273神猫 ミーちゃん、お魚食べれて満足です。

 隠し部屋を出て一度安全地帯に戻る。



「どうします?」


「どうするって何がだ?」


「このまま、五階層に行きますか? それとも、今日は休みますか?」



 時計を見れば昼の三時、時間的に微妙な時間帯。ただ、宗方姉弟の疲労を考えると、早めに休んでも良いような気がする。



「どうだ? お前ら」


「疲れましたぁ」


「休みたい~」


「にゃさけにゃい子分にゃ」


「「にゃんこ先生……」」


「しゃねぇ。少し早いが休むか」



 安全地帯の入り口を土スキルで塞ぎ、テントを張る。その後に湧き水の近くに湯船などを作って、お湯も張っておく。最初はやはり女性陣から。ミーちゃん、セラ、レティさんにカオリンだね。


 俺はジンさんとルーさん、ペロ、トシとテーブルでトランプをして時間を潰す……はずだったのに、気付けば大盛り上がり。ポーカー、ブラックジャック、バカラなどで賭けゲームが始まってしまっていたからだ。最初は銅貨でやっていたのに銀貨になり今では金貨を賭けてやっている。ちなみに俺、勝ってます。


 負けているのはジンさんとペロとトシ。ジンさんは引きが弱いようで、ペロとトシは顔に出るタイプ。ポーカーフェイスのルーさんは強いね。俺は運で勝ってるようなもの、地味に幸運スキルが効いているのかな?



「ぐぬぬ……」


「にゃは! にゃははは!」


「……ぶつぶつ……」



 女性陣は既に風呂から上がって、カオリンはミーちゃんとセラの毛をタオルでフキフキ乾かしてくれている。レティさんはさっき俺からワインをもらいひとり酒に興じている。美人だけに絵になるね。



「ま、負けたぜ……」


「にゃ、にゃぜにゃ……」


「しゃ、借金地獄……」



 俺とルーさんはウハウハだね。



「今回の負け分は、迷宮探索の分け前から引かせて頂きます」


「当然だな!」


「「「鬼がいる(にゃ)……」」」



 ジンさんふて腐れてエールを要求して来た。レティさんがワインを飲んでいるのを見て欲しくなっただけだと思う。しょうがないから出してあげると、ルーさんが俺を見て猫ミミをピコピコさせている。猫ミミ女性ならグッとくるものがあるのだろうけど、男じゃねぇ……しょうがない出してあげよう。


 今日は松明と言う火があるので、魚を焼こう。ミーちゃんバッグから小魚を出してもらい、サッと塩を振り松明の火で焙っていく。これがなかなか難しい。火力が弱いせいか上手く焼けなく真っ黒焦げ。仕方ないのでフライパンで白ワインで蒸す事にしたよ。フライパンの下に松明をおけば丁度良い火力。美味しそうな匂いが漂い始める。



「み~」


「そうですにゃ、美味しそうにゃ匂いですにゃ。最初の一匹は姫からにゃ」


「にゃ」


「み~!」



 蒸しあがった魚はレティさんがほぐしてくれている。ミーちゃんはそれをじっと見てる。よだれが出てるんじゃないかと思う程、じっと見てる。レティさんがほぐし終わった魚をミーちゃんの前に置くと、ミーちゃん今度は俺をじっと見てる。



「レティさんにお礼を言ってから食べてね」


「み~!」



 ミーちゃん、レティさんに飛びついてスリスリして感謝の気持ちを伝える。レティさん、顔がデレ~っとだらしなくなってますよ。


 どんどん、蒸し焼きを作っていけども、いけどもすぐになくなり休む暇がない。お前ら少しは遠慮ってものを知らないのか!



「ネロ、もう無いにゃ。おかわり!」


「にゃ!」



 知る訳ないよねー。


 おかずは魚以外にも出してる。出してるのに減るのが早い……そう、宴会モードに突入しているのだ。酒飲みの三人に残りはノンアルコールなのでナチュラルハイにできあがっている。



「おい、ルー。俺達、今どこに居るんだっけ?」


「やだなぁ、ジンさん。迷宮に居るに決まってるじゃない……ですか?」


「そうだっけ? まあ、良いか?」


「「ワッハッハッ!」」



 駄目だ……完全に酔っ払いモードだ。明日は大丈夫なのか?


 蒸し焼き魚も注文する者がいなくなったので、自分の分を作る。三枚におろした白身魚に玉ねぎのスライスとキノコを乗せてマヨと少量のバターを入れ白ワインで蒸し焼にする。本当はアルミホイルで包み焼にするレシピだけど、無いからしょうがない。出来上がったら少量のレモン汁をかけて完成。



「み~」



 ミーちゃん、目敏く俺の蒸し焼魚を見つけて寄って来たね。



「食べてみる?」


「み~」



 ミーちゃんのお皿に白身魚を半分載せてあげ、ミーちゃん、玉ねぎも問題無いからキノコと一緒に出してあげる。



「召し上がれ」


「み~」



 ミーちゃん、スンスンと匂いを確かめてから、ハムハム食べ始める。食べ終わるまで終始無言で黙々と食べたね。



「ケポッ」



 ミーちゃんお腹をポッコリさせてひっくり返ってます。食べたね~。レティさんからもらった魚の後に猫缶も食べてるからね、残すと思ってたよ。ミーちゃん、満足~♪ って顔してるから、俺も満足だよ~。


 さて、俺も食べようか……。



「これ旨いにゃ」


「にゃ」


「バターの風味が良いね」


「マヨにレモンあう~♪」



 俺の蒸し焼魚はどこ行った?



「み~」






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