260神猫 ミーちゃん、子猫が可愛くて仕方がありません。

 ピラフの上にグラタンが載っている。ドリア風だね。サイクスさんやるじゃないか。ちなみにドリアって料理はイタリアに無いそうです。今風だとライスグラタンって呼ばれてるけど、ライス 英語、グラタン フランス語どこの食べ物やねん!


 Bランチをペロから少しもらう。クリームシチューのスープスパだ。シチューなのにスープ? ああ、美味しいからもうどうでも良いや! サイクスさん相当腕を上げたようだ。



「どうだ?」


「とても美味しく頂きました。発想も素晴らしく味のまとまりも申し分ないです」


「そうかぁ……実は師匠が考えたものなんだ。俺はそのレシピをもらって作っただけなんだ。自信ありげに見せたが本当は唯の張りぼてよ」


「確かにこのレシピを考えたのはサイクスさんの師匠かもしれませんが、ここで実際に調理したのはサイクスさんです。俺はお世辞で美味しいなんて言いませんよ。ペロだって美味しくなかったら食べになんて来ません。自信を持って良いと思いますよ」


「そうにゃ。サイクスにゃんは旨いものを一杯作ってるにゃ!」


「そ、そうか。なんか自信が沸いてきたぜ。俺にできる事があったら何でも言ってくれ」



 待ってました、その言葉! では、お言葉に甘えてランチタイムが終わったら、俺と一緒に迷宮に持っていくご飯を作ってもらおう。ラッキーです。



「ピラフおにぎりとから揚げにゃ!」


「にゃ!」


「流石、にゃんこ先生! 私も~!」


「僕も!」



 君達は幼稚園児か! まあ、作るけどね。ピラフおにぎりとから揚げは鉄板の組み合わせだからね。でも、材料集めてこないと……君達、今から外に行って鶏肉取って来なさい!



「「「えぇ……またぁ」」」



 ミーちゃんと美猫親子は猫缶を食べ終わり、デザートの餡子タイムに突入している。餡子食べてるのミーちゃんだけなんだけどね。フェルさんもパルちゃんも餡子に見向きもしない。代わりに猫缶の美味しさの余韻を味わってるようだ。フェルさんパルちゃんにミネラルウォーターを出してやると仲良くチロチロ飲んでる。これで美猫親子は益々健康になるね。ミーちゃん、餡子満足した?



「み~」



 昼食後、ペロ達は外に狩りに、俺はジンさんを護衛に街に芝刈りに……じゃなくて、とある人に会いに行く。ミーちゃんはハンターギルドに残るそうだよ。子猫のパルちゃんが可愛くて仕方ないらしい。ミーちゃんがお姉ちゃんなんだけど体型は同じ位なんだよね。ミーちゃんフェルさんと一緒にパルちゃんをペロペロ。パルちゃんはミーちゃんにじゃれついてます。和むわぁー。




「なんだ、ネロじゃねぇか。銃、壊れでもしたか?」


「いえ、全く問題ありません」


「弾、作るか?」


「それはお願いしたいです」


「明日、また来な。五十ずつで良いか」


「はい、お願いしますって! そんな事どうでも良いんですよ!」


「なんだ急に大声出して、更年期か?」



 誰が更年期じゃ! おたくと違って、まだピチピチの十九歳だ! ゼルガドさん!



「それにしても、お客って居るんですか?」


「ぐっ……。い、居るに決まってんだろう。あれから、銃が二つも売れたぜ!」


「ほとんど採算度外視ですよね?」


「ぐぬぬ……。そ、そのうち大量に注文がくりゃあ、生産性も上がって利益は出る! はずだぜ……」



 事前に用意していたコップを二つ出し、ゼルガドさんとジンさんに渡す。



「なんだこりゃ?」


「俺にもか?」


「毒じゃありませんから、どうぞご安心を」



 二人は怪訝そうにコップを見てから匂いを確認すると、ニンマリ顔に変わり一気にコップを呷る。



「う、うめぇ! こりゃあ、フォルテの蒸留酒なんか目じゃねぇ旨さだぜ!」


「てめぇ! これをどうやって手に入れた! これはドワーフ族門外不出の酒のはず!」


「やっぱり、ドワーフ族はこのお酒の造り方を知ってるんですね」


「どう言う意味だ、ネロ。事と次第によっちゃあドワーフ族全てを敵に回すぜ」


「俺はこのお酒の造り方を知ってます。そして、これからこのお酒を量産するつもりです。すぐには無理ですけどね」


「ドワーフ族でさえ一部の限られた者しか知らねえ最重要機密を、おめぇが知ってるって言うのかよ? けっ、信じられるかよ」



 新たにもう二つコップを出して二人に渡す。ジンさんはニンマリと、ゼルガドさんは苦虫を噛み潰したような顔だよ。



「おいおい、なんだよこれは……」


「これは……まさか……御神酒……」



 御神酒? 違いますよ、フォルテの役所の下にあった百年物の蒸留酒です。あれから調べてみたら、なんの事は無いただ廃棄された蒸留酒だと判明した。


 歴代の代官が個人で楽しむために、毎年蒸留酒を造っている村から収奪して役所の下に隠して飲んでいたのだけれど、一人が飲む量なんて限られてる。なのに毎年強欲に取り上げていた為、飲まれない蒸留酒が貯まっていった。蒸留酒は寝かせると味が良くなる事を知らない代官たちは、年数の経った蒸留酒には見向きもせず新しい蒸留酒しか飲まない。古い樽を処分するのも面倒なのでそのまま放置。


 百三十年前の代官から脈々と受け継がれて来た悪癖のお陰と、温度に湿度などの好条件が相まって最高の蒸留酒が手に入ったと言う訳。歴代の代官様様と言ったら怒られるかな。


 でも、ドワーフ族が御神酒と言う程の物、お金に変えるにしろお土産として使うにしろウハウハじゃね?






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る