234神猫 ミーちゃん、妖精族に依頼を出す。
次の日、スミレを連れて牙王さんの洞窟に飛びフォルテ側の最寄りの村に向かった。村人に村長さんの元に案内してもらい、国の指示で街道整備の人集めで来たとだけ言って話を聞いてみる。
予想通り、村長さんは難色を示したよ。これから収穫で忙しくなるうえ、護衛がつくとは言え好き好んでブロッケン山の奥に入ろうとする村人は居ないだろうと言われた。領主の権限でやらせる事も可能なのだろうけど、無用な軋轢が生じるような事はしたくない。
ニクセ側の村にも行って話を聞いたけど同じ回答が返ってきた。それだけブロッケン山と言う所が恐れられていると言う事だろう。魔王が住んでいた場所と言う認識が強いんだろうね。
これはパトさんに相談かな?
「ミーちゃん、ネロさん、良く来たワン」
今日もパトさんのお耳はふさふさ。触りたい誘惑を何とか押し殺し、笑顔で挨拶。
「こんにちは、パトさん」
「み~」
ミーちゃんは俺の苦悩なんて関係ないとばかりに、パトさんのお耳にスリスリ、ハムハムしている。羨ましい……。
パトさんに貴族になった事を話し、ブロッケン山も領地の中に入っている事を伝える。
「貴族かワン? それは、おめでとうなのかだワン?」
「うーん。どうなんでしょう?」
「み~?」
みんなで首を傾げ、悩んでしまった。
「そうだワン! 商隊の護衛の件なんだけどワン。やりたいと言う者が多かったワン」
「それは嬉しいですね。少しずつでも街に馴染んでいければ良いですね」
「そうなんだワン。その始めの一歩だワン」
これで商隊の護衛の目処がつきそうだ。ベルーナの屋敷の横に早いところ妖精族の人達が住める場所を作らないといけないね。
「それで、今日来たのはどうしたんだワン?」
「それはですね……」
パトさんに魚を焼きながら街道整備の事を話す。何故か、周りにはよだれを垂らしたコボルト族のお子ちゃま達が焼いている魚を凝視してる。パトさんとの話があるので、コボルト族の女性に魚を渡して焼いてもらう事にする。
「なるほどだワン。それなら協力できるワン。みんなでやれば、すぐに終わるワン」
「お願いして良いですか?」
「任せるワン」
「み~」
と言う事なので、パトさんのお言葉に甘える事にする。整備内容を伝えて必要な物を聞いておく。パトさんが言うには、大した物は要らないらしい。頼まれたのは斧や鉈、切った木を運ぶ台車ぐらい。広げた道自体の整備は、妖精族には土スキル持ちが多いそうなので、既存の道も含めて整備してくれるそうだ。俺も土スキル持ちだから、どんな風にやるのか勉強させてもらいたい。
ある程度パトさんと話を詰めてからお魚をお土産に置いていきベルーナに戻る。街に出て斧や鉈など必要になりそうな物を買いに回る。探してわかったけど、剣先スコップが売ってない。小さなシャベルはあるのだけど、大きいのは無い。剣先スコップ最強伝説はこの世界にはないらしいね。作ってみようか? そうなると専属の鍛冶職人が欲しくなる。やっぱりあの人だろうな。迷宮に行ったついでに、何が何でも連れてこよう。
翌日、パトさんの所に行き頼まれてた道具を置いてくる。切った木を運ぶ台車は見つからなかったので、切ったら脇に置いておいてもらい後でミーちゃんと回収する事にした。良質の木材なので使い道はいくらでもあるだろう。
パトさんはさっそく他の妖精族に声を掛けてくれたようで、明日から作業に入ってくれるそうだ。報酬の件も話したけど、お金は少しで良いので現物支給をお願いされた。布や糸、食器などの生活用品が欲しいと言う声が多いらしい。人族の作る物は便利で使いやすいので人気があるようだ。資金は潤沢にあるので、欲しい物をリストにして下さいと言っておいた。
ベルーナの商業ギルドにお祭りの精算が済んだので来てくださいと使いが来ていたので、ミーちゃんと行く事にする。
ギルドではいつもの商談用の席ではなく個室に案内され、お茶とお菓子が出てくる。そしてすぐに、いつもの担当者さんとギルド長がやって来た。
「これはこれはブロッケン男爵様。ようこそおいで下さいました」
「み~」
流石、商業ギルド情報が早い。つい先日に俺の男爵について発布があったばかりだと言うのにね。
「それにしても男爵様になられるとは、神猫商会の躍進ぶり我が商業ギルドもあやかりたいものですな」
そんな、おべんちゃらを言いながら、数枚の紙とお金の入った袋を出してきた。紙に書かれた内容を確認してサインし返す。
「今回の催し物は素晴らしいものでした。陛下からも良き催し物とお誉めの言葉まで頂いた程です。ブロッケン男爵様には何とお礼を言って良いか。我々商業ギルドにできる事なら何でも仰って下さい」
丁度、反乱軍との戦いに勝利したばかりで戦勝祝いにもなったし、反乱と言う事が起こり民衆が不安になっていた時に、お祭りのような催し物がおこなわれた事により民衆の不安も少なからず晴れた事だろう。王様から見ればこれ以上ない程に利用できる催し物だったに違いない。王妃様も同じような事を言っていたからね。
そして、待ってましたよ! この言葉。それではお言葉に甘えさせて頂きましょうか。これ以上ないくらいの笑顔をギルド長に向ける。もちろん、代表であるミーちゃんも良い笑顔ですよ。
「それでは、いくつかお願いがあるのですが……」
「み~」
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