310神猫 ミーちゃん、カイを王宮に連れて行く。
神猫商会ヴィルヘルム支店に新たに二人? のドラゴンを送ってくれる事になった。これで今いる四人から二人ベルーナの方に来てもらう事が可能になる。取り敢えず、クリスさんに来てもらおう。ラルくんが喜ぶと思うからね。
「み~」
ヴィルヘルム支店に飛んで事情を説明して、クリスさんに荷物をまとめるようにお願いすると中ぐらいの手提げバッグ一つだった……そんなものですか?
少し心配になったので他の三人にも話を聞くと、下着や着替え数着以外ほとんど荷物がないようだ。
給料何に使ってるの?
「み~?」
聞けば休みの日に高級レストランなどに行ったり、お酒を飲んだりするのに使ってるそうだ。ドラゴンだけに物欲はさほど無いらしい。まあ、ちゃんと休んで楽しんでくれているなら問題無い。
クリスさんを連れてうちに帰ると、ラルくんがクリスさんに飛びついてペロペロする。ついでにルーくんも一緒になってクリスさんをペロペロしてる。ルーくんはさておき、ラルくんはどう見ても犬にしか見えない……。
「シュトラール。これから私もここでお世話になります。よろしくね」
「きゅ~」
「がう」
クリスさんをルーカスさん達に紹介して、本店が整うまではイルゼさんと一緒に神猫屋で働いてもらう事を伝えた。クリスさんを部屋に案内してもらいゆっくりしてもらう。夕食はクリスさんの歓迎会だ。
居間に行くとカイを抱っこしたままうたた寝しているレティさんが居たので、明日からまた迷宮探索に行きますからねと言うと
「私は忙しいからパスだ」
と、のたまいやがった。何が忙しいのですかと尋ねると
「カイを独りぼっちにはできない。私が傍にいてやらないと」
うちにはルーカスさん達も居るしルーくんやラルくんも居る。みんな面倒見が良いので問題無い。それにカイはこれからお泊まりだ。
「安心してください。ユーリさんが戻るまでカイは王宮でお泊まりです。兄弟が居るので全然寂しくないですよ。レーネ様や王妃様も居ますからね」
「み~」
「……」
なんですか、その地獄にでも落とされたような顔は。さあ、カイ王宮に行くよって思ったら、レティさんカイを抱っこして逃走を図った……。レティさんを捕まえてカイを保護するのに無駄に時間を喰ってしまった。また、少年はオーガだー! とかレティさんが騒いでいるけど、無視して王宮に行こう。
今日はスミレが居ないのでベン爺さんに馬を一頭用意してもらった。葦毛のおとなしい女の子だそうだ。ミーちゃんは顔見知りらしく、お鼻とお鼻をくっつけてご挨拶してる。
王宮に着くといつも通りニーアさんが馬丁さんと一緒に来たけど不思議な顔をしている。スミレが居ない事を不思議に思ったのだろう。
「ミーしゃん! カイしゃん! ペロしゃん……」
「スミレちゃんが居なかったようだけど、どうしたのかしら?」
レーネ様はやっぱりペロの事が大好きらしい。腹ペコ魔人恐るべし。
ユーリさんが故郷に帰るので安全の確保の為、スミレに乗って行ってもらった事を話す。
「そう、それでカイちゃんが居るのね」
ミーちゃんはルカ、ノア、レアと猫団子状態。カイはレーネ様に抱っこされてスリスリされてます。
「ユーリさんが戻るまでカイを預かって頂けないでしょうか? 兄弟達と一緒に居れば寂しくないと思いますので」
「喜んでお引き受け致しますわ」
猫団子から抜け出したミーちゃんが王妃様に挨拶に向かう。猫団子は俺の足元に来てスリスリしてきたので一緒に抱きあげてなでなでしてあげ、レーネ様が抱っこしているカイの元に連れて行った。
「ミーちゃんもカイちゃんと一緒にお泊まりしない?」
「みぃ……」
「やっぱり、ミーちゃんはネロ君と一緒が良いみたいね」
「み~」
何も用事がなければミーちゃんもお泊まりしても構わないのだけれど、明日から迷宮探索を再開するのでミーちゃんが居ないと困ってしまう。腹ペコ魔人達が主に……。
「それで、迷宮で何か面白い事があったみたいね。ネロ君」
むむ。なんだその意味深な問いかけは……どこまで知ってるんだ?
王妃様はニコニコしながらミーちゃんをモフってます。お茶の用意をしているニーアさんに顔を向けるも無表情を返される。
「どこまでご存知なのですか?」
「み~?」
「オークと香辛料くらいかしら?」
ぐっ……絶対に違う。おそらく、ほとんど全てを知ってるって顔だ。どうして知られた? 恐るべし王妃様。王妃様の直属の耳と目は良い仕事をしているらしいね。
しょうがない、こうなった以上は全部話して後ろ盾になってもらうしかないね。俺は空気の読める男。
洗いざらいお話しました。はい。
「ユンの獣人ねぇ。一度会ってみたいわ。やっぱりペロちゃんみたいなの?」
「み~」
ミーちゃんの言う通りお子ちゃまはペロみたいに愛くるしいけど、大人は精悍な顔つきですと答えておく。
全部話した以上、せっかくなので相談もしておく。獣人さん達の村をニクセに作る事に問題があるかどうかだ。
「問題無いわね。ユンの獣人は珍しいけど居ない訳じゃないわ。北の方にある獣人の国の王はユンでなければ王位継承権が無いと聞くわ」
ユーリさんの故郷の隣の国、エルフの国と同じくレティさんの故郷の魔族の国と国境を接してる国でもある。
言質は頂いた。では、もう一つの懸念事項を提示する。緑の宝石硬貨、通称国貨と呼ばれる一枚で一億レトの価値がある硬貨の事だ。それを王妃様の前に差し出すと、王妃様の目がギラリと光ったように見えた……いや、確実に光ったね。怖ぇ~。
「ネロ君がお金持ちなのは知ってるけど、ネロ君が持っていて良いものではないわよ。ブロッケン領を独立させるつもりかしら?」
「滅相もありません」
王妃様、硬貨を手に取りニーアさんに渡す。ニーアさん少し硬貨を見つめた後、王妃様に頷き返す。本物と言う事だろう。
「どのくらい持ってるのかしら?」
「29562枚です」
「「……」」
さすがに、王妃様もニーアさんも二の句が継げない。二兆九千五百六十二億レト。国家予算に匹敵する額じゃないだろうか?
「ネ、ネロ君。それどうするつもりかしら?」
「どうしましょう?」
それを相談してるのですが?
「さすがに私では買い取れないわ。この王宮のお金を全て集めても無理ね……どこかの小国でも買い取ったら?」
「いらないです……」
そんなの面倒なだけ、そう思わない?
「み~」
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