289神猫 ミーちゃん、神猫勇者!?
堀から砦の中に小さい水路を引いている。別に飲み水とかの為ではないよ。ミーちゃん専用の戦場の為です。ミーちゃん、不死身とは言え外に出ると危ないからね。
「み~」
ミーちゃんに水路の先に作ったミーちゃん専用お立ち台に乗ってもらい準備完了。物見台に上がって矢を射ってるカオリンに、全てのモンスターが堀の中に居る事を確認する。
「居るよ~!」
よし! ミーちゃん、お願いします。もちろん、みんなには俺がやっているように見せる。
ミーちゃんがお立ち台から水面にバチッ! っと神雷猫パンチを放つと、水面に青白い光が走り防壁の外からドーン! っと音がする。何故か、妙な静けさが辺りを包んでいて、みんなが動きを止めている。
あれ? 失敗だった?
ミーちゃんを抱っこして急いで防壁の上にあがって堀を見ると、モンスターが堀にプカプカ浮いてるね。ん? 成功してるように見えるけど?
「み~?」
「「「「おぉー!」」」」
周りから一斉に歓声があがる。
「反則的な技だぜ……」
「ネロさんが勇者で良いんじゃないでしょうか?」
「チート~!」
ある一部から批判とも取りかねない声が上がってるけどスルー。実際、俺じゃなくてミーちゃんだから。勇者神猫? 神猫勇者? 格好良いけど、どちらにしろ言い難いよ。ミーちゃんは神猫で充分だと思う。
「み~」
ジンさんの指示でモンスター達に止めが刺されていく。獣人の方達がモンスター死骸を片付けようとしているので止めてもらい、ミーちゃんバッグに収納していく。コア以外にも売れる素材があるかもしれないからね。ついでにモンスターに刺さった矢はミーちゃんバッグの中で分離して、砦の中に出して置いた。修理すれば十分に使える物も多そうだったから。
戦いの後で疲れているとは思うけど砦造りを再開して、あの後は何事もなく朝を迎える事ができた。相手が何を考えてるかわからないけど助かったよ。
そして、ここに一夜城が完成したのである。
昨夜の教訓を活かして防壁をもう少し高くした。弓持ちと槍持ちが同じ場所に居ると戦い難いと言う事で、防壁の上を二段にして上部に弓持ちを配置するようにも工夫する。出入り口も三ヶ所作り、堀を越えれるように跳ね上げ式の橋もなんとか作り終えた。
土スキル持ちの人達にもう一頑張りしてもらい、川沿いに堤防を築いてもらった。モンスター達が川を越えて村の方に行き難くする為だ。
砦の中に建物がまだないけど、これから作っていけば良い。当面はテントを張っての生活となる。土スキル持ちの方達は村に戻り、今度は炊事洗濯などをしてくれる人達が来てくれる事になっているので安心。
今はローテーションで寝ている。夜通しだったのでみんな疲れて爆睡中。俺は物見台にあがってスコープを覗いて街の方を見ているけど、全く動きはないね。また、夜に攻めて来るつもりなのだろうか? 偵察を出したいところだけど今はみんな疲れているので無理だ。次に起きた時にお願いしよう。相手の事がわからないと手の打ちようがない。
下では炊き出しが始まっている。こちらには神猫商会が卸した食糧分余裕がある。向こうはどうなんだ? 街と村に分かれているうえ、モンスターも居る。モンスターは食べなくても平気なんだろうか? 迷宮産のモンスターだけに何とも言えない。昨夜の戦いでも腹が減っていれば倒れた奴を共食いでもするかな? なんて思っていたけど、そんな素振りは微塵もなかった。ただ、命じられたまま戦っているって感じだった。
夕方になり一通り全員が睡眠を取ったところで、暗闇の牙のみなさんに偵察をお願いした。残りはローテーションで食事を取り、水路の横に土スキルで作った大きな湯船に水を汲みお湯にして一人桶一杯を渡していく。流石にここで全員が風呂に入るのは無理。ミーちゃんと猫化したペロとセラは桶風呂に入って気持が良さそう、まったりだね~。
「「にゃんこ先生、良いな~」」
「猫ににゃれば良いにゃ」
「にゃ!」
「み~」
「「無理……」」
そりゃあそうだ……。俺も無理。
そして、やはり夜中に敵の襲撃があった。あったけどその数は百体程度、昨夜の半分。どう言う意図があるかはわからないけど、最初に矢を射かけて三方から打ち出て周りを囲んでフルボッコにしてやった。こちらに被害はほとんどない状態、完勝です。
そう言えば、日中の間に砦の周りにミーちゃんシャンプーを撒いておいたけど効果は無いようだね。迷宮のモンスターだからなのか、迷宮自体が持つ効果なのか、はたまた使役されているからなのかはわからない。効果があれば、戦術の一つに組み込もうと思っていただけに残念。
翌日もその翌日も同じで日中に攻めて来る事は無く、夜中に百体前後で攻めて来るだけだった。一体、何を考えているんだろう? 戦力の逐次投入は愚策と昔の人は言ってるのにね。この世界の人は知らないか……。
そうした中でも暗闇の牙のみなさんから偵察の報告があがってくる。そこでわかった事は、猿獣人さん達の食料事情は深刻だと言う事。この街の跡地に居る男達を食べさせる為に、村の方ではほとんど食べ物が無い状態だそうです。
そしてもう一つ、何故そうなったかの理由。俺達が砦を築いていた時を同じくして、街跡の反対側から熊獣人さん達が攻め込んだらしいのです。その時に多大な被害を出したけど、猿獣人さん達の食糧庫から食糧を強奪したらしいね。意図して俺達と同時に事を起こしたかは微妙なところだけど、ナイスアシストです。陶器の小瓶に移しておいたミーちゃんのミネラルウォーターを、五十本程狐獣人さんに持たして送っておいたよ。
「み~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます