301神猫 ミーちゃん、お姉ちゃんの威厳を保つ。

 ミーちゃんの神雷が俺を包み込んでいく。周りからは俺が紫の光を発光してるように見えるらしい。


 ミーちゃんの神雷が俺の細胞一つ一つに染み込んでいくいく感じにする。初めてこの技を使った時は完全に無意識状態。ミーちゃんは俺に神雷を使えるように流していただけらしい。発動したのは本当に偶然の賜物だったようだ。


 あの後、何度も練習してみたけど意識してあの時と同じ状況に持って行くのは非常に至難の業だった。何度も何度も失敗を繰り返しやっと成功率が五分五分くらいまでなってきた。



「あれはなんだ? ジン」


「さあ、俺にもわかりませんぜ」


「ネロ君、固有のスキルなのか……?」


「ネロが今から見せる技は、俺でも防ぎきれん。おそらく、オークリーダーより上位種にも有効だと思うぜ。下手すりゃドラゴンだって倒せるかもしれねぇぜ」


「そこまでの技なのか……信じられん」


「まあ、百聞は一見に如かずだぜ」



 全身にミーちゃんの神雷がいき渡った感じになった。多すぎても少なすぎても発動しない。ミーちゃんと俺が一体となった感じになった時が発動可能状態。



「いきます」


「み~」



 オークリーダーはいつも通り俺に背を向けたまま憮然と立っている。初撃はくれてやるって余裕をかましているのかもしれないけど、お前に二撃目は必要無い。一瞬で終わりだ。


 軽く前に走り出す感じ……次の瞬間には目の前にオークリーダーの背中がある。オークリーダーのお尻の辺りに両手を添えて、体の中の神雷をすべて両手からオークリーダーに流してやるイメージ。


 オークリーダーが一瞬ビクッと跳ね、プスプスと煙をあげて前に倒れこむ。ジ・エンド。



「み~!」


「みゅ~!」



 セリオンギルド長達は口をポカーンと開けたまま一言も発しない。顎でもはずれた? それに引き換えうちのメンバーはこちらをまったく見ずにおやつ談議に講じている。



「葛餅は、くにゅくにゅして美味しいにゃ」


「葛餅とはにゃんこ先生は通ですなぁ」


「カステラ食べたいねぇ」


「にゃ?」


「みゅ~?」



 君達、少しは気を遣うって事できないのかな?


 倒したオークリーダーをミーちゃんバッグにしまい、セリオンギルド長の所に戻る。



「もう一度言いますが、他言無用ですからね」


「あ、あぁ……あれは一体……」



 さあ、答える気はさらさらないです。うちのメンバーにだって教えてないのですから。



「よし、次行くぜ」


「み~」


「みゅ~」



 ミーちゃんはまだまだ元気一杯でパルちゃんの盛大な尊敬のペロペロを受け満更でもない様子。お姉ちゃんの威厳を保ったってところかな?


「み~」


 セリオンギルド長達は一言も発しず俺達の後をついてくる。うちのメンバーと言えばカステラ談議に花を咲かせているようだね。



「ふわふわ、しっとり」


「甘々でほっぺが落ちる美味しさだよ~」


「おぉー、ネロに作らせるにゃ!」


「にゃ!」



 何故に俺が作らねばならぬ。作り方は知ってるけどね。作るにしても卵と砂糖がネックだな。なんか俺も食べたくなってきた。カステラと牛乳の組み合わせは最強だと思います。



「次はただのオークだぜ。五匹だけだからな、お前達でも倒せるはずだ」


「「「おぉ……」」」



 ジンさん、あのオーク達をただのオークだなんて……確かにオークには違いないけど冗談にも程があると思いますよ……。


 などと考えてると次の広場に到着。良い装備を身に纏ったオークが五体居る。鑑定するとやはり、いくつかのスキル持ちだった。



「「「!?」」」



 五体のオークを見たセリオンギルド長と始原のうねり、北壁のメンバーは開いた口が塞がらないと言った状態。そりゃそうだ。


 ジンさん、悪戯が上手くいったお子ちゃまのように良い笑顔です。



「さあ、行って倒してこい!」


「み~」


「みゅ~」


「「「……」」」



 始原のうねりと北壁のメンバーはセリオンギルド長を無言で見つめてる。何気にミーちゃんとパルちゃん煽ってません?



「に、二パーティーで挑めば、か、勝てない相手ではないはずだ……」



 オーク五体に中堅ハンター二パーティーって過剰戦力じゃないの?



「や、やってやるぜ」


「おぉ……」


「あれ、反則だろう」


「ギルド長……骨は拾ってくれるんですよね?」


「さ、さっさと行かんか!」


「「「おぉ……」」」



 彼らの顔に悲壮感が浮かんでいる。あんな状態で大丈夫なのだろうか? うちのメンバーにいつでも援護に行けるように準備するように声をかけた。



「にゃ~。あんにゃオークに勝てにゃいにゃか?」


「にゃ?」


「僕達より人数多いですよ」


「年齢だって私達よりだいぶ上の人達だよ~」



 セリオンギルド長の顔が引きつってます。まさかこんな状況になるなんて思ってもいなかったのだろう。おそらく、ジンさんがわざと正確な情報を報告しなかったのじゃないのかな? ニヤニヤ顔のジンさんを見てるとそう思えてくる。


 始原のうねりと北壁のメンバーが広場に入ると、オーク達がお前らなに者だ~とばかりに動き出して戦う陣形を組み始める。


 数では倍、盾役も攻撃役も役割分担はしっかりとしたパーティー二組、負ける要素が無いように見える……。


 北壁の盾役がオークの強烈な剣撃を受け吹き飛ばされる。始原のうねりのリーダーが一声。



「て、撤退!」



 え? 助けるんじゃないの? まさかの撤退……。



「みぃ……」






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