288神猫 ミーちゃん、秘密兵器です?
暗闇の牙のみなさんが戻ったのは次の日の夕方。それまで俺はペロ、セラ、宗方姉弟と村のお子ちゃま達と遊んでいた。みんな働いてるのに申し訳ありません。あのモフモフの誘惑には勝てませんでした。
レティさんはこの間抱っこさせてもらった狐獣人の赤ちゃんを、終始デレデレの表情で抱っこしている。うー、俺も抱っこしたいー!
「み~」
ミーちゃんはレティさんと一緒に赤ちゃんの傍にいて、赤ちゃんがぐずるとペロペロスリスリしてあやしてる。そうすると赤ちゃんの笑顔が百発百中です。ミーちゃんの隠れた才能ですなぁ。
準備の方も順調で、狐獣人の村以外からも余剰の木材や使われていない建物を解体して運んでくれている。集まって加工の終わった木材は必要部分に分けてミーちゃんバッグに収納しているので、出してすぐに組み立てられるようにしてある。
「防衛体制は
「でも、朽ちてるとは言え元は街、攻め難いな」
「モンスターの数は地上に出てるだけで四百。追加があるかはわからなかったわ」
「猿獣人の男達だけが街の跡に居て、残りは村に居るようだ」
「猿獣人の戦力は百五十と言ったところだぜ。装備ははっきり言ってゴミだな」
となると、やはり問題はモンスターと言う事になる。モンスターさえ排除できれば、後はあっけないだろう。問題はどうやってモンスターを使役しているかなんだよ。
「リーダーらしき男が大事そうに箱を持っていたな」
「常にモンスターが周りを固めていたね」
「モンスターが周りを? 猿獣人ではなく?」
「ああ、猿獣人は近くに居なかった」
ふーん。これはもしかすると、もしかするね。少し光が見えてきた気がする。取り敢えず、陽が暮れるまで待とう。村の外には着々と武器防具を装備した獣人さん達が集まって来ている。こちらの戦力はおよそ千人。数では勝っているけど果たしてモンスター相手にどこまでやれるか。今は外でジンさんとルーさんが基本的な陣形や戦術を教えてくれている。
陽が暮れて真っ暗になったところで移動開始。いつかの時みたいに俺は両脇を支えられての移動になる。宗方姉弟もだけどね。砦建設場所の近くに来たので全員一旦待機。俺は暗闇の牙のメンバーと一緒に砦建設場所に行きマップスキルを見ながら予め作っておいた棒を、要所要所に立てていく。これを目安にみなさんは作業する事になるので、とても大事。特に堀を造る人達はこれがないと全くわからなくなるからね。
さて、準備は整った。さあ、始めよう異世界版一夜城!
「み~!」
大盾を持った犬獣人が堀になる場所の前に並びその後ろに、槍を持った狼獣人さんや虎獣人さんが並ぶ更に後ろに弓を持った狐獣人さんや狸獣人が並んで待機する。猫獣人さんや豹獣人さんなどは遊撃隊として、取り敢えずは周りの警戒をしてもらう。
砦建設場所の各所に木材を置いていき牛獣人さん達と一緒に大工さんが組み立てを開始。ネズミ獣人さんは小さく力も弱いので大工さん達の手元作業を手伝ってくれている。土スキル持ちの方々も作業を開始したようだ。
最初に組みあがった物見台に上がって、ライフルのスコープを覗き街の跡の方を見るけど真っ暗で何も見えない。俺は役立たずだよ……見張りお願いしますね。
「みぃ……」
適材適所って言葉があるんだ、こう、真っ暗では俺ではどうしようもないよ。三時間位経ったところで物見台の見張りの人が声を上げた。
「敵が動き出したぞ!」
全員に緊張が走るのがわかる。堀の方は大方終わっているけど、防壁の骨組みである塀はまだ、半分も終わっていない。
「どうします? ジンさん」
「堀は間に合うか?」
「俺が手伝えばすぐにでも」
「なら、堀の内側で守った方が無難だな」
と言う事なので、堀の整備を俺も手伝いモンスターが来る前に川と繋げる事ができた。前面の塀もできているので、土スキルで塀を覆い補強する。流石にキツイね。ミーちゃんのミネラルウォーターをがぶ飲みしてます。お腹がタプンタプンだよ。盾持ちの方達をまだできていない場所に配置して、防壁の上に弓と槍持ちが並ぶ。遊撃隊は後方に配置していつでも飛び出せる状態でいてもらう事になる。
モンスター達はもうすぐそこ、真っ暗だとやり難いので篝火を焚く。役に立ったのが迷宮アイテムの松明。迷宮の外に持っていけないので、狐獣人の村に置いていったのだけど全く消える気配が無いので使っている。そう言えば、これを使ってトシは炎スキルを練習していたね。今もトシが松明を持っている。
「放て!」
ジンさんの掛け声で一斉に矢が放たれる。俺達の来る前までの弓ではスコーピオンローグとピルバグスイパーに傷つける事さえできなかったそうだけど、今は違う。致命傷を与えるまではには至らないけど、十分にダメージを与えている。そんなハリセンボンの状態にもかかわらず、モンスターはこちらに向かって来る。その数はざっと二百くらいだろうか。
奴らは倒れた仲間を気にせず乗り越えて来る。一度、堀の前で立ち止まる様子を見せたけど、そのまま防壁に向かって歩き始めた。防壁に近づいたモンスターは槍で攻撃されて倒れていくけど、死骸が折り重なり段々と高くなってきている。
「ネロ! 不味いぞ!」
何が不味いのか確認すると、モンスター達が防壁のない方に回り込もうとしているようだ。しょうがない、秘密兵器を投入しますか。テッテレー、ミーちゃん!
「み~?」
何故、堀を作ったか? こう言う場面を想定していたからに他ならない。
さあ、ミーちゃんやりますよ!
「み~!」
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