228神猫 ミーちゃん、お見合いイベントをおこなう。

 三時のおやつにみんなに水飴を配る。ちゃんと俺が練った物をね。ペロにはそのままの水飴を渡して練り方を教えると、一心不乱にコネてます。気持ちはわかるよ。



「おぉー、銀色になったにゃ! ペロは銀を錬成したにゃ。大金持ちにゃ!」



 銀色ねぇ、まあ見えなくはない。



「甘々にゃ~。とろけるにゃ~。幸せにゃ~」


「にゃ」


「がう」


「きゅ~」


「み~」



 ご満足頂けて幸いですよ。他のメンバーと言えば、ヤン君とカヤちゃんはまだ食べずに練ってます。ジンさんは甘い物が苦手なのでパス。他は美味しそうに食べてるね。カイもミーちゃんのお皿の水飴を一緒に舐めてる。ミーちゃんも餡子のような独占欲は起きないようだ。



 二日目のお祭りも何とかこなしながら、スラムの子達に食事を配り病気のお子ちゃまが居ると聞けばレティさんにミネラルウォーターを渡して飲ませに行ってもらう。少しでも元気になってくれれば良いけど……。


 そして最終日のお祭りの日。まったく気付いていなかったけど、日中に王様がベルーナに帰還したらしい。そこで始まりの挨拶で再度反乱軍を倒した勝利宣言がおこなわれた。街の人は余り興味がないようだけど。


 そんな中、商業ギルドの神猫商会の担当者さんがエール売り場が落ち着いて来た時を見計らい俺の所に来た。なんだろう?



「お客様より、猫を譲って欲しいとの要望が殺到しておりまして……」



 どうやら、モフモフスペースの猫様にハートを射ぬかれた人達が猫様を飼いたいと言う事らしいです。普段見ている野良猫さん達は触りたくても触らしてくれない。下手すればシャーって威嚇されるからね。今回連れて来てる猫様はそんな事がないから飼い猫にしたいと言う訳だ。


 取り敢えず、猫様の話を聞きに行こう。ペロに通訳をお願いして猫様のご意向を伺うと、皆様了承して下さいました。但し、条件があって飼い主は自分達で決めるとの事。マジですか……。


 急遽、メインステージで猫様とのお見合いイベントが始まった。司会は猫様との話ができるペロ。大丈夫なのだろうか?



「みんにゃ! 準備は良いかにゃ!」


「「「おぉー!」」」


「にゃんこが欲しいかにゃ?」


「「「おぉー!」」」


「ちゃんと面倒みるにゃよ?」


「「「おぉー!」」」


「それにゃあ、ネコネコお見合いの始まりにゃ!」



 わーっと会場が盛り上がる。



「最初はこの猫様にゃ!」



 ステージ上に悠然と毛の長いペルシャ猫みたいなモフモフ様がご登場。



「さあ、この猫様に果敢に挑戦する者達よ。出て来いにゃ!」



 ステージの上に五人の猛者が登ってくる。お子ちゃま一人に、若い女性三人、男性一人だ。各自、アピールタイムが始まり猫様に必死にアピールしている。一番最後にお子ちゃまのアピールタイムになり



「大好き!」



 の一言に、会場がどっと沸く。



「それでは、お猫様。判定をどうぞにゃ!」



 猫様、一直線にお子ちゃまの元に駆け寄ってスリスリし始める。まあ、これは仕方がない。他の参加者も納得している様子だからね。何度挑戦しても良い事にしてるのでチャンスはまだあるかもしれないから。


 この後も残り九匹の猫様のお見合いが続けられ、飼い主が決まっていく。最終的に猫様のお眼鏡に適った飼い主は、お子ちゃま三人、女性五人、男性二人となった。後で聞いた話だけど男女のご老人が猫様の飼い主になったのだけれど、二人は夫婦だそうで二匹の猫様を飼う事になる。のちにペロが猫区長から聞いてきた話によると、この二匹の猫様も夫婦になって、ご近所様でもその猫様のお子ちゃま達が飼われる事になったらしい。


 こうして、大盛況のうちにお祭りは幕を閉じた。本当に忙しかったけど、楽しかったね。



「み~」



 お祭りが終わった次の日は、みんなお休みにした。久しぶりに何もしないで惰眠を貪る。


 翌日はクリスさん達を連れてヴィルヘルムに行き、俺とミーちゃんは商業ギルドに向かう。いつもの担当者さんが俺達を見つけて、別室に引っ張り込まれた。



「待ってましたよ。どこに行ってらっしゃったんですか!」



 いや、だからベルーナでもお祭りをやるって言ってたよね?



「神猫商会様以外には既に配当金をお配りしています」



 一枚の紙とお金の入った袋が渡される。紙に書かれているのは今回の内訳と税金等の領収書。思った以上のお金が動いたのが見てとれる。十分どころか結構な利益がでてる。



「税金もさることながら、商業ギルドの利益も上がり、更には商業ギルドの株まで上がる。万、万歳ですな。これも神猫商会様が持って来てくれた企画のお陰。感謝しております」


「みんなが楽しみ、人が動く、そうすれば物も動き、お金も動く。商売の基本です」


「全くもってその通り。しかし、それを独占するのではなく、皆と共有するという神猫商会様の考え、頭が下がります。ギルド長も神猫商会様からのご依頼は優先し融通して差し上げるよう承っております」


「ありがとうございます。何かあればお願いします」



 この後もいろいろ話をされ、なかなか帰してもらえなかった。次はいつやりますか? とか他に企画はありませんかとかね……。


 支店に戻ってクラウディアさんが付けてる帳簿を確認する。ウハウハだね。これはみんなにお礼をしないといけない。なんにしようかな? なんて考えながらうちに戻ると、ルーカスさんが慌てて俺の所にやて来た。



「王宮からの正式な登城命令が届きました」



 王妃様ではなく、王様からのようだ。明日の午後に王宮に来るようにと書いてある。もちろん正装でだ。なんだろうね?



「み~?」






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