300神猫 ミーちゃん、パルちゃんとお出掛けします。

 翌日の朝、ハンターギルドの裏でセリオンギルド長と合流。今日迷宮に入る始原のうねりと、北壁と言う中堅ハンターさんのパーティーと挨拶を交わした。



「どう見ても、ジクムントさん以外は見習いにしか見えないが……ギルド長、大丈夫なんだろうな?」


「安心しろ。このメンバー全員がお前達より実力は上だ」


「「「……」」」



 誰も信じてないって感じだね。そんな一人の男性が俺に挨拶して来た。腰にはリボルバーが装着されている。以前行った大気スキルの講習会にいた人だそうだ。最近、やっとセリオンギルド長の許可がおりて、ゼルガドさんに銃を作って貰ったらしい。使い勝手も、威力も申し分なく今のパーティーに入る事ができたと感謝された。


 そう言えば、ゼルガドさん銃を二丁売ったって言ってたな。この人がそのうちの一人のようだね。


 挨拶も済んだので転移装置で迷宮に行こうとすると、パルちゃんがミーちゃんをがっちりとホールドしている。何してらっしゃるんですか?



「みぃ……」


「みゅ~」



 どうやら、パルちゃんはミーちゃんについて行きたいらしい。エバさんに引き剥がされないようにミーちゃんにしがみついているようだ。ミーちゃん困り顔。



「パルちゃん、迷宮は危険な所なのよ。フェルママとお留守番してましょうね?」


「みゅ……」



 嫌なの……って、エバさんの説得も効果無し。



「どうしましょう?」


「連れて行っても構いませんよ?」


「でも、迷宮は危険な所よ。パルちゃんに何かあったらと思うと心配で……」


「俺とミーちゃんがパルちゃんをしっかり見てますから大丈夫ですよ」


「でも、ネロ君が危険じゃない?」


「このメンバーで危険があるようには思えませんよ」


「み~」


「それもそうねパルちゃん、絶対にネロ君から離れちゃ駄目よ」


「みゅ~」



 ミーちゃんとパルちゃんを定位置のコートのフード部分に入れてあげると、右肩にミーちゃん左肩にパルちゃんがちょこんと顔を出す。パルちゃんも女の子だから両手に花状態だね。



「ネロさんが羨ましい……」


「トシ、私達もフード付きのコート買うわよ」


「姉さん……間に合わないと思うよ」


「きぃー。セラ、抱っこしてあげる!」


「にゃ……」



 宗方姉弟……うざいよ。



「この緊張感の無さはなんなんだ……」


「セリオンギルド長! ネロ達はいつもこんなもんッス」


「だな……」



 そこのルーさんとジンさん! それは俺がいつも緊張感が無いって言う事ですか? ちゃんと適度な緊張感は持ち合わせていますよ?



「みぃ……」


「みゅ~」



 さあ、出発しましょう。


 涙を流さんばかりのエバさんの見送りを受け転移装置で迷宮の街に飛んだ。



 迷宮の街では獣人さんの大工さんと派遣されてるギルド職員さんとで、ハンターギルド出張所や職員とハンターさん用の宿が急ピッチで作られている。


 転移装置を抜けた始原のうねりと北壁の皆さんはため息をついてる。



「眉唾ものだと思ってたぜ……」


「街だな……」


「ああ、街だ……」



 セリオンギルド長が派遣されてるギルド職員に声をかけて今後の事を指示から出発した。


 俺の左肩では普段でも余り遠出をした事の無いパルちゃんが、外の風景に興奮してテシテシ俺の肩を叩きながらみゅ~みゅ~鳴いてる。耳元で鳴いてるのでちょっとくすぐったい。


 この階層にはモンスターはでないと事前に言ってあるけど、始原のうねりと北壁の皆さんは周りを警戒しながら歩いている。うちのメンバーは一切の警戒心も無くクッキー食べたりお団子食べながら歩いている。なんて対照的なんだろう。



「遠足か……?」


「セリオンギルド長! ネロ達はいつもこんなもんッス」


「だな……」



 はい、いつもこんなものです。否定はしませんよ。



「み~」



 山の中腹の洞窟に着くと流石にうちのメンバーも緊張感を漂わせる。一旦、安全地帯に向かい休憩を取り、その間に始原のうねりと北壁のリーダーとセリオンギルド長がオークリーダーを見に行くようだ。



 うちのメンバーが装備を整え終わる頃にセリオンギルド長達が戻って来た。



「ジン、お前達はいつもあれを倒してるのか?」


「じゃなきゃ、先には進めねぇよ。ギルド長」


「あんなのどうやっていちパーティーで倒すんだよ……」


「俺達、二パーティーでも無理だ……」



 あらあら、オークリーダーの憮然とした立ち姿にあてられたようだ。完全に弱腰になっている。



「おいおい、さっきまでの中堅ハンターのでかい態度はどこ行っちまた? 情けねぇ。ネロなんか一人であいつを倒した事もあるんだぜ」



 あー、ジンさんそれ言っちゃ駄目だよ。



「例えジクムントさんの言う事でも、こんなガキがオークリーダーを一人で倒すなんて言い過ぎです!」



 わーわーと他の人も騒いでいる。俺の事を嘲るような目で見る者までいる。ちょっとムカつく。



「ネロ、やれ」



 ほらきた、絶対にこうなると思っていたんだよ。



「ネロさん、閃光になるのです!」


「人知を超えし力、見せてやるのだ~!」



 宗方姉弟……うるさい。



「ネロと姫にゃら余裕にゃ」


「にゃ」



 うーん、引くに引けない状態? パルちゃんをカオリンに渡して、ちょっと準備運動。



「本気でやるつもりか? ネロ君」


「まあ、やるだけやってみますよ。但し、ここで見た事は他言無用。俺のとっておきの必殺技です。まだ、成功率も低いので成功するかもわかりませんけどね」



 カオリン命名、紫電。あれから何度か練習してるけどなかなかに難しい。自分の雷スキルだけでは発動しない。ミーちゃんの神雷スキルあっての必殺技。


 じゃあ、やってみますかね。ミーちゃん。



「み~!」



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