313神猫 ミーちゃん、クリスさんの歓迎会をする。
家に戻ってクリスさんの歓迎会の準備をする。
腹ペコ魔人達が居ないので量は少なめで良いだろう。エフさんと一緒に料理を作っていく。グラタンにキッシュ、ピザ、そして魚介類をふんだんに使ったパエリア。ミーちゃん用に白身魚のムニエルも作ってみた。
ヤンくん親子も帰って来たので歓迎会を開始。ルーカスさん達には既に紹介してるので、主にヤンくん親子になる。お祭りの時に会ってはいるけど、ちゃんと紹介する暇がなかったからね。
「よろしくお願いしますね」
「み~」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「綺麗~。お姫様みたい」
「……」
イルゼさんは常識人だから問題無いだろう。カヤちゃんはクリスさんを見上げて目を輝かせている。ヤンくんは……顔を真っ赤にして俯いてる。綺麗なお姉さんを前に言葉が出ないようだ。思春期の少年にはドキドキだろう。でも、うちの他の女性陣も美人揃いだけど、ヤンくん普通に接してたよね? 一目惚れかな?
みんな楽しく食事をながら談笑をしているなか、レティさんが厳しい顔をしている。どうしました?
「前にも会ったな、あの女。上手く隠してるが、この私が目眩する程の強者だ。何者だ? 少年」
ヴィルヘルム支店で働いているのが、ドラゴンと言うのはルーカスさん達にも秘密にしている。実力がわかるレティさんと変に軋轢ができるのも不味いので、誰にも聞かれないように耳元でクリスさんの正体を囁いた。
「!?」
レティさん飲んでたワインを盛大に噴き出した。ちょっと行儀が悪いですよ。
「本当か!? 少年!」
「本当ですよ」
「み~」
ムニエルの衣をよけて白身だけを食べてたミーちゃんも、レティさんに肯定の意を示す。衣はお気に召さなかったようだ。やっぱり脂っこいものは苦手みたい。
「後できっちり理由を聞かせてもらうぞ。少年」
面倒くさいけどしょうがないか。レティさんに頷いておく。ラルくんの事はどうしようか? ブレスを放った所を見られているよね? 取り敢えず、レティさんには話しておこう。いつもラルくんをモフっているレティさんが、ラルくんがドラゴンだって言ったらどんな顔をするだろう? ちょっと楽しみだ。
歓迎会も終えてミーちゃんとお風呂に入り寝ようとしたところで、レティさんが部屋に入って来た。ノックくらいしてください……。
ミーちゃんはベッドの枕元で丸くなり、スピスピと寝息が聞こえ始めた。仕方ないので、テーブルでお茶の用意をする。こんな時、水スキルは便利だ。簡単にお湯を用意できるのでお茶がすぐ飲める。
「それで、何が聞きたいのですか?」
「どうしてドラゴンがここに居るのだ。少年」
「ヒルデンブルグの守護竜と知り合いなのは知ってますよね?」
「ああ」
「守護竜は烈王さんって言うのですが、烈王さんに頼まれたからです」
「何をだ?」
「人族の生活を経験させて欲しいと」
ヴィルヘルム支店で働いている残りの三人もドラゴンで、新たに何人かまた増えることも話しておく。
「人外魔境だな……」
レティさんがそれを言いますか? レティさんだって俺から見れば既に人の枠を超えているように見えるけど。
ついでに、クリスさんは烈王さんの娘だとも言っておく。
「……」
もう、言葉も出ないらしい。けどね、最後にもう一つ言わないといけない。クックック……。
「ラルくんも烈王さんの末子なんですよ」
「!?」
レティさん、いつも眠そうな目を大きくけて驚いている。ここまで驚いているレティさんを見たのは初めてかもしれない。超レアだ。
「ラ、ラルくんが、ド、ドラゴンだとぉ!」
気付いていなかったようだ。背中に羽があるし、普通に飛んでいたところも見てたはず。何よりブレスを放つところ見てましたよね?
「変わった犬とばかり思っていた……」
おいおい……
「少年!」
「はい?」
「も、もふもふしたら不味いのか?」
この世の終わりかのような顔色をしているレティさん。そんな顔でも美人です。もふもふとお子ちゃまに関わらない時の、無表情なレティさんとのギャップにちょっと笑ってしまう。
「笑事じゃないぞ! 少年!」
「問題無いですよ。逆にもふもふしてあげてください。喜びますので」
「おぉ、そうか……」
ほっと安堵の表情を見せるレティさんをよそに、ミーちゃんは寝息をたててぐっすりだ。
「すぴぴぃー」
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