306神猫 ミーちゃん、やっぱりミー様と呼ばれる。

 クイントのハンターギルドを後にして王都の家に戻った。戻ったのにルーカスさんだけでなくララさん達も誰一人として俺とミーちゃんが家に居る事に疑問を持っていない……何故だろう?


 そんな事を考えながら、ルーくんとラルくんをモフっていると誰か帰って来たようだ。



「戻って居たのか。少年」


「み~」



 レティさんが帰って来たのでお茶にする事にする。



「孤児院の方は順調だぞ。教会から院長も来てくれた。少年に挨拶したいと言っていたぞ」


「み~」


 フローラ神の教会の次席神官長のヨハネスさんに頼んでいた、院長さんになる人が来たようだ。明日の朝、挨拶に行こう。


 孤児院の建物が出来上がり、孤児のお子ちゃま達もレティさんと義賊ギルドの方達が集めて来たそうだ。王都だけに多くの孤児が居る為、この孤児院に来れたのはほんの一握りのお子ちゃまだけなんだそうだ。幼い子、病気や怪我をしている子を優先的に集め、それ以外のお子ちゃま達には炊き出しで対応していく事になる。こればかりはどうしようもない……やれる事からやっていこう。



「み~」



 ユーリさんがギルドから戻って来たので、ユーリさんとレティさん、もちろんミーちゃんにカイとでお風呂に入った。家に帰って来たな~って感じになったね。そして、眼福ありがとうございました! 身も心も洗われたって感じだ。


 翌朝、ルーカスさんとカティアさんと打合せをする。最近ヴィルヘルムの商業ギルドから来た男女二人は、まだカティアさんの下で帳簿つけなどの修行中。ゼルガドさんもそろそろ着く頃なので、受け入れ態勢をお願いする。それから、神猫商会の本店はカティアさんに確認してもらったけど、内装の変更などはまだ何も手をつけていない。うちの隣に建てている妖精族の宿舎ができたら、そのまま職人さんにお願いしようと思う。



「み~」



 他にも細かい事を話してると、ヤン君家族が出発時間のようだ。



「ネロさん。戻っていたんですね。みんなは?」


「ちょっと用事があってね。俺とミーちゃんだけちょっと戻って来たんだよ」


「そうなんですか。良かったら、夜にでも迷宮の話を聞かせてください!」



 ヤン君、目をキラキラさせてる。妹のカヤちゃんは久しぶりにミーちゃんに会えてモフモフを堪能してるね。



「神猫屋の方は順調のようですが、どうですか?」


「み~?」


「いつも多くのお客様がいらしてくださるので売り上げは順調ですが……。今はヤンが手伝ってくれているのでなんとか対応していますが、正直、手が足りていません」



 イルゼさんが申し訳なさそうに言ってきた。



「特に、夕方からエールを売り出すと捌ききれず、列ができてしまい他の屋台のみなさんにご迷惑をおかけしています……」


「みぃ……」



 うーん。これはなんとかしないと駄目かな。このままだと本店の開店までもたずに、イルゼさん達が参ってしまいかねない。予定を早めて助っ人を連れてくるか。


 取り敢えず、予定通り隣の孤児院に挨拶に行こう。出迎えてくれたのは教会のローブを着た年若い綺麗な女性。



「ようこそお出でくださいました。使徒様」


「使徒様?」


「み~?」


「父から話は伺っております」


「父って、もしかしてヨハネスさん?」


「はい」


「み~!」



 ヨハネスさんの娘でアイラさんと言うそうだ。手紙にも書いてあったけどヨハネスさんとの会見の後、予定通り神官長に天罰がくだりヨハネスさんが繰り上がりで神官長になったらしい。その為、すんなりと孤児院の院長斡旋のお願いが通り、アイラさんが来てくれたと言う事らしいね。


 フォルテの孤児院には妹のセイラさんが行ってくれる事も決まっているけど、まだ出発はしていないそうだ。独り身での旅は危険だからヴィルヘルムに行く時は護衛をハンターに頼まないと駄目だね。護衛に掛かる費用はうちで持つことを伝えておく。


 それから、その使徒様ってやめてください。そもそも神様の眷属なのはミーちゃんで俺じゃないからね。



「では、どうお呼びすれば良いのでしょうか?」



 そんな悲しそうな顔で言わないでください。なんか俺がいじめてるようじゃないですか……。



「ネロと呼んでください。この子はミーちゃん」


「み~」


「使徒様のご尊名を呼び捨てにするなど、恐れ多くてできません!」



 うわぁー、なんか面倒くせぇー。教会の人ってみんなこんなに頭固いのかな? それとも、父親譲り?



「じゃあ、適当に名前で呼んでください。使徒とか眷属とかは無しで」


「では……ネロさんとミー様?」


「み~!」



 なんでやねん!?


 シュバルツさんの回し者か! まあ、それで良いです……。



 孤児院で働いてくれる方は教会の方で手配してくれたそうで、身元もしっかりした人達なので安心してほしいと言われた。もちろん、給料は俺が払いますよ。アイラさんに関しては教会からの派遣という事で給料はいらないそうだ。


 その後、いろいろ打合せをおこなった。今後、炊き出しについては教会と共同で行う事になる。場所はうちの敷地内でおこなう事にする。教会は街の真ん中にあるので炊き出しには向いていない為、街の人に迷惑がかからない場所となると街の外れにあるうちが一番。


 今後、第二第三の孤児院の設立にも教会は手を貸してくれると言っている。王都は広い。少しでも救われるお子ちゃま達が増えるように頑張りたいね。



「み~」






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