233神猫 ミーちゃん、ブロッケン山の人気者です。

 牙王さんの洞窟に飛び、烈王さんにもらった転移門を設置する。設置すると言っても紙を燃やすだけなんだけどね。魔法陣のような物が空中に浮いている。これに入ると烈王さんの所に飛ぶようだ。今はやらないよ。あっちに行くとすぐには帰れなくなるから……。



「よく来たな、ミー様、ネロ殿。歓迎するぜ」


「ようこそおいでくださいました。ミー様、ネロ殿」


「今日はいろいろとご相談があって来ました」


「み~」


「何でも言ってくれ」


「ミー様とネロ殿は我々の恩人。我々にできる事なら何でも言ってください」


「実は貴族になってしまいまして……」



 牙王さんとロデムさんにかくかくしかじかと事情を説明した。話をしている途中にも関わらず、ちっこい奴らがわらわらと寄ってくる。ミーちゃんが見えなくなっちゃったよ。


 牙王さんが追い払おうとしたけど、ミーちゃんが喜んでいるので俺も話しながらモフモフを楽しむ。後でお魚焼いてあげるからね~。今までの成果が実り、完全に餌付けに成功したって感じ?



「ミー様とネロ殿なら異存は無いぞ」


「変な人族が来るなら反対したかもしれませんが、ミー様とネロ殿であればこれ以上の信用はないですから」



 そこで、ルミエール王国とヒルデンブルグ大公国で作った条約の草案を聞かせる。俺が見た限りでも問題は無いと思える内容だけど、牙王さん達の捉え方が違うかもしれないから。



「人族のハンターとやらがこの山に入る事はあるのか?」


「商隊の護衛以外のハンターの出入りは禁止するつもりです。もし、何かしら問題が起きて人族の手を借りたい時は俺に言ってください。俺の方で人を集めます」


「人族と争う事が無くなるのは、喜ばしい事です」



 薬草などの採取に関しては、ブロッケン山の奥に入らなければ認める事にするつもりでいる。ブロッケン山は薬草の宝庫なので、独占すればいろいろな所から不満が出るだろう。但し、意図的に奥に入った場合は自己責任となるので注意が必要。そう言った者の処遇は牙王さん達の裁量にお任せする。



「もし、ゴブリンキングがスパイダークイーンの領域を越えて来た場合はどうするんだ?」


「我々人族側と共闘して戦う事になります。騎竜隊の駐屯地も傍にありますので、協力してもらえるでしょう」


「それでは私達にスパイダークイーンから援軍の要請があった場合はどうなりますか?」


「残念ながら、我々人族とスパイダークイーンの間には明確な同盟は結ばれていません。ですが、牙王さんとスパイダークイーンの間は協力関係にあるようなので牙王さん達が援軍に向かうのは自由です。もちろん、スパイダークイーンから我々人族に援軍の要請があれば対応したいとは思っています」


「まあ、難しいだろうな」


「虫系のモンスターは人族と意思の疎通が難しいので、余程の事がないと相いれないでしょうから」



 でも、その余程の事が今起きてるような気がするんですけど……。



「逆に俺達が人族を助けると言う事はあるのか?」


「そう言った状況に陥った場合は助けてもらえれば助かります。まあ、それこそ余程の事がない限り無いと思いますけど」



 最後にルミエール王国とヒルデンブルグ大公国から牙王さん達に支払われるお金は、俺の方で管理するので欲しい物は言ってくださいと言っておく。



「酒……」


「冬に向けての毛布などが欲しいですね」



 ま、まあ、適当に見繕って買ってこよう。お魚なんかも定期的に持ってくれば喜ぶと思う。


 話は変わってちみっ子達をモフモフしながら街道の整備の事を話す。



「構わないぞ」


「お好きな所にお作りください」


「助かります」


「み~」


「問題は作業してくれる人なんですよねぇ」


「それならば、妖精族に頼んでみたら如何ですか?」


「そうだな、あいつらならそう言うのは得意だろうしな」



 なるほど、その手がありましたか。人手不足解消ができるうえ、妖精族の地位向上にもなる。ブロッケン山の街道を妖精の街道なんて呼ぶのも良いかも。取り敢えずは近隣の村に行って話を聞いてからにしよう。



 一通りの話も終わったので草案に了解の署名をもらおうとして、はたと気付き考える。どうやって署名をもらおう? 肉球の押印で良いかな?



「み~?」


「仕方ねぇな」



 牙王さん、そう言って人の姿に変わりました。野性味あふれる男前です。でも、着てる服ってどうしたんだろう? 毛皮が変化したのかな?



「変身できるんですね」


「まあ、俺くらいになると当然だな。でもな、動き難いんだこの姿」



 そりゃそうでしょう。普段四足歩行してる人が二足歩行に変われば、本来なら歩き難いでは済まないと思うよ。


 そんな牙王さんペンで書類にサインしてくれているけど読めない……モンスター語なんだろうか? まあ、サインもらったから良しとしよう。


 お魚を焼きながらモフっ子達と戯れる。白狼はモフモフ、黒豹は艶々、白狐に銀狐のモフっ子も途中から加わった。ここは天国ですか? 白狐と銀狐は新たに牙王さんの元に加わったそうです。ゴブリンキングに追われて逃れて来たところを牙王さんが保護し、そのままブロッケン山に住む事になったんだって。


 ゴブリンキングに追われた種族は多いらしく、多くは西の魔王領に逃げ込んだらしい。少数がスパイダークイーンの所か、このブロッケン山に来たと言う。


 モフモフ万歳。でも、ゴブリン嫌い。



「み~」





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