244神猫 ミーちゃん、電池にクラスチェンジしました。

 うちに戻れば、遠足前の園児の如くはしゃいだメンバーが居る。嬉しいのはわかるけど家の中でテント張るのやめなさい。ミーちゃんも入らない! ルーくんとラルくんも中に居たのね……。



「みぃ……」


「がう」


「きゅ~」



 ペロとセラ、宗方姉弟はカティアさん達に明日のお弁当の中身をリクエストし、ルーさんとジンさん、ジークさんはお酒を飲んでいる。暢気だねぇ。


 明日もやる事は一杯、さっさとお風呂に入って疲れを癒そう。ミーちゃん、お風呂に行くよ~。ルーくんとラルくんも入るの? じゃあ、行こうか!



 ペロ達は早朝にカティアさんからお弁当を渡され、クイントへ旅立って行った。



「急に静かになりましたね……」



 ユーリさんがカイを抱っこしながら、ポツリと呟く。居たら居たで煩いけど、居なくなると居なくなるとで寂しいものだね。


 そんなユーリさんもハンターギルドを辞める事が受理されたそうです。引き継ぎなどがあるからすぐには無理のようだけど、ゼストギルド長が許可してくれて良かったよ。後で挨拶に行こう。


 まだ、出掛けるには時間が早いので、前からしてみようと思っていた実験をしようと思う。先日の闇ギルドの手の者との戦いの時に、魂の器が大きくなりスキルが覚えられるようになっていた。そこで新たなるスキル習得を目指す。


 最近読んだ本の中に勇者が雷を使ってモンスターを攻撃する場面が書かれている物語があった。作者の単なるヨタ話とも思わない訳ではないけど、雷スキル、あると思います!


 そこで、実験。金属の棒を幾つか鍛冶屋に頼んで作ってもらった。その棒を手で持つ所を紙で巻きそれ以外の金属部分を毛糸の布でこする、何度もこする! そして、度胸一発、金属の棒に指をそーっと近づけると……バチッ! い、痛い……静電気です。これを何度も繰り返し、のたうち回る。傍で見ているミーちゃんとカイ、ルーくん、ラルくん呆れ顔。それでも続ける、アウッチ!


 何度も膝をつき諦めかけた事か。しかーし! フッフッフッ……出ました雷スキル。すぐに習得。


 雷=イコール電力、地球の人々が唯一制御できるエネルギー。理論は概ね理解している。電荷の移動によって起こる現象、さっきの静電気が良い例だね。これなら俺にも扱えるはずなのだ。俺は無限エネルギーを手に入れたのだ! ワーハッハッハッ!


 それではいってみよう。ミーちゃん達から離れて、標的にさっきの金属の棒を遠くの場所に刺して立てる。最初のイメージはとある宇宙ものの悪役暗黒卿。手を前にかざして目標に電気が流れるイメージだよ。バリバリっと音と共に五本の指から放電して目標に流れて行く。狙った金属の棒に当たりバチッと音がして金属の棒が衝撃で宙に舞う。おぉー! 概ね予想通り。何故、概ねかと言うと、小指から放電した一本が狙った棒ではなく隣の棒に当たったからだ。


 何度か繰り返しやってみるけど、上手くいかない。そのうちに手が痺れてきたので、このスキルは多用できないようだ。少し休憩しようと思ってミーちゃん達の所に戻ると、何故かミーちゃんの毛が逆立っている。どうしたのかと思い触ろうとしたら……バチッ! い、痛いです。も、もしかして、ミーちゃんも覚えたの?



「み~」



 ミーちゃんを鑑定してみると、神雷スキルと出ている。神雷とは何ぞや? だとしても、あんなに苦労して手に入れたスキルを、見てただけのミーちゃんが覚えるなんて……。ミーちゃん、金属の棒に向かって猫パンチの要領で雷を飛ばして遊んでいる。意外と強力、それも連続で。今までの俺の苦労が……でも、そうやって飛ばす事もできるのね。勉強になったよ。流石、ミーちゃん!



「み~!」



 手の痺れが収まったので、練習再開。先ずは、ミーちゃんがやっていた雷を単発で放つ方法をやってみる。イメージ的にはどこぞの野菜の王子様が良くやる半身に構え片手を突き出し掌から打ち出すって感じかな。ちょっと恥ずかしい。けどやる!


 電気を飛ばしてやる感覚で上手くいった。電気を塊として大きくイメージすると破壊力がますけど、物凄く疲れる……。指一本分位の大きさだと連射可能で的にした木が徐々にえぐれていく。拳一つ分だと十セン位の木が折れた。


 次はさっきの続き、五本の指全てから放電させるから制御できないんじゃない? って、ふと気づく……だってやりたかったんだもん! と言う事で人差し指からだけ放電させてみた。電気鞭です。気を抜くと勝手に動き回って危ないけど、狙った木に当てると数秒後全体的に放電を始めて爆発した……。おそらく地面に逃げきれ無かった電気が溜まり、中の水分が帰化ないし急激に沸騰し膨張し過ぎて爆発したと考察、おそらく生物全般に有効と考えられる。


 但し、気を抜くと途端にフレンドリーファイアーになるので注意が必要。電気なのでどうしても金属や接地抵抗の低い方へ向かう傾向がある。意識を集中していれば問題ないけど、疲れる……。必殺の一撃を手に入れたってところかな。


 ミーちゃんは神雷スキルと相性が良いのか自由自在に操っている。神雷スキルの凄い所がどうやら、ミーちゃんのお手ての延長になるらしく攻撃力も自由自在。ミーちゃんが神雷スキルを伸ばして俺に触れても痛くもなんともない。さっきは痛い思いをしたけど、今度は逆にくすぐったいくらいだよ。それから、俺の雷スキルと神雷スキルの相性も良いようで、ミーちゃんが出す神雷を俺の雷として使用できる事もわかった。


 ミーちゃんは天然の無限電池にクラスチェンジした!



「み~!」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る