311神猫 ミーちゃん、実は大金持ちでした。

 さて、どうしよう……このままミーちゃんバッグに封印か?



「換金は難しいと思うわ。どこかに土地を買ったら?」


「国外にブロッケン男爵名義で土地を購入して、神猫商会で使うのは如何でしょう?」


「み~?」



 何故か、ニーアさんはカイを抱っこしている。それを羨ましそうに侍女軍団が見ている。まあ、神猫商会は今の規模でも手が回らないのに国外に店を作っても把握しきれ無いと思う……けど、まあ一つの手ではあるね。



「なら、ブロッケン男爵領を広げると言うのはどうかしら?」


「み~?」



 今、領主不在になっている東辺境伯の領地で、ブロッケン男爵領フォルテに接している部分の領地を買わないかと言う事らしい。その場所は元東辺境伯領の西南部でロタリンギア王国とは接していない。大きな街はないけどフォルテと並ぶ穀倉地帯なので、フォルテで管理すれば良いと言っている。



「次に東辺境伯になる人が文句を言いませんか?」


「ロタリンギア王国が存続する限り、東辺境伯を置く気はないから安心して良いわよ」



 辺境伯を置いたら置いたでロタリンギアがまた暗躍するのは目に見えてる。それに、現王様は貴族を縮小する政策を進めている事とロタリンギアと接していることから、直轄地にして第一騎士団を常駐させるつもりらしい。王都が空っぽだけど良いのか?


 王妃様は俺の疑問を汲んでくれたようで、新しい騎士団の設立の話があると教えてくれた。訓練が終わり落ち着いたら第一騎士団と交代するらしいね。



「だから、安心して買ってちょうだい。管理する者が居なくて困ってるってアーデルベルトが嘆いていたから喜ぶわよ」



 正直、領地は欲しいと思わないけど穀倉地帯ってのは魅力的。今後、神猫商会で蒸留酒造りをしていく事を考えると悪くない話ではある。管理もフォルテでおこなうのであれば新たに代官を立てる必要も無いので悪くない。グレンハルトさん達が忙しくなるくらい? 良いのか?



「わかりました。買わせて頂きます。おいくらですか?」


「そうね。二千五百億レトでどうかしら?」



 ベルーナの本店が五億レト、五百倍。広さがどれくらいあるかわからないけど、安いのかな?



「構いません」


「み~」


「毎度あり~。レーネの誕生会の日に割譲する事を正式に通達してもらえるように、ユリウス様にお願いしておくわ。そうね、名目上はあの剣を献上してくれた謝礼って事になるかしら」



 なんか上手く乗せられた気がしないでもない……深く考えるのはよそう。


 ミーちゃんに国貨を二千五百枚出してもらう。ニーアさんと侍女さん達総出で数えてます。大変そう。正式な書類関係は後日、家の方に届けてくれるそうです。また大量の書類が届くのだろうね。ルーカスさんとカティアさんに頑張ってもらおう。カティアさんは妊婦さんだからほどほどに頑張ってもらうけど。



「み~」



 王妃様と宮廷料理長のお菓子を楽しみお茶を飲んでいると、今後の予定を聞かれた。当面は迷宮探索、その後は神猫商会の本店の営業準備と話す。



「本店の営業準備?」


「み~」


「はい、ヴィルヘルムに支店があるのに本店が無いのも変なので、ベルーナに土地と建物一式を購入しました」


「ネロ様。ベルーナでは土地の購入はできません」



 ニーアさんの言う通りなんだけど、抜け道はあるようですよ。なので商業ギルドでのいきさつを聞かせる。



「広場前の一等地ですね……」


「ネロ君はベルーナで一番の土地持ちね……良ければいくらで買ったのか教えてくれない?」


「五億レトです」


「ブロッケン男爵の資産に手を付けたのかしら?」


「いえ、個人資産と言うか神猫商会の資産ですかね?」


「み~」



 烈王さんからもらった宝石の原石だから個人資産の方で良いと思う。名目上は融資って事になるのかな?



「ネロ君と神猫商会の総資産ってどのくらいあるの?」


「秘密です」



 国貨は普通に使えないから別として、迷宮で手に入れたアルサイト硬貨も同じ位ある。烈王さんからもらった金貨も宝石の原石もほとんど手付かずの状態。これにブロッケン男爵の資産を合わせると、俺だって総資産がいくらあるのかわからないね。



「ネロ君ってお金持ちなのね。奥さんになる人が羨ましいわ」



 ニーアさんが王妃様の耳元で何かつぶやいている。



「あら? そうなの? もう二人も居るのね。見た目によらず手が早いのね」


「み~」



 ニーアさんの姪がうちで働いてくれてるとは言え、うちの情報がダダ漏れのようです……。


 それから、ミーちゃん何故そこで、そうなの~って相づち入れてるんですか?



「み~?」


「ついでに、エレナもどうかしら?」


「謹んでご辞退させて頂きます」


「あら、エレナが悲しむわ」



 エレナさんは王位継承を放棄したとはいえ、ヒルデンブルグ大公国の大公の姪で王妃様の従姉妹になる。厄介事に巻き込まれるのが目に見えてる。それに、一夫多妻が認められてるとはいえ、一夫一妻が常識の中で育ってきた俺としてはユーリさんとレティさんだけでもいっぱい、いっぱいですよ。


 王妃様達にカイの事をお願いして王宮をあとにしてハンターギルドに向かった。



「ゼストギルド長が生きてたら、お会いしたいのですが」


「はぁ……ちゃんと生きてるわよ。ネロ君」



 パミルさんが抱っこしていたテラが俺に向かってダイブしてくる。嘘です、ミーちゃんにです。でも、傍から見れば俺にダイブしているように見える……お姉さん達の目が怖い。



 パミルさんがギルド長にアポを取りにいってる間に、手の空いている受付嬢のお姉さんにミーちゃんとテラを渡す。お姉さん両手に花状態で満面の笑みでミーちゃんとテラにスリスリ。だんだん満面の笑みからだらしないニヤケ顔に変化していく。俺は見てないふりしてますよ。



「みぃ……」


「みゅ~?」




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