウォーターがあるからまったく問題無し。まあ、痛いとは思うけど。


 宗方姉弟が出遅れた事から、ペロとセラが飛び出しあっという間に倒し終わる。



「にゃんこ先生! 今、敵に触れないで切りましたよね?」


「飛ぶ斬撃?」


「フフフ……そうにゃのにゃ! ジンにゃんに教えてもらったのにゃ!」


「「おぉー」」


「教えたつもりはねぇんだが……」



 どうやらジンさんの飛ぶ斬撃を見せてもらい、自力で覚えたようだ。ペロって何気に天才?



「にゃははは……まだまだ、だけどにゃ!」



 皆、強くなってる。俺も頑張らないと。



「み~」



 ミーちゃんは、もう十分に強いと思うよ? あんまり頑張り過ぎるとムキムキマッチョなミーちゃんになっちゃうよ?



「みっ!?」



 ミーちゃん、自分がムキムキマッチョになった姿を想像したようで、嫌な顔をしている。ミーちゃんは今のままが一番ぷりちーだよ。



「み~」



 ミーちゃんが頑張るとしたら、いかに皆を癒してあげるかって事じゃないかなぁ?



「み~!」



 ミーちゃん、我が意を得たりって顔してペロペロしてくる。レティさんがそんな俺達を見て羨ましそうに見てる。しょうがないので、ミーちゃんにレティさんも癒してあげてとお願いして、レティさんに抱っこさせるとレティさんとても良い顔になりました。流石、ミーちゃん即効性抜群。



「み~」



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