275神猫 ミーちゃん、迷宮でユンと出会う。

 川を下流へと歩いて行くと村らしきものが見えてきた。意外と厳重な囲いで囲まれた村のようで、村に近づくと見張り台の上から声を掛けられる。



「お前達は何者だ? どこから来た?」



 声を掛けてきたのは、狐獣人それもリアル動物顔ユンのようだ。ユンとはなかなかに珍しい。俺は初めて見たね。モフモフだよ。触らしてくれるかな?



「山の中腹の洞窟から来ました」


「み~」


「なに!? では、外から来たと言うのか?」


「迷宮の外と言う事であれば、その通りです」


「み~」


「ちょ、ちょっと待っててくれ! 長を呼んでくる!」



 しばらく待っていると門が開けられ数人の狐獣人が出てくる。



「長があなた達にお会いしたいと言ってます。しかし、村に入るのには武装解除して頂けなければなりません」



 ここまで来て、会わないと言う選択肢はないので武装解除の要求をのみ武器を渡した。何かあったとしても予備の武器はミーちゃんバッグの中にいくらでもあるので問題はないけどね。


 村の中には結構人が居る。俺達一行が珍しいのか遠巻きではあるがみなさん見ている。そんな中を村の中央の建物に案内され、中央に囲炉裏のある部屋に通される。



「ようこそおいでなさった。強者の皆様。私はこの村の長をしておる者です」



 囲炉裏の向こうに年老いた狐獣人が座っていて、こちらに語り掛けてきた。案内してくれた狐獣人さんに囲炉裏の傍に座るように促され座る。正直、暑いのであまり囲炉裏の傍に行きたくないけど、仕方ないのでコートを脱いでから囲炉裏の傍に座った。他のメンバーは俺の後ろ五歩位後ろに座ったようだね。裏切り者め……。



「ここは迷宮の中なのですよね?」


「さよう。迷宮の中ですな。外から人が来るなど昔話でしかないと思っておりましたな」



 昔話ってどんだけよ。長が言うには冗談抜きにここ二百年位は外から人が来てないそうで、長自身外から人が来るなど眉唾ものと思っていたらしい。それでも、外から人が来る事は昔話として受け継がれてきたそうで多くの者がこの地を訪れていたと言う事だ。



「自分達で外に出ようとは思わなかったのですか?」


「外に出れば災いが降りかかると言われており、それに入り口を塞ぐオーク達には敵いませなんで。過去に幾人かが試したそうですが、誰一人として戻って来なかったとか」



 それは、オークにやられたと言う事なのか、外に出られてここに戻って来なかったと言う事なのか判断に苦しむね。


 多くの来訪者があった時は大きな街でいろいろな種族が暮らしていて活気があったと言われているけど、来訪者が来なくなると街は廃れていつの間にか種族別に村を造り生活するようになったと言う事らしい。


 以前、街だった場所は下の階層に降りる道があるらしく。今はいくつかの種族がその場所の支配権を巡って争っているそうだ。今現在優勢なのが猿獣人で狼獣人と熊獣人と争っているらしく、猿獣人は狐獣人や他の獣人に配下になるように武力に物を言わせて強要して来ているそうだ。なのであんなに厳重だったんだね。


 猿獣人は昔の街の場所を支配して居る事で、どうやってるかわからないけど下の階層のモンスターを使役して自分達の戦力として使っているそうだ。狐獣人や他の獣人は防戦一方なのだそうけど、犬獣人、猫獣人、兎獣人、狸獣人などが同盟関係にありなんとか守る事はできているとの事。


 逆に、プライドが高く力の強い狼、熊獣人は猿獣人を追い出してこの地の支配者になる事を虎視眈々と狙っているらしい。


 これは困った事になったね。下の階層に降りる為、猿獣人と交渉の余地はあるのだろうか? 話を聞く限り厳しい感じがする。まさか、こんなイベントが待ち構えているなんて思いもしない。ミーちゃん、どうする?



「みぃ……」



 みんなも困った顔をしている。うーん、もう少し長と話をしてみよう。



「我々は下の階層に降りるのが目的です。なんとかなりませんか?」


「み~?」


「猿獣人はそれを良しとはしないでしょうな。猿獣人は力はたいした事はありませんが、獣人族の中では頭の良い部族で、来訪者が来ていた時には猿獣人が街を管理していたと言われておりますれば。そう言った過去の栄光を捨てられたなかったのでしょうな」



 猿獣人はいろいろ汚い手を使い元の街を支配下に入れたそうだ。そう言う事もあり他の獣人族は猿獣人を信用しなくなり、猿獣人も他の獣人族を信用しなくなり猿獣人族の配下になれと言うような暴挙に出たんだろう。


 狼獣人と熊獣人は力が強い事から、そんな猿獣人の言いなりになるなど言語道断と戦いを仕掛けているけど、プライドの高い部族なので共闘などは考えていなく戦況は思わしくないようだ。



「猿獣人が使役しているモンスターってどんなモンスターですか?」


「スコーピオンローグとピルバグスイパーと言うモンスターです」



 二足歩行のサソリとデカイダンゴムシだそうだ。硬い外皮を持っているので彼らが持つ武器では歯が立たないらしい。鍛冶技術も低いうえ、腕の良い鍛冶師は手先の器用な猿獣人に多いと言う事なので、ダブルパンチ状態だね。



 どうやってモンスターを使役してるんだろうか? 知能の高いモンスターなのかな? それにしても厄介な相手だね。


 さてさて、どうしようか、ミーちゃん?



「み~?」





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