245神猫 ミーちゃん、人は石垣です。

 その後も、ミーちゃんと連携の練習をする。ミーちゃんが帯電した神雷を俺がもらって放つ、ほとんど疲れない。ミーちゃんが疲れてないか聞いてみてもケロッとした顔をしているね。


 そんな練習をしていると良い時間になったので王宮に向かう。今日は宮廷料理長に用事があるのでニーアさんを呼ばずに直接宮廷料理長に会いに行く。



「どうした。ブロッケン男爵殿。うちの宮廷料理人を引き抜きに来たか?」


「いやいや、恐れ多いです。でも誰かうちに来てくれるって人が居たら大歓迎ですけど?」


「居る訳ないだろう」


「ですよねー。冗談はさておき、先ずはこれを食べてください」


「パンなんぞ食わしてどうすぅ……うん?」



 宮廷料理長にイースト菌入りのパンを渡すと、パンを持った瞬間に顔つきが変わった。今までのパンより軽くそして柔らかいからね。宮廷料理長、パンをちぎった瞬間に驚きの顔を見せちぎったパンを味わいながら食べている。



「どうやって作った?」


「このパン、街の人にも受け入れられるでしょうか?」


「売ればたちまち売り切れる事間違いなしだな」


「このパンのレシピを無料で公表しようと思っています」


「馬鹿な! このパンの価値がどれ程のものかわかっているのか!」


「このパンを作った者が無料で公表したいと言ってます」


「一財産どころか巨万の冨が得られるんだぞ?」


「お金より、美味しいパンをいつでも食べれる方が良いそうです」


「……」



 宮廷料理長にレシピとイースト菌、それにイースト菌の作り方の書いた紙を渡す。



「作り方はさして普通のパンと変わらんな。このイースト菌と言うのが入ったお陰で、劇的に変わると言う事か……」


「それじゃあ、商業ギルドに行ってこのパンの作り方を、街のパン屋に無料で公表するように頼んで来ます」


「信じられん……本気か?」


本気マジです」



 商業ギルドでも信じられないといった顔をされたけど、必ず無料で公表するようにお願いした。他の街の商業ギルドにも情報を渡し同じように無料で公表してもらう事もお願いしておく。もし、お金を取ったりした場合ブロッケン男爵が潰しに行くと念を押しておくことも忘れない。


 お昼近くにフォルテの高級宿に向かい、レティさんを連れて昼食を食べながら集めた情報を聞いている。



「いまいち……うちの飯の方が旨いな。そう思わないか? 少年」


「当然です。調味料もあるし、食べ物には金に糸目はつけてませんからね」


「やはり、うちでぐ~たらしてる方が良いな」


「……働け」


「みぃ……」



 まあ、迷宮探索ではコキ使う予定ではあるんだけどね。



「それで?」


「酷いものだ。この街に王都を追い出された闇ギルドも集まって、身内同士での抗争も始まり闇ギルド同士で覇権争いが起きている。戦う為には金がいるから、今まで以上に上納金を要求する。払えなければ家や土地が奪われる。それだけならまだしも、若い娘などは身売りまでさせられている始末」


「最悪ですね。ですが、付け入る隙は多そうですね。場所の特定はできているのですか?」


「街の中の拠点なら調べはついているが、本拠地は私一人では無理だ。この街の義賊ギルドに手を借りるしかないだろうな」


「借りれば良いんじゃないですか?」


「良いか少年。王都の義賊ギルドなら私の顔も効くがこの街では無理だぞ。この街の義賊ギルドを動かすつもりなら、金が必要になる」


「金ですか……義賊なのに世知辛いですね。構いません。義賊ギルドを動かしてください。ついでに闇ギルド殲滅戦にも参加してもらうので、それを含めたうえで雇ってくださいね。ブロッケン男爵の名を出しても構いませんし、協力しないならお前らも潰すと言っても問題無いです」


「強気だな。承知した」



 この街の領主として舐められては困るからね。ビシッと言っておかないと。



「殲滅戦にはこの街のハンターも雇いますし、俺も参加しますので」


「本気か? 少年」


「義賊ギルドに闇ギルドの資金を奪われたくないですからね。俺が全て収納しますよ」



 ほとんどは、ミーちゃんバッグなんだけどね。



「み~」




 レティさんと分かれた後、ヴィルヘルム支店に行って売上の状況確認をする。あのお祭り以降、たまに冷えたエールを売っているらしい。お客さんが煩いらしいので仕方なくやっているとの事。ほどほどにね。他のお店の恨みは買いたくないから。


 商業ギルドにも顔を出すと、担当者さんがやって来て人材を集めましたがどうします? と言ってきた。早っ! 人は石垣、喉から手が出る程欲しかったので、大変ありがたい事ですよ。



「み~」



 集めてくれたのは十人、全員二十代前後の若い方達ばかりだ。全員の資料を見せてもらったけど問題のありそうな人は居ない。中には自らうちで働きたいと立候補された方もいるらしい。その中から経歴を見て二名をベルーナの神猫商会で働いてもらい、残り八名はフォルテの役所で働いてもらう事にした。



「ベルーナとフォルテですか……」



 これはルーカスさんと最初から決めていた事。ヴィルヘルムの商業ギルドで集めてくれた人材はベルーナとフォルテで、ベルーナの商業ギルドで集めてくれた人材はヴィルヘルムとニクセに派遣する。そうする事で各商業ギルドと集めてもらった人材との距離を置ける事になる。



「だいぶ、時間がかかってしまいますが?」


「取り敢えず、ニクセまで馬車を使って来てもらってください。馬車を二台借りて頂き、ハンターの護衛も付けてください。宿代も含め掛かる費用はこちらで全て負担しますので」


「承りました。さっそく、手配致します」



 これで、フォルテの人不足が解消される。ベルーナに店を作る時の人材も確保した。ベルーナの商業ギルドの方も早めに人材を集めてくれると助かるんだけどね。



「み~」






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