276神猫 ミーちゃん、狐獣人と商いをする。

 猿獣人とは交渉が厳しいなら、他の獣人さん達やこの狐獣人さんはどうだろう。彼らの真意を聞いてみたい。



「一つ聞かせてください。もし、我々があなた達に協力して元の街から猿獣人を追い払ったらどうしますか?」


「そんな事ができるのですか?」


「もちろん、みなさんの協力が必要ですが、できると思います」


「だとしても、私達はどうもしないでしょうな。私達にはあの場所に、これと言った利用価値はありませなんだ。手に入れても面倒事が増えるだけ、私達はただ平和に暮らして居たいだけ」



 無欲なのは良い事なんだけど、俺が欲しい答えはそんなんじゃない。戦いが終わた後に同じような事が起きないようにそれなりの責任を負ってもらいたい。その事を長に伝える。



「私達に支配者になれと?」


「違います。同じ過ちを犯さない方法をとって頂きたい。例えば部族会議を開くなど、或いは街を復興させてすべての獣人の方が住めるようにするなどです」


「そんな上手くいきますかな?」


「さあ? あなた達の努力次第だと思います。努力しなければ同じ事を繰り返すだけですね」


「わかりました。一応、他の部族と話をさせて頂けますかな? 流石に私一人では手にあまりますでな」


「早急にご判断願います。我々も長くは居られませんので」


「わかりました。すぐに人を出して集め話し合います。それまでの間、何も無い村ではありますが、ごゆるりと」




 一旦、外に出てみんなと話す。



「どうするつもりだ? ネロ」


「相手の返答次第ですけど、一度戻るかもしれません」



 狐獣人さん達がやる気なら一度クイントに戻って準備をする。俺達の助けは必要ないと言ってくれば、猿獣人の所に行って強行突破もあり得る。



 結果が出るまで時間があるので自由時間にした。俺はミーちゃんと村の雑貨屋に行ってみる。



「いらっしゃい。おや、みない顔だね。何か必要な物でもあるかい?」


「何か珍しい物ってありますか?」


「み~?」


「こんな村の雑貨屋に珍しい物なんて置いてると思うかい?」



 まったくもって、狐獣人のおばさんの言う通りです。はい。



「この村の名産って何ですか?」


「名産って言ったってねぇ。たいした物なんか作っちゃいないよ」



 そう言いながらもいくつか説明してくれる。野菜や穀物は珍しい物は無い。養蜂をおこなっているらしく蜂蜜が多くあった。店の中を見て周り棚の上に並べられた陶器の入れ物に目が行く。陶器自体はたいしたものじゃない気になるのはその中身、何が入っているんだろう?



「み~」



 蓋を開けるとどこかで嗅いだ事があるちょっときつめの香。これはもしかして……。



「それはこの村で作っている香辛料だよ。肉につけて焼くと最高だね」



 おぉー、やっぱりそうだったのか。鑑定するまでもなく胡椒だね。この辺の気候は結構熱いから亜熱帯くらいなのかも、なら栽培できるのかも。



「おいくらですか?」


「おいくらって……この村の中じゃあ、金なんて使わないよ。基本物々交換だね」



 物々交換ですかぁ~。何が欲しいんだろうか?



「何か欲しい物ってありますか?」


「そうさねぇ、あんた達外の人なんだろう? それこそ珍しい物ないかい?」



 あり過ぎて困ります……。でもそこは商人の卵、安く手に入れたい。なので元手のかかっていない物を考えた。



「ロングテイルエイプの毛皮なんてどうですか?」


「毛皮かい? 物を見てみないと何とも言えないねぇ」



 なので、ミーちゃんバッグからロングテイルエイプの死骸を出して見せた。見せたとたん、狐獣人のおばさんは悲鳴を上げて店から走って出て行ってしまったね。何故?



「み~?」



 しばらく待っていると、数人の狐獣人の男性に担がれて戻って来た。どうやら、走って出て行ったのは良いけど途中で腰が抜けたようで村の人に助けてもらっていたらしいね。


 村人達はロングテイルエイプの死骸を見て顔を引きつらせている。



「だから言った通りだろう?」


「お客人、悪いがこいつを片付けてくれないか」



 そうなんですか? 残念です。まあ、構いませんけどね。



「毛皮駄目ですか……残念です」


「ま、待っとくれ、違うんだよ。腰を抜かしちまったが要らない訳じゃないんだよ。要らないどころか、ぜひとも交換しておくれよ!」


「流石に、ここに置かれても困るからな、別の場所で解体させて欲しい」



 なんだそう言う事ですか、喜んで交換しますよ!



「み~」



 村の外れで狐獣人さん達がロングテイルエイプの解体をしてくれている。俺とミーちゃんは見てるだけ、だって解体できないしねぇ?



「みぃ……」



 解体していると村人が集まってくる。みんなも一緒に集まって来た。



「何してるにゃ?」


「にゃ?」


「ロングテイルエイプをこの村の雑貨屋さんに売った」


「いくらで売ったんだ? ネロ」


「黄金一粒」


「一体で黄金一粒とはなかなかの商売上手だぜ」


「ロングテイルエイプ、お金になったんですね」


「わーい! 売れたー」



 ジンさん達がわからないのは当たり前だけど、宗方姉弟は気付くと思ったんだけどなぁ。


 オークを一体出してルーさんに解体を頼む。解体してもらっている間に村人に火を起こしてもらう。



「お客人、一体どれだけあるんだね。うちの村だけでは捌ききれないよ」


「他の村では香辛料作っていませんか?」


「うちの村のとは違うものだけど作ってるよ」


「なら、それを集めてください。それから、種や苗木もあったらお願いします」


「ああ、任せておきな、久しぶりの大商いだよ」



 フッフッフッ……ラッキーとしか言いようがないね。まだ見ぬ香辛料楽しみですよ!



「み~」





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