268神猫 ミーちゃん、密かに松明を狙ってます。

 オークの持っていた松明をたまたま鑑定したら


 迷宮の松明 一度火をつけるとなかなか消えない。迷宮特別品の為、持ち出し不可って、ゲームか! ますます、迷宮と言うものがわからなくなった……。


 火のついた赤々と燃える松明を持ったオークと猫じゃらしを持った俺は向き合う。奴は火、俺は水、勝負は互角。先に元が尽きた方が負け。


 猫じゃらしを収納し、樽の中から拳大の水を手のひらの上に球体の状態で維持する。オークもやっと理解したようで、薄汚い豚顔をニヤリとさせて俺と同じように手のひらの上に火の玉を作る。



「み~」



 ミーちゃんの声が合図となり、お互いに投げ合いお互いの中間地点でぶつかり相殺されて水蒸気が辺り一帯を包む。豚顔がやるじゃないかと言った顔になり、今度は両手に火の玉を作りだした。普通なら松明の火如きなら今の火の玉で消えていてもおかしくない。なのに、何事も無かったかのようにらんらんと燃え盛っている。阿保な……チートアイテムやん!


 俺も負けていられない。両手に水の玉を作って相手を見据える。この勝負、火の玉にぶつけなければならないので、若干俺の方が不利。相当に不利ではなく若干の不利と言うのは投擲スキルの熟練度が上がっている為、コントロールが完璧なうえ変化球まで投げられるのと、水スキルの熟練度も上がっているので俺から離れた水の玉に対しても状態変化をさせる事ができるので、少しくらい外れても水の玉の形を変えて火の玉にぶつける事ができるからだ。



 もう、何度投げ合ったのだろう? 樽の水が残り僅かになっている。くっ……こいつできる!



「おい、ネロ! いい加減にしろ! 前が見えねぇだろ!」


「サウナにゃ……」


「暑いね……」


「お肌には良いよ~」



 た、確かにサウナ状態だ。暑苦しいね……。周りを見ると水蒸気が立ち込め周りが見辛い。そして、うちのメンバーだけでなくオークもぐったりとしている。まあ、金属鎧着てればそうなるよね。



「み、みんな、今がチャンスだ!」


「み~!」



 俺も目の前のオークに走り寄り、至近距離で雷スキルを発動。何もしなくても雷の鞭は金属鎧に吸い込まれていく。オークさん、痙攣して倒れましたね。



「俺の作戦勝ちだー!」



 何ですか? みなさんその目は。オークを楽に倒せたでしょう? その疑惑に満ちた目はやめてください……。


 各自オークに止めを刺して収納、武器も回収する。落ちている松明を拾ってみるけどまだ、赤々と燃えてる。いつまで燃えているんだろう。松明が短くなった形跡も無い。正直、持ってても仕方ないので捨てとくか。ポイっと。タバコのポイ捨てはやめましょう。危険だしマナー違反だからね。でもこれは松明だからノーカン。



「それ、いらないにゃか?」


「欲しいの?」


「欲しいにゃ!」


「み~」



 ペロが嬉しそうに松明を拾って掲げている。クルクル回したり手のひらの上でバランスをとったりしてるけど、松明ってそう言う事する為の物じゃないでしょう?



「「にゃんこ先生良いな~」」



 人は他人が持っている物が欲しくなると言う、典型的なパターンが発生した模様。宗方姉弟よ、それを貰ったとして君達は何に使うつもりだね? それから、ミーちゃんも欲しそうな顔しない。



「みぃ……」



 一段落がつきみんな座り込んでる。



「それにしても、強かったぜ」


「装備品が最初の奴らと比べものにならねぇ程、良いもんになってたな」


「売れば金になるのか? 少年」


「うーん、どうなんでしょう。確かに良い品のようですが、オークサイズの武器防具ですからね。欲しがる人っていますかね?」


「「「ないな……」」」


「みぃ……」



 もったいないけど溶かして新しい物を作った方が良いと思う。ゼルガドさんに渡せば問題無いでしょう。いろいろ、作ってもらえそうだ。



「さっきのパターンでいくと、次も同じか更に強いオークって事になるのか?」


「しゃあねぇ。俺も攻撃に回るかぁ」


「ならば、私も少しだけ本気をだそう。良い剣はないか? 少年」



 ほう。レティさんが本気を出すねぇ。良いでしょう。お出ししましょう。


 タッタター! 神剣。


 このメンバーに鑑定持ちはいないから問題なし。ちょっとどんなものか使ってみてもらおう。烈王さんに聞いてから使ってみようかと思ったけど、先ずは実戦投入からだ。



「おいおい……なんだ、その物騒な剣は……」



 ジンさん、失礼な言い方よして下さい。仮にも神の力が宿った剣ですよ……あれ? そう言えば、神の力が宿りし剣ってなってるけどポンコツ神様(姉)なのかな?



「み~?」



 ミーちゃん、わからないよねぇー。


 ジンさんが俺から神剣を奪いいろいろ確認している。



「ネロ。こいつを使うのはやめておけ。俺の勘が危険と警鐘を鳴らしてやがる。この剣に刻まれてる印も見た事がねぇ。腕の良い鑑定士に見てもらった方が良さそうだぜ。怪し過ぎらぁ」



 ジンさんは危険回避と言うレアスキルを持ってる。俺の持ってる危険察知の上位版らしい。そのスキルが警鐘を鳴らしているとなると、従わない訳にはいかない。やっぱり烈王さんに聞いてからって事か、危険とわかって良かった。レティさんに何かあったら大変だ。でも、神剣危険なのかぁ、意外だね。



「み~?」 






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