309神猫 ミーちゃん、烈王さんの意見に賛同し、ネロに墓穴を掘られる。

 クリスさんを連れて烈王さんに会いに行く。



「なんだ、結婚の報告か? ネロ、意外と手が早いな」


「み~?」


「な、何を言っているのですか! お父様!」


「……」



 いつもの烈王さんらしい冗談なのに、クリスさんマジ怒なんですけど……。



「で、どうした? ネロ。まずはエールよろ~」


「お、お父様……」



 よろ~って……もちろん出しますよ、お願いがあって来てる訳ですから、でも父親の威厳もあったもんじゃないね。ラルくんにそっぽを向かれるのもなんとなくわかる。



「みぃ……」



 つまみになるような物も出してエールを冷やしジョッキで出す。



「プッハ~。ネロの出すエールはほんとうめぇな。俺の嫁にならねえ?」


「お、お父様!」


「すみません。男に興味ないです」


「そうか、残念だ」


「お父様……」



 全然残念そうには見えないけどね。クリスさんは蛆虫でも見るかのような冷たいジト目です。



「今日はお願いがあって来ました。もう何人か? ドラゴンさんを派遣してもらえませんか?」


「み~」


「いいぞ。クリス任せる」


「はい……」



 なんか、呆気なく了承が得られた。烈王さんはエール、俺とクリスさんは果汁水、ミーちゃんはミネラルウォーターを飲みながら話をする。簡単に言えば人族の生活をしてみたいと言うドラゴンが多いそうだ。寿命があって無いような種族なので暇らしい。


 これが戦争の為に力を貸して欲しいと言うような願いなら断るところだけど、人族の生活を覚えて人族の世界に入っていくことは大いに望ましい事なのだそうだ。元々今の四人もその為に来てるからね。


 竜の上位種は人族などと違って寿命以外で死ぬことはほとんどないそうだ。流石、この世界の最強種。昔は更に神人ってのが居たらしいけどね。滅ぶ前は何度かり合った事もあるそうだ。


 まあ、それは良いとしてドラゴンは才能も関係するけど、歳を重ねるとたいてい人化できるようになると言う。できるようになったとしても何をするでもなく多くの時間を寝て過ごすらしい。ここ以外にこの世界に住んでる竜達も同じだと言う。烈王さんはそんな竜達に嘆いているのだそうだ。


 烈王さんは神との制約でこの地を離れる事ができないでいる。でも他の竜は違う。烈王さんは竜達にもっと広い世界を見て欲しいと望んでいるそうだ。



「もっとこの世界を楽しんで欲しいんだよ」


「み~」


「おぉー。眷属殿もそう思うか!」



 ミーちゃん、烈王さんの横でウンウン頷いてるね。でも、ミーちゃんは楽しみ過ぎて神界に帰れなくなったんだよ?



「……」



 ミーちゃん、がーんと言った顔になって固まってしまった。まあ、おかげでこうしてミーちゃんと一緒に居られるんだけどね。



「み~」



 ミーちゃん、俺の傍に来てスリスリしてくる。俺もミーちゃんを持ち上げてミーちゃんの顔にスリスリする。ミーちゃんがペロペロしてくる。


 ミーちゃんは不老不死。ミーちゃんから見れば俺の人生なんてほんの一瞬に過ぎないだろう。そんな俺の人生にちょっとくらい付き合ってくれても良いよね?



「み~」



 ありがとう。ミーちゃん!


 なんて、良い場面なのに……。



「ネロ。肉無いのか肉」


「お父様……」



 このドラゴンは……しょうがない高級肉オーク肉を出しましょうか。



「おぉー。ネロ、待ってました!」


「ネ、ネロさん……それはもしや……」


「オーク肉です」


「み~」



 室内では焼けないので外に出て即席の竈を作り火を起こす。直火で焼いても十分に美味しいけど、フライパンでソテーにした方が俺は好きだ。フライパンにバターを少し入れ塩胡椒をさっとかけた肉を焼く、ワインをざっとかけて醤油で味を調え出来上がり。ミディアムレア位が本当は好みだけど、オークは豚のモンスター? 生は怖いのでしっかりと火を通す。生でも食べるドラゴンには関係ないと思うけど……。



「美味い! エールくれ」


「美味しい……」



 クリスさんのお口にもあったようだ。



「オークは生でしか食べた事がないのですが、それでもとても美味しいと思っていました……ですが今、世界が変わったような気分です」


「だろう。生で食うなんて味気ねぇよな。人族は食材を生で食べる事は少ない。初めは面倒くせぇって思ってたけどな、今じゃ調理した物じゃねぇと食う気にもならねぇよ」


「この味を知ってしまうと、お父様の言う通りですね」


「でも間違うなよ。この肉が旨いのはネロの腕が良いからだ」


「はい。承知しております」



 この世界確かに料理は発展していない。香辛料や調味料が手に入り難いせいもあり、味付けが単調だ。だけど、腕の良い料理人が居ない訳じゃない。香辛料や調味料が手軽に使えるように流通されれば、所詮家事手伝い程度の俺なんか足元にも及ばない料理を作ってくれる事だろう。


 俺は作るより食べる方が好きだ。その為にも香辛料や調味料をこの世界に定着させなければならない。それが食の伝道師ネロの使命なのだ!


 最初は神猫商会は小さい商会のままで良いと思っていたけど、このままでは食の伝道師の名が廃る。神猫商会の知名度を上げる必要がある!


 頑張ろうね。ミーちゃん!



「み~!」




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