294神猫 ミーちゃん、なめられたままでは気が済みません。

 セリオンギルド長との話し合いが終わってから、買い取り主任のヘンリーさんの所に話を聞きに行く。



「今度生まれてくるのは男の子だと思うかい? それとも女の子かな?」


「ヘンリーさんはどっちが良いのですか?」


「み~?」


「男の子かな。でも、女の子も良いんだよねぇ~。奥さんと娘二人に囲まれての生活、良いと思わないかい?」


「み~!」


「そ、そうですね……」



 どうやら、念願の二人目を授かったようだね。おめでとうございます。で、話は変わるんですがモンスターの買い取りについて聞いてみる。




「なんてモンスターだい?」


「スコーピオンローグとピルバグスイパーです」


「珍しいモンスターだね。この辺には居ないモンスターだよ。どれどれ、ちょっと待ってね」



 ヘンリーさんは一冊の本を開きペラペラとめくって調べてくれてる。ヘンリーさんが調べた結果、外皮は初級ハンター達用の防具に加工できるようで残りはゴブリン同様肥料にしかならないそうだ。


 ロングテイルエイプについても聞いてみると、こちらは防具より毛皮としての需要があるそうなので良い買い取り価格になるようだね。



「それで、どの位あるんだい?」


「九百体くらいでしょうか? ロングテイルエイプの方は向こうで売ったので数は少ないです」


「きゅ、九百って……そこまで需要は無いと思うよ」


「ですよねー」


「取り敢えず、業者の方に問い合わせてみるよ。解体はまた依頼を出すかい?」


「はい。前回と同じで見習優先でお願いします。時間が無いので大勢集めてください」


「わかったよ。でも、大勢となると裏の解体場ではできないよ?」


「街の外でやれば問題ないと思います。護衛はこちらで用意しますので」


「わかった。じゃあ明日また来てくれるかな? 上手くいけば明後日に解体作業と言う事でいいね?」


「お願いします」


「み~」



 宴会場に向かいみんなに話をする。レティさんは美猫親子にメロメロ状態、他のメンバーはこれでもかと飲み食いしてる。君達はいつもブレないね……。



「じゃあ、明日は休みだな」


「心置きなく飲めるな!」


「おもいっきり食べるにゃ!」


「「おぉー!」」


「にゃ!」


「可愛いでちゅね~♪」



 暗闇の牙のみなさんは若干引き気味。依頼料と迷宮でのモンスターの分け前は解体後に支払うと話しておく。依頼料と高級肉オーク肉を少しもらえればそれで良いと言われたけど、そう言う訳にもいかないのでちゃんとお支払いします。


 俺は宴会に参加するつもりは無いので、ミーちゃんと商業ギルドに向かう。



「商業ギルドにようこそ、本日はどのようなご用件でしょうか?」


「み~」



 受付の営業スマイルのお姉さんにギルド証を見せて、大事な話があるのでギルド長との面会をお願いする。



「申し訳ありませんが、ギルド長は忙しい方ですので事前に面会のご予約をして頂けないとお会いできません」


「みぃ……」



 まあ、そうなるよね。今度はブロッケン男爵の手形を見せて再度お願いすると、お姉さん顔を青くして事務所の奥に走って行ってくれたね。話のわかる人で良かったよ。


 すぐに別の女性が来て別室に案内してくれた。部屋でお茶を飲んでいると二人の男性と一人の女性が入って来た。



「私がクイントの商業ギルドのギルド長をしているハルクだ。後ろの二人は副ギルド長と秘書だ」



 何とも高圧的な態度できたね。強引な手を使って面会を取り付けた事に不満があるのかな? それとも、なめられてる?



「お忙しいところ申し訳ないですが、重要な話があるので強引な手を使った事は謝罪します」


「み~」



 あの態度にはちょっとムッとしたけど、礼儀は必要だからね。グッと抑えて謝罪したよ。



「わかっているなら。さっさと話したまえ。貴族と言っても成り上がりの貴族と聞いている。我々ギルドは国家権力には屈しないのが理念だ。たまたま秘書がお前達の商会を知っていたから会ってやるんだぞ」



 この人何様ですかねぇ? 副ギルド長も同じような態度を取っている。秘書さんはギルド長の態度に顔を引きつらせてる。まともなのは秘書さんだけのようだ。



「それはそれは、大変失礼した。こちらも成り上がりとは言え貴族の身、正直暇ではないが重要な話があって来た次第。それでは、用件だけ言おう」


「み~!」


「なっ!?」



 ミーちゃんもあの態度にはご立腹の様子。ギルド長もこちらの態度の豹変に驚いたようだ。もう、話し合いをする気は失せたので用件だけを伝える事にした。



「この街の近くにある流れ迷宮のある階層で、獣人の村が発見された。そこの獣人達はこの私ブロッケン男爵に庇護を求めて来ている。私はこの要請を受ける事にした。なので彼等の権利、財産は私が保証するものとする。これを犯した者は例え商業ギルドであろうと容赦はしない。以上だ。それでは失礼する」


「み~!」


「ま、待て! そんな一方的な話通用する訳は無いだろう!」


「ふむ。何かおかしい事を言ったか?」


「迷宮の中に村だと? そんな話信じられるか! 何を企んでる!」


「信じる信じないはそちらの勝手。この話はセリオンハンターギルド長には既に話して了解は頂いている。我が神猫商会と獣人達との間で商取引が発生する為、便宜上クイントの商業ギルドに話を持って来ただけの事。ここでは話にならないようなので王都の商業ギルドに話を持って行く事にする」


「取引だと? 何を取引するつもりだ?」


「それをお前達に話す義理は無い。貴重な時間が無駄になった、それでは失礼する」


「み~!」



 話にならないね。王都の商業ギルドに行こうか? ミーちゃん。



「み~」




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