296神猫 ミーちゃん、神猫商会の本店買っちゃいました。

 ヴィルヘルム支店が最初に買った店が八千万、後から買った土地は五千万レトなのでおよそ四倍弱になる。買えない値段ではないけれど即金でと言うのがねぇ。金貨で払っても五千枚だよ。


 ミーちゃんバッグ中には二千枚くらいは入ってる。烈王さんからもらった物を合わせても二千五百枚、うちに戻ればあと千枚くらいはあると思う。それとも、ブロッケン男爵の資産から出すか? 



「流石に現金では難しいですね」


「物納又は神猫商会様ですから商業ギルドからの融資も受けられますが?」


「物納とは?」


「美術品から商売品まで何でもこちらで査定いたします。特に香辛料などは喜んでお引き受け致します」



 成程、残りの香辛料も出せと言ってる訳だ。カレー粉作りをしたいから売りたくないんだよね。仕方ない、ミーちゃん奥の手出して良いですか?



「み~」



 ミーちゃんの了解が得られたので、烈王さんからもらた宝石の原石をいくつか出して担当者さんに渡す。担当者さん怪訝な顔をして石を見てたけど、ハッと部屋から走って出ていった。しばらくして、一人の女性を連れてきて石を見せている。



「素晴らしい品質の原石ですね。これだけの大きさの物を見たのは始めてです。どこのドワーフ族から手に入れたものですか?」


「商売上の秘密です」


「み~」


「まあ、これだけの物となれば当然ですね」



 なんか勝手に納得してくれたのでラッキー。いくつか出した原石から女性が品定めして選んでいく。出した原石の七割くらい選んだところで手を止めた。



「この程度で十分ですね。残りは如何します?」


「買い取りでお願いできますか?」


「承知しました」



 担当者さんは全身汗だくになって、汗を拭きまくってる。



「いつもながら神猫商会様には驚かされっぱなしです」


「み~」



 ミーちゃん、してやったりとニコニコ顔です。契約書と香辛料と宝石の原石のお金は後日、うちの方に届けてもらう事にして商業ギルドを出てきた。そこで始めて店舗をまったく見ないで買った事に気付いたね……。



「みぃ……」



 ははは……場所はわかっているので行ってみようか? 場所は中央広場の南側、ハンターギルドと同じ並びの角地、最高の立地条件。店舗は三階建てのレンガ造り、大きいの一言だよ。ヴィルヘルム支店の三倍程の大きさだと思う。角地なので通りに面して二つの面に窓と出入り口があるので、二店舗あるように見える。中で繋がっているけどね。店舗の後ろは従業員用の宿舎と倉庫に馬小屋まである。こっちは改修が必要だろうけど本当に広い。 しかし、本当にこんな場所を買って良かったのだろうか……。まあ、買ってしまったのだからしょうがない。



「み~」



 ミーちゃんは気に入ったようだ。神猫商会の代表はミーちゃんだから、ミーちゃんが良ければそれで良いか? まあこれで念願の神猫商会の本店、ゲットだぜ!



「み~!」




 うちに戻りルーカスさんとカティアさんに、今回の件を話さなければならない。うちに戻るとルーくんとラルくんが飛びついて来る。顔中ペロペロされまくり遊んで攻撃を受けたので、少しだけボール投げをしてあげた。


 遊び終わった後、うちに入るとルーカスさんに見知らぬ男女二人を紹介される。ヴィルヘルムの商業ギルドから紹介され神猫商会で働いてくれる人だった。どちらも二十代前半で実家が小さいけど商会を営んでいるそうだ。二人は跡継ぎではないので小さい商会には居る場所がなく、今回の商業ギルドの誘いを受けここに来た。よろしくお願いしますね。



「み~」



 神猫商会の執務室でルーカスさんとカティアさんに今回の件を説明する。ミーちゃんは疲れていたのか、猫に小判クッションの上で丸くなってうたた寝してます。



「香辛料に宝石の原石ですか……」


「王都に五億で本店ですか……」



 なんだろう、この疎外感……二人は別の世界に行ったような表情になっている。



「買ったと言ってもすぐに使える訳ではないので準備が必要です」


「人が足りませんね……」


「神猫屋は如何しますか?」


「人に関してはヴィルヘルムから優秀な二人を連れて来ます。まあ、それでも足りないと思いますが……。神猫屋は本店が中央広場前なので本店の中に神猫屋のブースを作るか、ヴィルヘルムのような形に改装します」



 ドラゴン四人のうちから二人を本店に移動しようと思う。ヴィルヘルム支店にもベルーナからフォルテに向かった中から二人の人材を送る予定なので、ドラゴンさんは優秀だしこれ以上ない防犯にもなるからね。当面は今回来た二人にイルゼさん、カヤちゃん、ドラゴン二人に頑張ってもらおう。


 それから、クイントから職人を一人神猫商会専属として雇った事を伝える。いかれ頭のゼルガドさんです。もう少ししたらここに着くのでお願いしておく。カティアさんの方も職人ギルドと話はついてるようで、いつでも職人の手配はできるとの事。だんだん神猫商会として形が整ってきたね。


 フローラ神の教会のヨハネスさんから手紙が来たそうで、ルーカスさんが渡してくれる。読んでみると、現神官長が神官長室で女性とお楽しみ中に急に倒れたそうだ。腹上死は免れたようだけど半身不随になり教会の本部から神官長の座を降ろされ、繰り上がりでヨハネスさんが神官長になったと書かれている。


 神官長になったお陰で孤児院の件も自由に進められるようになり、近々人を派遣してくれるらしい。フォルテの方にもベルーナから院長になる人を派遣して向こうの教会と協力してくれるそうだ。後でお礼にいかないとね。


 孤児院の改装も間もなく終わるようなので、レティさん迷宮探索から外して孤児院の方に専念してもらうしかないだろう。孤児院に連れてくるスラムの子の選定はレティさんに任せているからね。病気の子や、幼い子達を優先して孤児院に入れるようにお願いしている。それ以外の子達には、当面は炊き出しなどで対応していくしかない。自分の力の無さを痛感してしまう……。


 焦ったところで仕方がない、できる事からやって行くしかない。でも、救える命は少しでも救いたいね。



「み~」




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