267神猫 ミーちゃん、猫じゃらしに戸惑いを感じてます。

 みんなが一斉にオークの喉を狙うと簡単に勝負ありとなった。一体だけはジンさんが言った通り宗方姉弟の為に無傷で残してある。


 トシとカオリンvsオークの構図が整った。ジンさん達、前衛が少し後ろに下がる。



「良いか! 喉を狙うのは無しだぜ! 訓練にならねえからな」


「「えぇー」」


「つべこべ言わず、さっさと倒しやがれ!」



 鬼だな……。ああ、鬼だ……。親子じゃないから良いのかな?


 オークはゴブリン百三十匹分の強さと出ている。ゴブリンリーダーより若干強いようだ。宗方姉弟よりも基礎身体能力は倍近く上、でも強さはそれだけでは決まらない。それにスキルが加わる事で本当の強さになる。じゃないと、俺では手も足も出ない事になる。スキルは鍛えてこそなんぼのもんだよ。


 トシが懸命に槍でオークの攻撃をあしらい、カオリンが手足を狙って矢を放つ。長期戦だね。それにしても、オークの攻撃を力の劣るはずのトシがあしらえているのは身体強化スキルのお陰なんだろうな。俺も欲しいな。接近戦はするつもりはないけど、便利そうだ。このまま迷宮で戦っていれば魂の器も大きくなるに違いないから、是非とも欲しいスキルだ。


 だいぶ動きの弱ったオークにトシの必殺の一撃が決まり決着が着いた。今は、ジンさんと反省会をおこなっている。トシは相手に夢中になり過ぎ周りが見えなくなっていて、何度か後のカオリンにぶつかりそうになっていた。


 カオリンの方はフレンドリーファイアーを恐れてか、確実に当てられる時しか矢を放っていない。当たらずともオークの気を引くような攻撃を仕掛けろとジンさんから駄目出しが出ている。


 二人共レアスキルを持っているけど、カオリンのレアスキルは戦闘向きじゃないから、何かしらの攻撃に役立つスキルを身につけた方が良いだろう。地上なら土スキル、万能なら雷スキルかな?


 俺は神様仕様の魂の器を持っているからある程度近くでスキルを使われるとそのスキルを覚えると言う事が多々あるけど、普通の人はスキルの習得条件を満たす事で覚えると思われる。習得条件のわからないスキルを意図的に覚えさせる事は非常に難しい。


 雷スキルの習得条件はおそらく問題無い。だけど土スキルはわかっていないんだよね。泥んこ遊びでもさせてみるか? 砂でお城でも作ってみようか? そんな程度しか思いつかない。セリオンギルド長がそんな事するかね? いや、ガキの頃なら十分に考えられる。ものは試しでやってみてもらおう。


 高級肉オークをミーちゃんバッグに収納して先に進む、右回りの渦のような一本道のようだ。あれから四度オークと遭遇している。ジンさんウハウハだね。迷宮なのに一本道、それも高級肉となるオーク、二階層にはロックリザード、この迷宮はお金稼ぎにもってこいの迷宮だそうだよ。


 更に進むとまたオークの一団が広い空間で屯ってるのを、ルーさんが先行して確認して来た。やる事は同じ四体をみんなで倒して、残り一体は宗方姉弟の訓練用にする。弱点もわかっているからさっくっといける。美味しい狩場だよ。


 広場に入って何か違和感を感じた。他のみんなも同じように感じたみたいだ。その違和感にはすぐに気がつく。オークの装備品が良い品に変わっているのだ。中には金属製の鎧を着ているオークまで居る。


 ライフルで喉を狙うけど鎧の襟の部分に喉元をカバーする物がついている為、狙う事ができない。レティさんとカオリンの攻撃も鎧や盾を装備したオークに防がれ、まったくと言ってよい程ダメージが入らない。オークの装備の質が上り何より動きが良くなっている。


 明らかに先程までのオークとは別物、鑑定すると良くわかる。さっきまでのオークにはスキルが無かったのに対してこのオーク達はスキル持ち、強さは格段に上がるはず。



「こいつら、スキル持ちのオークです! 気を付けて!」


「み~!」


「ちっ……面倒だな」



 ジンさん以外は全員聞こえてはいるけど言葉を返す余裕が無いようだ。俺達パーティーは素早さ重視のパーティーなので、必然的に一撃の強さより手数で勝負する戦い方になる。今回のオークは良質の防具で固めているので攻撃が通り辛らく、戦いが押され気味になっている。防具一つでこうも戦況が変わるなんて改めて思うよ、防具って大事なんだねぇ~。


 そんな中、後方に居るオークが何やらこそこそとやっているのが見えた。松明に火をつけている? 何をするつもりなんだ? そのオークを鑑定すると……火スキルを持っていた。こ、こいつやる気だ……これは不味いね。


 ミーちゃんバッグからスミレの飲み水が入ってる樽を出してもらい過冷却状態にして、とある猫用品を用意する。


 オークも準備ができたようで、キョロキョロとこちらを見て攻撃する相手を選んでいるようだ。銃でそのオークを撃つ。鎧に阻まれてダメージは与えていない。本当に良い防具のようだね……でも、ダメージを狙って撃った訳じゃないので気にしない。一瞬でも俺に視線が向けば良いのだ。それは、何故か? タッタター! 猫じゃらし~。


 オークはそのヒラヒラさせた猫じゃらしに釘付け。


 ミーちゃん、そんな嫌そうな顔しないでよ。って、まだトラウマ克服してなかったの?



「みぃ……」







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