265神猫 ミーちゃん、迷宮でお風呂に入る。

 モンスターの亜種は普通の種より格段に強いらしい。その分自然界では滅多に遭遇する事はないそうだ。これが迷宮の醍醐味ってジンさんが言ってる。モンスターの死骸を回収して、探索を続けると程なくして安全地帯を見つける事ができた。



「やっと着いたのね~」


「流石に疲れましたね」


「ご飯にゃ!」


「にゃ!」



 三階層の安全地帯は袋小路になった場所にあった。入り口は一つ、安全地帯だからモンスターが入って来れないとはいえ、用心は必要だ。入り口に土スキルで壁を造り偽装する。他のハンターさん達が来る事はないので問題無い。


 先ずは、寝床作りから。みんなの荷物はミーちゃんバッグに収納しているので、各々に荷物を渡す。いつものテントをペロと張り、中に毛布を敷いてミーちゃんをおろしてあげる。コロンと仰向けになって背筋を伸ばしている。セラの脚を拭いてあげるとセラも毛布にコロンと横になる。レティさんも横になっている……なってセラに抱きついてる。早っ! 今のセラは豹の姿なので抱き心地は良いだろうけど、レティさんだらしないですよ。



「疲れた後のモフモフは最高だな。少年?」


「……いえ、なんでもありません。一息着いたら食事にしましょう」



 ジンさんとルーさんはテントは必要無いと言ってシートの上に毛布を敷いただけ、宗方姉弟はテントを張って寝るので悪戦苦闘しながら設営している。ペロ、手伝ってやったら?



「仕方のにゃい子分共にゃ。手伝ってやるにゃ!」


「「にゃんこ先生!」」



 宗方姉弟はいつからペロの子分になったんだろう? 俺の知らない所で何かあったのかな? ペロの子分になるなんてプライドはないのか! まあ、にゃんこ先生って呼んでる自体で駄目か。



 安全地帯には水が湧いている。どこから流れてきて、どこに流れて行くのかは疑問だけど鑑定で見ると清水と出ているので飲んでも安心。手と顔を洗い食事の準備をする。すると言ってもミーちゃんバッグから大きなシートを出して、その上に脚の短いテーブルを置いて座布団を並べる。そして、作り置きしてある料理を並べて行くだけ。靴を脱いでシートに上がり各々座布団に座る。



「「「「「頂きます(にゃ)!」」」」」


「にゃ!」


「み~」



 一杯あるから好きなだけ食べて良いよ。デザートの分のお腹をちゃんと開けておくようにね。腹ペコ魔人には言っても無駄か。



「なあ、ルーよ。迷宮探索ってよう。こぅなんか、違うような気がするんだけどよぅ?」


「ジンさん、ネロ達ですから深く考えたら駄目っす!」


「から揚げ最高にゃ~!」


「にゃ~!」


「ミートボールの入ったスパゲティ、夢のコラボだね~」


「このマンガ肉ってどうやって作ったんですか!」


「……でしょう?」


「……だな」



 失礼な。美味しい料理を食べられる事に何が不満なんだろうか。美味しい食事は荒んだ心の活力となるんですよ! あー、それから漫画肉はサイクスさんと冗談半分で作ってみました。結構、イケてない?


 楽しく夕飯を食べ終わり、デザートも堪能したから後は寝るだけ。迷宮の中だと時間の流れが良くわからなくなるので、無理して体調を崩してしまう。俺は時計を持っているので、ちゃんと朝夜の区別がつくので普段の生活パターンを崩さないよう気を付ける。


 正直、寝るにはまだ早い気もするけどする事も無いから仕方がない。トランプでもする? そう思っていた時、カオリンがミーちゃんをモフりながら意外な事を口走ったね。



「お風呂に入りたいねぇ。ミーちゃん」


「み~」



 ミーちゃん、お風呂に入りたいの? ならば簡単、桶に水を汲んできて水スキルで温める。ミーちゃん風呂の完成。



「ああ、ミーちゃん良いなぁ」


「み~」



 セラも猫の姿になってミーちゃん風呂に入って来た。



「セラもず~る~い~」


「にゃ」



 洗濯用の大きな桶はあるから入るか? 深さ三十センもないけど。



「ネロさん! 土スキルで湯船造ってください!」



 ん? 土スキルで湯船? 壁を四面造って下を固めればできなくはない? やってみるか。水が湧いてる近くに土スキルで長方形の湯船を造る。後は水スキルを使って水場から水を湯船に移動させてみる。うん、漏れは無いようだね。強度も問題無い。水スキルで水を温めていくと、立派なお風呂の完成!



「流石、ネロさん! 無駄に器用貧乏!」



 う、煩い! 誉め言葉になってないぞ、人が気にしてる事言いやがって……。取り敢えず、先に女性陣に入ってもらうので湯船の周りに土スキルで囲いを作り、足の裏も汚れないようにすのこも作る。こう言うところが無駄に器用貧乏なのかも……。



「わ~い!」



 カオリンとレティさん以外にミーちゃんとセラも、もう一度お風呂に入るそうだ。キャッキャッウフフと楽しそう。



「なあ、ルーよ。俺達って今どこに居るんだ?」


「ジンさん、迷宮の中に決まってるっす……自信が無くなってきてるけど」


「良いのか? これ」


「ネロですから……」



 だから、何か文句でもあるんですか? 快適にすごせる事のどこに問題があるって言うんですか! もう、プンプンだよ。


 カオリンとレティさんが上がってから俺とペロとトシ、ルーさんとジンさんの順で入った。温かポカポカでグッスリ眠れそう。寝相の悪い奴が若干一名居るのが不安。なんて思ったらペロは宗方姉弟のテントで寝るそうだ。これで安心。


 翌朝、グッスリ眠れたので疲れもスッキリ。朝食の準備をしているとやつれ顔のトシが居た。



「カオリン博士だけでなくにゃんこ先生まで寝相が悪いにゃんて……」



 カオリンも寝相悪いんだ。ご愁傷さまです。当の二人は元気はつらつ状態ですよ。



「今日も頑張るにゃ!」


「おぉー!」


「み~」






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