312神猫 ミーちゃん、またも出番無しです……。
目の前にやつれた顔のゼストギルド長が居る。それでも、お茶はゼストギルド長がいれてくれた。ゼストギルド長特製ブレンド茶は美味しいから嬉しい。お茶が配られお互い席に着いた所でお煎餅を出した。
「ん? お菓子かのう?」
「お米を潰して醤油を塗って焼いたものです」
ゼストギルド長の特製ブレンド茶は美味しいけれど、それに合う茶請けがなかった。だから、お煎餅を持参した。ただ醤油を塗ったものと、砂糖醤油を塗ったものを昨日うちで作って用意しておいたのだ。基本、台所を預かるエフさんに丸投げだけどね。
バリバリとお煎餅を食べて特製ブレンド茶をずずずぅーっと飲む。完璧。
「旨いのう。儂は甘くない方が好みじゃな」
「私は甘じょっぱい方が好きですね」
意見が分かれたけど人それぞれだから気にしない。ちなみに、俺は甘じょっぱい方が好き。
「して、今日来たのはこの老体を労いに来た訳ではあるまい?」
まあ、たいした理由で来た訳ではないのですけど、取り敢えずフォルテに人を送ってくれた事への礼を伝える。
「最初に送った者以外にも追加で五十人程あぶれ者どもを送っておいたからのう。育てるのはグレンに任せる。そうそう、移動費はネロ君持ちじゃからな」
パミルさんが明細書を渡してきた。しょうがない……必要経費だ。今回、フォルテに送った者達ちはハンターではなく、スラムのチンピラだそうです。職にあぶれて腐っていた若い連中を、スラムのまとめ役に頼んで集めてもらい送り出したそうだ。近々第二陣も送り出されるとの事。手紙でグレンハルトさんに根性を叩き直すように言ってあるらしい。南無。
「あと、百人程度は送れるがどうするかのう?」
「お願いします」
旨い食事と適度な運動をさせれば強くなると誰かが言っていた。うちは福利厚生がしっかりしてるので衣食住は問題無い。後は、グレンさんとローザリンデにお任せだね。
バリバリ、ずずずぅーとお茶とお煎餅を楽しみながら談笑していると、突如ゼストギルド長が爆弾を落としてきた。
「ロタリンギアに勇者が戻ったそうじゃ」
ゼストギルド長がロタリンギアに送っていた密偵と、ようやく連絡が取り合えるようになったみたいだ。命懸けだそうだけれどね。
「死んでなかったようですね。何人ですか?」
「三人共じゃ。こちらに来とる二人は死んだ事になっとる」
そうか、生きてたんだ。死んでもおかしくない状況だったのにね。しかし、ロタリンギアでは民衆に宗方姉弟はルミエール王国が話し合いの場で、潜ませていた兵に襲撃され殺されたと言う事になっているそうだ……呆れてものが言えない。
「民衆はそれを信じてるのでしょうか?」
「民衆はそれを信じとるよ。ロタリンギアは悪の枢軸から民を救う為に戦ったとの」
「偽勇者達はどう思ってるのでしょうね?」
「わからんのう……」
しかし、なんともシビリアン・コントロールが上手いようだ。それで、勇者も殺されたと情報を流せば、民衆は更にルミエール王国を憎むようになるだろう。裏で手を引く奴は相当に頭の切れる奴らしい。
「現国王は傀儡。後宮で飼い殺しのようじゃ。まだ、誰が黒幕かはわかっておらん。ネロ君が言っておった魔王の件も、こうなると正直捨てきれん。現にロタリンギアに接する魔王領の動きが活発になっとるそうじゃ……」
「オークキングの件はどうなっているのでしょうか?」
「一進一退のようじゃな。オークを倒せば
ゴブリンは倒したところでたいした価値はないけど、オークは美味しい。いろいろな意味でね。ゴブリンは数で、オークはその個体能力で厄介。どちらが良いとは言いきれない。
「じゃあ、せっかくなので
「ネロ君!? 持っとるのか!」
あれ? そう言えばクイントの流れ迷宮の事話してなかったっけ? ゼストギルド長とパミルさんに流れ迷宮の事を話して聞かせる。
「なんともはや……」
「ほんと、ネロ君て巻き込まれ体質よね……」
なんですか? その巻き込まれ体質って……結果良ければ全て良しなんですよ!
「して、オークは王都で卸すのかのう?」
「ハンターギルドで卸すのが良いのでしょうか? 直接、商業ギルドに持ち込みは駄目ですか?」
「そうじゃのう……ハンターギルドに卸すのが筋じゃろうな」
「卸値は下がるけど、元はハンターギルドで管理する迷宮で手に入れたものだからしょうがないわね。ハンターギルドへの貢献と思って我慢しなさい」
ゼストギルド長にはお世話になってるから問題は無い。個人的にゼストギルド長とパミルさんに高級肉を差し上げる事にして、取り敢えず数体をハンターギルドで売る事にした。全部売らないのは価格破壊が起きてしまう恐れがあるから。せっかくの儲けが大損になる恐れがあるからね。
オークの買い取りをしてもらうとギルド内は騒然となった。面倒事に巻き込まれるのは嫌なのでさっさと帰りましょう。
ミーちゃん、帰るよ!
「み~」
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