227神猫 ミーちゃん、水飴に興味があります。
ベルーナの二日目の祭りの朝、せっせと料理作りをしています。祭りに出す料理ではなく、スラムの子達に食べさせる料理です。
あの光景を見てしまうと、何かしなければならないと思ってしまった。そこで考えたのが炊き出し。たまにスラムの子達を集めてご飯を食べさせようと思う。病気の子にはミーちゃんのミネラルウォーターを飲ませる事もできる。商業ギルドに頼んでいらなくなった服などを集めてもらって配るのも良いかもしれない。俺ができる事なんて焼け石に水かもしれないけど、何もしないよりはマシだと思う。
「み~」
ミーちゃんも俺のやる事に大いに賛同してくれてます。
そんな料理を作ってる横で宗方姉弟が何かをしている。
「トシくん。それでは始めようか」
「はい、カオリン博士」
何やってんだ、こいつら? 寸劇が始まり、しばらくすると
「おお! 見たまえトシくん。私の仮説通りの結果ではないか!」
「カオリン博士! 実験は大成功です! この成功はニャーベル賞ものですよ!」
二人は隣で大きな鍋を使って何かをしている。更に寸劇と同時進行で何かをし始めた。
「こ、これは! 何と言う神々しい色合い!」
「カオリン博士! これで多くの甘味党の者が救われますよ!」
「「はーはっはっはっ!」」
確かに隣の鍋から甘い良い匂いがしている。どうやら、水飴のようだ。確か、でんぷんを酵素を使って糖化するってやつだね。化学で習った。やるな、宗方姉弟。
「フッフッフッ! この水飴を作る工程は、お酒を造る基本! 知ってて当然なのだ~!」
「麦があるので、もち米と麦芽で作ってみました。片栗粉もあるので、今度はそっちでも作ってみます」
「それだけじゃないぞ、ネロ君! ジャジャーン!」
カオリン博士がビンを高々とあげてみせる。
「い~すとき~ん!」
「これで美味しいパンが食べられますね。カオリン博士!」
「柔らかいパンが食べたいのだ~」
「あんパンも作れますよ」
「み~!」
ミーちゃんがあんの部分に反応してます……。ペロが良く食べているドライフルーツから作ったそうだ。さっそく、カティアさんとパン作りを始めている。水飴をちょっとだけ舐めてみる。砂糖程の甘さは無いけど優しい甘さだね。餡子に使えば良い感じになりそう。ミーちゃんのお口に合えば良いけどね。
箸の先に水飴を付けてぐるぐると回して練っていくと水飴が白くなっていき、それを舐めてみる。小さい頃にばあちゃんちで食べた味だ。ぐるぐると回して練る事によって空気が入り味が滑らか、まろやか、ふわふわになるとの事だけど真偽は定かではない。でも色が変わるので楽しくてやってしまう。ミーちゃん食べる?
「み~」
え!? 食べるの?
「み~」
俺がぐるぐると回して練った水飴をミーちゃんの口元に持って行くとペロペロ舐め始める。この頃ミーちゃん食べ物に果敢に挑戦している。良い事だと思う。神様仕様の猫缶はそれは美味しいのだろうけど、他にも美味しい物は一杯あるんだよ。そんな美味しい物を食べないなんてもったいないからね。
宗方姉弟とカティアさんはパンの生地を作り終わり、寝かせる段階に入っていた。ここで膨らめば成功なのである。一次発酵とか二次発酵があるらしいけど、俺は知らない。牛乳とバターまで使った本格的なパンと言う事なので期待して待っていよう。
その間に余った麦芽を使って水飴を作ってもらう。水飴って昔は薬として使われた位の栄養補助食品。作るのも簡単そうなので大量生産に向いていそう。やってみる価値はありそうだ。これも当面は妖精族の所で作ってもらい、特産品にすれば良いよね。
お昼前に出来上がったパンの試食会。見た目はいつも食べてるパンと変わりが無いようにみえる。でも、持った瞬間違いがわかった。軽いのだ、そして柔らかい。高価なバターまで使っているので香りも良く、何と言っても食べた時の柔らかい歯ごたえが心地よい。
今まで食べていたパンは決して不味い訳ではない。中身がギッシリと詰まったパンと言うのが一番合っているかもしれない。食べ応えはある。
「「柔らかいです~♪」」
「こんなに柔らかいパンは始めて食べました」
「やっぱりパンはこうじゃないとねぇ」
「ねぇ~」
ララさんヤナさん至福の表情、カティアさんは驚きの表情、宗方姉弟は日本で食べていたパンに近づいた事で満足のようだ。
カティアさん達にこのパンでサンドイッチを作ってもらい。お昼にみんなで食べてもらう。
「これは凄いですね……噛まなくても自然と切れていく感じがします」
「なんだこれ? 食った気がしねぇぜ」
「美味しいわ~。世の中にこんな美味しいパンがあったなんて」
「……モグモグ」
「旨いにゃ……」
「旨すぎていくらでも食えるぜ」
ユーリさんはちょっと大げさ過ぎるけど、ローザリンデさん達女性陣には好評のようです。男性陣にも概ね好評のようだけどジンさんは物足りなそう。そんな中、レティさんは黙々と食べペロに至っては感動して泣いている……。
「そんなに美味しいか?」
「美味しいにゃ! ママにゃんにも食べさせてあげたいにゃ……」
「うーん。日持ちしないから無理だと思うよ」
「そんにゃ~」
どこぞのお山の少女みたいに、服の中にパンを隠し入れたのが見えたので教えておく。ミーちゃんバッグなら問題無く保存できるけど、ペロの猫袋は無理そう。それならばと、一杯食べてこの感動を伝えるにゃって焼け食いが始まる。それでこそ、腹ペコ魔人だと思う。
「み~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます