295神猫 ミーちゃん、王都の商業ギルドで神猫屋の餡子団子を食べる。

 王都の商業ギルドに来てます。いつもの神猫商会の担当者さんと話してる。



「そうですか、それは災難でしたね」


「災難って……どうしてあのような人がギルド長をやっているのか不思議なのですが?」


「私が聞いているハルクギルド長は質実剛健な方と伺っております」



 質実剛健ねぇ。硬くなり過ぎて、柔軟性がなくなったのかもね。



「み~」



 取り敢えず、担当者さんに流れ迷宮で村が見つかった事、そこの住人をブロッケン男爵として保護する事、彼等との取引は神猫商会が一手に担う事を話した。



「その住人と他の商会との面倒事を避ける為ですね」


「貨幣を使わない物々交換で成り立ってきた場所ですので、他の商会が入ってくると混乱が起こる可能性がある為です」


「その通りですな。しかしそこまで用心する程の特産品があるのですかな?」


「香辛料です」


「み~」


「!?」



 いくつかの見本を出して担当者さんに見せると、担当者さんの目が大きく見開かれて口をパクパク言わせてる。担当者さんが落ち着くまでお茶を飲んでよう。



「ど、どのくらいの量があるのでしょうか?」


所詮しょせん、村単位で作っているのでそれほど多くはありませんが、種類がいろいろありますね」


「王都で卸して頂けるので?」


「クイントで駄目なら王都かなと」


「す、すぐに覚書を作成しお持ちします!」


「み~」



 いつも以上に良いお茶と何故か神猫屋のお団子が出てきた。神猫商会で出してる品なんだけどなぁ。まあ、いっか。ミーちゃん、餡子食べる?



「み~!」



 待っているとベルーナの商業ギルド長に副ギルド長が挨拶に来たので適当に対応しておく。流石、神猫商会様ですな、なんておべんちゃらまで言って終始ご機嫌だったね。



「お待たせしました。こちらが迷宮内の村との商取引に関する覚書です。ご確認ください。尚、この覚書の内容を無視した行為を行った商会は商業ギルドで厳しく罰する事をベルーナ商業ギルド長の署名付きで記載しております」



 こちらの要望を全て飲む代わりに、村から手に入れた香辛料の半分をベルーナの商業ギルドに卸す事が記載されている。半分ならこちらとしても問題はない。ベルーナにすべてを卸すと価格破壊が起きかねない。それに、で採れた物となっているので移住した土地で採れた物に対しては記載されていない。ズルじゃないよ。


 俺の署名とミーちゃんの足型捺印を押して書類を返す。担当者さんが再度確認した後、控えを渡してくれた。



「この覚書はギルド長権限により即日発行としますので、何か問題が起きましたらこちらにお申し出ください。もし、他の街の商業ギルドが何か言って来た場合も同様です。後日、正式に契約書の作成を行いますので、よろしくお願い致します」



 これで、一応の対策は取れた。今回手に入れた分を卸しますかと聞いたら、目を輝かせている。


 物が物なので極秘に広い会議室で査定される事になった。ミーちゃんバッグから各種半分を出すけど、それでも結構な量になる。この量だと、通常王都に入って来る香辛料の三分の一になるそうだ。


 気候的にはヒルデンブルグ辺りでも栽培できるのだけど、生産国で種や苗の輸出を禁止しているそうだ。たまに種などが密輸され手に入る事があるらしいけど、前にも言ったけど種から育てるのは非常に難しい事なので、知識のない状態で栽培に成功した例はまだないらしい。


 獣人さん達が移住を決めてくれれば、香辛料を育てるノウハウも手に入る。ブロッケン男爵領の特産品になる可能性がある。カレー粉を作って神猫商会で売ってこの世界にカレーを広めよう! 楽しみだね。



「話は変わりますが、我が商業ギルドで集めました人材は既にブロッケン男爵領のニクセに向かいました。それからベルーナの神猫商会様の店舗の件でお話がありますが、お時間は大丈夫でしょうか?」


「み~」


「問題ありません」



 なんやかんやで、忘れてました……。担当者さんが渡してきた紙を見ると、物件の詳細が書かれている。


 なぬ!? 嘘でしょう……中央広場の外周沿いの店舗となってる。商業ギルドやハンターギルドなどが並ぶ、所謂いわゆる一等地にある店舗だ。但し、条件が賃借ではなく買い取りとなってるね。


 理由を担当者さんに聞いてみると、そこは昔からこの国でも一、二を争う程の大きな商会があった場所なんだけど、五十年程前に相続争いで三つの商会に分かれたらしい。その店舗は長男の商会が相続したけど結局上手くいかず、大きな負債を抱えてとうとう商会自体を潰す事になった。その負債の返済にお金が必要と言う訳だ。


 ちなみに担当者さんに今言われて知ったんだけど、王都は基本土地は借地なんだそうだ。稀に王様から褒美で土地が譲られる以外、例え貴族であっても土地の所有はできないらしい。


 俺、土地を貰った記憶があるのだけど……。


 それはさておき、今回の店舗の建ってる土地は、何代も前の王様から褒美で頂いた土地で、そう言う土地が売買されるのは非常に稀有な事なんだそうですよ。



「これを逃せば、二度と手に入らない優良物件です」


「い、いくらぐらいするんです?」


「先方と話をしまして、家財道具及び荷馬車などすべて込みで五億レトとなりました。破格の値段でございます。但し、分割無しの即金払いとなります」



 五億レト即金って……ミーちゃん、どうする?



「みぃ……」





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