290神猫 ミーちゃん、お化けは怖いです。

 猿獣人さん達はだいぶ窮地に立たされていると思う。おそらく猶予はほとんど無いに等しい。何か事を起こすとすればここ二、三日中の事だろう。暗闇の牙のみなさんも、ジンさんも俺と同じ考えのようだ。引き続き、暗闇の牙のみなさんには、偵察をお願いしておく。


 その事を各部族の代表の方に伝えると緊張が走ったね。



「大きな戦いが起こると言う事でしょうか?」


「起こると思います。向こうにはほとんど食べるものが無いようですので、こちらから奪う以外方法がありません。そして村との間にはこの砦がある。迂回して村を襲うと言う手もありますが、街の跡地の防衛ができなくなるのでやらないと思います。食糧を確保できたとしても、街の跡地を奪れた時点で彼等の負けは確定だと思うので」



 六階層に降りる道をこちらで押さえれば例えモンスターを使役できるとしても、もうモンスターの数を増やせない向こうはジ・エンド。数で劣る猿獣人さん達に勝つ術は無い。戦いは数だよ、兄貴! 俺に兄弟は居ないけどね。


 なので、砦の警戒態勢をあげる事にする。防衛の為の手もいろいろ考え用意もした。かかって来いやぁー!



「み~!」



 なんて言ったせいでフラグが立ったのか、夜中に暗闇の牙のみなさんが慌てて戻って来て報告をしてくれる。どうやら、全てのモンスターを総動員してこの砦に攻め込む準備をしているようです。その数は五百体に迫る勢いだとか、最初から全軍投入していれば九百体以上でこちらの砦も未完成で圧倒的不利だったけど、砦も完璧罠も仕掛け数も我々の半分負ける要素が無いね。


 それに援軍も到着した。日中に持たせたミネラルウォーターを受け取った熊獣人さん達が、お礼と称して五十人援軍として来てくれたのだ。猿獣人さん達を襲撃して被害が出たせいで、村の防衛を考えるとこの数が精一杯らしい。それでも送り出してくれた熊獣人さんの長に感謝だよ。


 熊獣人さんは獣人の中でも一番力が強い部族。身体も大きくマッチョな人ばかり。顔がリアルなので威圧感が半端ない。でも中には白クマ、パンダ顔が混じっている。驚きなのが某九州地方のご当地マスコットキャラクター顔が居たのには驚いたよ。確かに熊だけどね……良いのか?


 宗方姉弟は恐れ知らずで抱きつき、熊獣人さんがもの凄く困惑している。ミーちゃん、行っちゃ駄目だよ! 梨のお化けが出て来るかもしれないからね。ミーちゃん、え!? って顔してから怖いよ~て顔になった。



「みぃ……」



 ミーちゃんは、可愛いなぁ~。


 それから、熊獣人さん達にはオークが使っていた武器を渡してある。あのオークの武器を軽々と扱っているのは驚愕です。味方で良かったよ。



「み~!」



 夜中に見張り台から敵襲の声があがる。全員が持ち場につき、俺も防壁の上に立つ。


 さあ、始めようか! 無能なモンスター共よ、知恵ある者の戦い方をその身を持って味わうが良い!


 無能なモンスターの割に、しっかりと統率の取れた動きをしているのは使役されているからだろう。五十体ぐらいで横並びに列を組み残りもその後に続く。なかなかの行軍姿。しかーし、ある場所に到達した所でその姿もバラバラになる。前の方に居たモンスターが落とし穴に落ちたのだ! 幅二メル深さ四メル長さ四十メルに渡りコツコツと土スキルで作り上げた大作、上から見てもわからないように薄く蓋をしている。


 後ろから押されるせいで、あれよあれよと落ちていく。大笑いだね。しかーし、ここで手を抜く気は無い。ジンさんが合図を出すと防壁の上から拳大の容器が穴の中に投げ込まれ、次の合図でトシが炎スキルで火の玉をいくつも投げ込んだ。


 たまやー! かぎやー! キャンプファイヤー!


 最初に投げ込まれたのは、もちろん、油。



「燃え盛れ、業火の炎よ!」



 なんて、カオリンが叫んでます……。どこぞの患者さんですか?



「自分で合図しといてなんだが、容赦ねぇな……」


「ネロを敵に回したくはないな……」


むごいな……」


「流石、残虐非道なネロにゃ。十分に魔王になれるにゃ!」


「にゃ!」


「やはり、ネロさんには魔王が良く似合うね」


「だね~」



 ペロくんと他三名、後で校舎の裏に来いや! 話付けたるさかい! 覚悟しとけやー! 吐いた唾は呑めんからのう。……あらやだ、下品なお言葉ごめん遊ばせぇ。



「みぃ……」



 それでも、モンスターは進軍を止めない。火だるまになりながらも落とし穴を乗り越え、倒れた仲間を踏み越えて進んで来る。追い打ちをかけるようで悪いが、今度は矢を射る合図が出される。


 それでも残りのモンスターは、砦を囲むように堀に入ってくる。学習してないようだ。そこまで細かくは指示が出せないのかもしれない。


 神猫勇者ミーちゃん、出番ですよ!



「み~」



 勝手知ったるなんとやら、ミーちゃん俺の肩からぴょんと飛んでお立ち台の上ででお座りし準備万端。さあ、やっちゃってください!



「み~!」



 青い火花が散り、水面を光が走る。ミーちゃんもモンスター相手だと情け容赦無いね……。


 左右の門が開き跳ね橋が降ろされ、獣人さん達が飛び出して行く。これで勝てば、大方の決着が着くのでやる気満々です。


 やる気満々なのは良いけど無茶して怪我しないでよね~。



「み~」






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