307神猫 ミーちゃん、獣人の村の位置を決める。

 午後は牙王さんの洞窟に飛びスミレに乗ってフォルテに向かう。



「その後、どうですか?」


「み~?」


「うむ。職員が増えたおかげで施政に不備はきたしていない」



 グレンハルトさんは足元の白狼を撫でながら答えてくれる。白狼もモフられても嫌がっていないので良い関係を築いているようだね。役所の改修ももうすぐ終わるそうで、フォルテもやっとまともな街になっていくだろう。



「ローザリンデさんはどうしたのですか?」


「み~?」


「彼女なら私兵の訓練をみてくれている」



 元々居た衛兵とフォルテ地方の村々に募集をかけて集まった人達と、ゼストギルド長からの要請で来てくれた元ハンターさん達をまとめて私兵団にするらしく、その訓練をローザリンデさんがしてくれているそうだ。


 私兵の補充はセリオンギルド長にもお願いしてるので、この後も増える事を伝えて街を出る。次はニクセだ。


 再び牙王さんの洞窟に飛び、ニクセに向かう途中で街道整備中の妖精族さんに差し入れして、伐採した木をミーちゃんに収納してもらった後スミレが爆走する。それでも、ニクセに着いたのは暗くなってからだった。


 取り敢えず、宿をとってスミレの世話をする。久しぶりに目一杯走れたせいかスミレはご機嫌だったね。その後、ミーちゃんと共同浴場に行って汗を流し宿に帰る途中で夕食を食べて就寝。次の日はミーちゃんと九の鐘がなるまで惰眠を貪り、十の鐘が鳴る頃に役所に向かった。



「ようこそお出でくださいました。ネロ様」


「み~」



 ニクセの代官のリンガードさんが笑顔で迎えてくれる。役所の応接室に案内され少しの間歓談。ミーちゃんはリンガードさんの膝の上で気持ちよさそうにうたた寝中。


 ベルーナの商業ギルドから派遣された人材は既に到着していて、業務についているとの事。派遣されたうち神猫商会で働きたいと言う男女二人はヴィルヘルムに護衛の人達と向かったと教えてくれた。


 ニクセはフォルテと違って何も問題ない所なので、施政に関してはリンガードさんに丸投げ。ただ、私兵団設立の件は話しておき、ニクセ地方でも募集をかけてもらうようお願いした。



「そうですね。農家の次男や三男などなら、職を求めて応募してくると思われます」


「一定数集まるまでは衛兵として使っていてください。その後フォルテでの訓練に参加してもらう事になります」


「承知しました」



 そうそう、大事な事を話すのを忘れてたよ。



「新しく村をですか?」


「とある場所から移住したいと、私に庇護を求めて来た人達がいまして」


「既にある村や街への移住では問題でも?」


「移住を希望しているのはユンの獣人なのです」


「ユンですか……これはまた珍しいですね」



 初老にさしかかったリンガードさんでさえユンを見た事が無いそうだ。一般人なら尚更だろう。迷宮の獣人さん達は迷宮以外の世界を知らない。そんな人達を急に大勢の人が居る街に連れてたら混乱するだろうし、街に住む住人の中に良からぬ事を考える者も出てきかねない。



「であれば、ブロッケン山の東周りの街道沿いに作るのは如何でしょう」


「私もそう思っていました」


「み~」



 フォルテとニクセを繋ぐ街道は二つ、ブロッケン山の中を抜ける街道、もう一つが東周りの街道になる。ブロッケン山を抜ける街道は今使っている人は俺達くらいで、他の旅人や商隊は東周りの街道を使っている。今後、今整備中の街道を使うようになれば東周りの街道はあまり使われなくなるだろう。


 使われなくなると言ってもまったく使われなくなる訳ではなく、ニクセからフォルテに向かわずそのまま東に向かえばドワーフ族が管理している鉱山街に繋がる街道になっている。フォルテの罪人達が送られたのがその鉱山だね。


 ニクセと鉱山街の間には村がないので、今後村が中継地になれば発展していくだろうし、ユンの獣人さん達も少しずつこちらの世界や住人達に慣れていく事だろう。


 取り敢えず、場所の選定をしてこよう。俺の領地なので好きな場所にお作りくださいとリンガードさんに言われた。と言う訳でスミレさん、ひとっ走りお願いしますよ。



「み~」



 ぶるるって、任せて早く乗れと突っついてくる。


 スミレを走らす事三時間くらい、普通の商隊ならニクセから三日位かかる場所に良い所を見つけた。ブロッケン山の麓で平らな平原、東側がブロッケン山に繋がる森になっており、おそらくフローラ湖に繋がると思われる川も流れている。川幅もそれなりにあるのでニクセまで船で行く事も可能じゃないだろうか。


 ミーちゃん、どう?



「み~!」






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