274神猫 ミーちゃん、迷宮内で人の痕跡を見つける。

 時間的に翌日の朝、二日酔いが二人居る。



「迷宮の中で飲む酒はキツイな……」


「頭痛ぇ……」



 他のメンバーは、元気に朝食を食べてます。昨日、あんなに食べたのによく入るね……。



「み~」


「既に消化済みにゃ!」


「にゃ!」


「食べたら出す」


「快調快便だぁ!」



 お食事中のみなさん、ただいまお聞き苦しい会話がございました事、お詫び申し上げます。そこで、はたと思い出す。ミーちゃんのトイレを置いとけば、モンスター寄って来難いって事……。でも、確実では無いから保険程度だけど、まあ、今まで襲われた事はないけどね。


 これから五階層に行くってのにこれでは問題があるので、二人にミーちゃんのミネラルウォーターを飲ませる事にする。



「お、俺は、だ、大丈夫だ。き、気にすんなよ……」


「おっ、水か。気が利くな、ネロ!」



 ゴクゴクとジンさん飲んでいく。この光景、どこかで見た記憶が……。



「ジンさん……それ、初級ポーション兼万能薬ですよ……」


「ブッー!」



 うわっ! ジンさん汚いし、もったいないでしょう!



「これが初級ポーション兼万能薬だと……どんだけすんだよ。これ。全部飲んじまったぜ……」


「とある方は、これに金貨十枚払ってくれました。それでも安いとパミルさんは言ってましたね」


「金貨十枚だと……ルー、知ってたのか?」


「はい……」


「ルーさんも早く飲んでください。出発できませんよ。代金は迷宮の分け前から天引きしときますから」


「「魔王が居る……」」



 鬼からランクアップしたみたいです。失礼だね。



「み~」



 ルーさんも意を決し一気飲み。一本百万円の水、普通は臆するよね。ルーさんの反応が普通なんだよ、きっと。ポンコツ神様からもらったスキルのお陰で感覚がマヒしてるんだと思う。俺の体調が悪くなる事を除けばタダだからね。やろうと思えば一日に日本円で二千万円、金貨二百枚を稼ぐ事も可能だろう。面倒事に巻き込まれる事、大だけど……。それに、全部ミネラルウォーターにしちゃうと、猫缶にミーちゃんクッキーそれに交換用の猫砂が召喚できなくなる。結構、大変なんだよ。


 さあ、みんなの準備が済んだようなので出発しますか。五階層に降りる前にオークリーダーの居た広場を見に行くと、オークリーダーが立って居ました。って事は、やっぱり帰りも倒さないと駄目って事だね。一本道だから迂回できないので当然か……。


 他の迷宮はどうなって居るんだろうか?



「ハンターギルドお抱えの転移師ってのが居てな、そいつがだいたい五階層毎に転移門って言うのを作るんだぜ」



 転移門、どこかで聞いた事のある言葉。はい、烈王さんからもらったやつですね。えぇ、そんな名前でしたよ。


 転移師、とても貴重な人材だそうです。ハンターギルドにも数人しか居ないそうで、国などでも二、三人居れば良い方なんだそうです。スキルの使い方が難しいらしく、例えスキルを持っていたとしても使い方、練習方法は機密なので知る事ができない。使い方を学びたければハンターギルドのお抱えになるか、国の機関に入るしかない。要するに自由には使えず枷を嵌められるって事。嫌だね。


 ちなみに俺の持っている時空間スキルは転移スキルの最上位スキル。最上位スキルと言うより、次元竜以外持ってないはずの所謂ユニークスキルなんだよね。使い方は烈王さんに聞くしかないだろう。ただ、烈王さんが人に教える事ができるだろうか?


 天才とかって感覚でできちゃうから、ここをなグッとしてパッって感じ~? なんて言われそう……他に聞く相手居ないしなぁ。



 五階層に続く道を進んで行くと、だんだん明るくなってくる。俺達の目の前に現れたのは、森? 多くの木々が茂った場所に出て驚く。後ろを振り返れば崖に開いた洞窟があり四階層へと続いている。



「なんだこりゃ……」


「ここは迷宮だよな?」


「こう言うのって珍しいんですか?」



 小説なんかだと良くあるパターンなのでたいして驚きはないね。宗方姉弟も俺と同じようだ。ジンさんとルーさんはとても驚いた様子、レティさんはこんなものかって顔をしている。ペロとセラは木々の匂い、風に撫でられる感触が嬉しいようで喜んでる。俺は少し暑い感じがする。



「普通あり得ねぇだろう……」


「なんで驚かないんだよ……」


「「だって、迷宮だしぃ?」」


「「……」」



 それより、どうすれば良いのかな? まさか、ここが最下層? どれ位の広さなんだろう?



「ちょっと登って見てくるにゃ!」



 身軽なペロが木を登って行く。ミーちゃんも登りたそうにしてるけど、今回はパスだよ。高所恐怖症じゃないけど、できればもう木には登りたくない……。



「みぃ……」



 ペロがスルスルって降りてくる。



「ここは山の中腹にゃ。向こうに川があって少し開けてるにゃ」



 取り敢えず、ペロが指差した方向に向かう事にした。セラが嬉しそうに先導して歩いているけど、今の所モンスターに遭遇していない。徐々に木々が開けてペロが言っていた川へと出た。



「どうやら、人が居るようだな。少年」


「確かに、痕跡があるぜ」



 レティさんとルーさんが言うならそうなんだろ。さてさて、敵か味方か、はたまた斜め上いく存在か? 面白くなって来たね。



「み~」





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