266神猫 ミーちゃん、高級肉とご対面する。

 朝食を食べてお茶を飲み一服してから探索開始。すぐに四階層に降りる道を見つけた。安全地帯のすぐ近くなので何かあってもすぐに戻れるので安心仕様。毎回こうなら良いのにね。



「降りますか?」


「三階層はどの位調べられたんだ?」


「三分の一位だと思います」


「安全地帯と下に降りる道は見つけたからな、降りて良いんじゃねぇか?」


「えぇー!」


「隠し部屋は~?」


「み~?」


「先ずは、各階層の安全地帯の場所の確定が急務だぜ。他の探索はその後だってできる」



 と言う事で四階層に降りる事になった。道を下って行くと今までの通路より三倍近く広くなっている。歩き安くて良い感じ。



「気を付けろ! 広くなったって事はそれだけのモンスターが居るって事だぞ!」



 えっ!? そうなの? この幅だと相当に大きいモンスターになるけど?



「一体とは限らねぇ。集団パーティー戦って事もあり得る。迷宮ってのはそう言う所だぜ」



 ルーさんとレティさんが索敵しながら進んでいく。今の所分かれ道は無く一本道だ。先行していたレティさんが戻って来た。



「この先に更に広い空間があり、オークが五体居る。回避はできない」


「オークか……旨い肉にありつけるな!」



 あれ? ジンさん凄いやる気なんですけど。オークと言えば一階層の隠し部屋に居た奴だよね。ロタリンギアで暴れてるのもオークで魔王がオークキング。オークってどんなモンスターなのよ?



「オークの肉はな、高級肉として取引されるんだぜ」


「み~?」



 オークは体も大きく力も強いうえ、頭もそこそこに良いらしい。だけど、ゴブリン程繁殖力は強くなく、量より質って感じなんだそうだ。なので、一体一体は強いけど、その高級肉としての価値があるので見つけられるとハンターさん達が嬉々として狩りに行くことから、なかなかお目に掛かれないモンスターなのだそうだ。じゃあ、ロタリンギアは美味しいお肉であふれかえっているんだろうね。



「しかし、四階層でオークってあり得なくねぇ?」


「でも、一階層の隠し部屋に居ましたよね?」


「みぃ……」


「あれは特別だろう? 異常に強かったからな」



 確かに狂気状態だったよね。ミーちゃん、あの時の失敗を思い出したようで、凹んでます。同じ過ちを繰り返さなければ良いんだよ。



「み~」



 ジンさんはニヤリとしながら俺達に発破をかけてきた。



「五体ならこのメンバーなら問題ねぇ。訓練にももってこいのモンスターだぜ」



 この先に居るオークは武器を持っているそうだ。モンスター相手と言うより対人戦の訓練になりそうだ。



「一体を残すからな。お前ら二人で倒せ」


「「はい」」



 じゃあ行きますか。近づいたらレティさんが投擲のダガー、カオリンが弓で、俺が銃で先制攻撃を仕掛ける。その後は前衛と交代して援護に回る作戦に決まった。


 そっと近寄り先制攻撃を仕掛ける。レティさんの投擲のダガーも俺の銃もたいしたダメージは与えていないようだ。ブモーって変な声をあげて襲ってくる姿は迫力がある。体長は二メル以上あり、ゴブリンリーダーと同じ位強そうに見える。


 全弾撃ち尽くしたので前衛の後ろに後退する。オーク達の武器はお世辞にも良い武器とは言えない物だけど、その巨体から振り降ろされる武器は脅威でしかない。錆びついた大剣や斧、切ると言うより殴る為の鈍器と化してるようだ。


 ジンさんがその鈍器を危なげなく捌き、ペロ、セラ、ルーさん、トシがダメージを与えて行く。レティさんはダガーでカオリンは弓でオークをけん制し俺は土スキルで地面に突起物を作ってオークの動きをけん制している。


 最初は落とし穴を作ろうとしたけど、迷宮の地面に穴を開ける事ができなかった。土壁のように見えるけど、実際は土ではなく違う物質なのかも知れない。俺の落とし穴最強伝説が脆くも崩れ去った訳だよ……。



「み~!」



 ミーちゃん、今回はみんなの応援に回ってる。この戦いは訓練だからミーちゃんが手を貸す訳にはいかない。なので代わりに応援と言う訳だ。


 さて、俺はどうしよう? 銃は効きづらい、土スキルは使えない。ライフルによる精密射撃か雷スキル、薬ぐらいしか残ってないね。薬はもったいない、雷スキルはミーちゃんの協力が無いと結構疲れるから、ライフルでの精密射撃でいこう。


 この距離でスコープを覗くとオークの顔のドアップ。いや、はみ出してる。ジンさんから一番離れてるオークの眉間に狙いを定めて撃つ! ヒット! オークの頭がのけ反る……た、倒れないね? オークの頭が元の位置に戻ると、顔中血だらけで妙に目をギラギラさせたオークが俺を睨んでいないかい? こ、怖いんですけど……。



「みぃ……」



 それにしても、何と言う石頭。この至近距離のライフル弾で貫通できないなんて想定外なんですけど。やばい、完全に俺に狙いを定めたようだ。みんな頑張れ! 石頭を貫通できないなら柔らかい場所を狙えば良いだけの事。目、鼻、口、喉と言った所だろう。口は漫画みたいに歯で防がれそう、大きな鼻も頑丈そうに見える。となれば、目と喉を狙ってみよう。


 ペロが俺にオークを近づけまいと縦横無尽に虎徹を振るっている。一度切りつける度に三つの血しぶきがあがる。ペロの剣の腕もさることながら、流石AFの剣だね。


 銃を構えてオークの血走った目を狙い撃つ! ヒット! 今度は間違いなくダメージを与えた。でも、致命傷にはなっていない。どんだけタフなんだよ! 今度は喉を狙って撃つ! ヒット! まあ、この距離で外す方が難しいかな?


 喉を撃たれたオークは格段に動きが悪くなり、終いにバタっと倒れる。それが俺が喉を撃った事によるものなのか、ペロの攻撃によるものなのかはわからないけど弱点の一つである事は確かなようだ。



「喉が弱点のようです!」


「「「おぉー!」」」


「任せるにゃ! 今宵の虎徹は良く切れるにゃ!」


「にゃ」



 まだ、朝なんだけど迷宮の中は薄暗いから、そう言う事にしといてやろう。乗っているペロに水を差すのもなんだからね。



「み~」







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