225神猫 ミーちゃん、じゃんけんに喜ぶ。

 エール売り場は長蛇の列、頑張ってはいるけど全然減らない。カヤちゃんのジュースの方も列ができているけど、ヤン君が手伝ってくれてるので何とかなりそうだ。


 エールを渡しながら辺りを伺う。流石に烈王さんは来ていないようだ。代わりにジンさん達が列に並んでいるのが見える。ジークさんも一緒のようだ。



「のう、ネロ君や。儂は仕事に戻らねばならん。ちと融通してくれんか?」



 声をかけてきたのはゼストギルド長です。仕事に戻るのにエールなんて飲んで大丈夫なのだろうか。ゼストギルド長に言われれば断れないから、代わりに交換条件を出しておいた。


 神猫商会のブースでは枝豆は売れているようだけど、誰もミーちゃんの前に置いてくれない。なのでミーちゃん、プンスカしてテーブルをテシテシ叩いてる。そんな姿も可愛いのでお客さんにモフモフされ、そうじゃないのよ~って顔してます。そんな所にゼストギルド長が枝豆を買い、ミーちゃんの前に枝豆を置いてお口をアーンと開けて待っている。


 ミーちゃん満面の笑顔で、待ってましたとばかり枝豆を可愛い肉球で押し付ける。サヤの中の枝豆がポーンと飛んでゼストギルド長のお口の中に入っていく。ゼストギルドはニコニコと笑いながらミーちゃんの頭をなでなで、ミーちゃんはやったよ~♪って感じでやり切った顔をしている。


 これを見ていたお客さんは自分もやって欲しくて、ミーちゃんの前に枝豆を置いてお口をアーン開けた態勢で待っている。ミーちゃん出番ですよ!



「み~!」



 ゼストギルド長のお陰で、これで波に乗るだろう。ミーちゃん、とっても良い笑顔です。


 神猫商会のブースでは、ここから見る限りやはりから揚げがよく売れているようにみえる。その後にポテトフライと言ったところかな。ミーちゃんのお陰で枝豆も出始めるだろう。なかなか好調のようだね。


 エールの方もなんとか落ち着き始めてる。エール売り場の横でワインを売る場所も今回作ったので多少は分散してくれればと思っているんだけど、ワインはエールに比べると高いからエール程、人は並んでいない。


 カヤちゃんの方も列は捌けたので、後は俺が引き継ぎヤン君と一緒にお祭りを楽しんでもらう。ついでに、ここから見えない場所でおこなわれている神猫商会の輪投げのブースの状況を見てきてもらおう。こちらのブースで引換券が使われ始めているようなので、問題は無いと思ってる。それから神猫商会のイベントの為にルーさん達にそろそろこちらに来てもらう必要があるので、宗方姉弟と代わってもらうようにも伝言をお願いした。しばらくして、ルーさんとヤナさんがこちらにやってくる。



「どうですか? 向こうは」


「大盛況だな。大人共がやらせろってうるせぇから張り倒しておいたぜ!」


「ほどほどにお願いしますね……」



 みんなと話し合った結果、輪投げはお子ちゃま限定にしてある。採算度外視だから、大人の財力でやられるとお子ちゃま達が楽しめなくなる。抜け道はあるけどその辺は街の人のモラルに任せるしかない。それから、まだ特賞は出ていないようです。このお祭りの三日間で果たして出るか?


 ルーさん達の準備ができたので神猫商会のブースの前に臼と杵を用意し、ミーちゃんバッグから蒸かしたもち米を出す。ルーさんとヤナさんのコンビで餅をつく。神猫商会イベント、餅つき大会です!


 ぺったんぺったんと餅をついていくと、ギャラリーが増えていく。何をしているかわからない人がほとんどだと思う。もともと、餅を食べる風習はヒルデンブルグの一部に限られていたので知らないのも当然。だけど、だんだん餅らしくなっていくと気付き始める人も出て来る。気付いてる人の大半はハンターさんだと思う。需要が一番多いからね。


 つきたてのお餅を、小さく切っていきあんころ餅、きな粉餅、みたらしのタレをかけたもの、野菜スープとポタージュ、味噌汁に入れたなんちゃって雑煮を作って無料で配る。お子ちゃま限定でね。実はこの中で一番高いのはきな粉餅になる。砂糖を使わないといけないのでどうしても割高になる。まあ、お祭りだから気にしない。実を捨てて名を得るだよ。


 餅つきの方も飛び入り参加で餅をついてもらって、お子ちゃまの時はルーさんが補助してあげてる。自分でついた餅を食べるお子ちゃまの笑顔は眩しいね。


 そんな中、レティさんが身なりの貧しいお子ちゃま達をブースの後ろに連れてきた。スラムの子達だろう。みんな痩せている。レティさん無料で配っているお餅をスラムの子達に食べさせている。ベルーナの闇の部分を垣間見た気がする。飲み物を出してあげ、帰る時にから揚げとポテトフライを持たせてあげた。自分にできる事なんてこんな事くらいだよ……自分の力の無さを痛感してしまう……。



「みぃ……」



 ミーちゃんも同じ気持ちで帰って行くスラムの子達の後ろ姿を見つめていたようだね。



 それはさておき、餅つき大会も佳境に入って来たので、大人達にも餅を配るのを解禁する。おぉーと言う声と共に押し寄せてくるので、列を作ってもらいじゃんけんで勝った人に好きな物を選んでもらい配っていく。


 ちなみにこの世界のじゃんけん、勇者が広めたようでグー、パーは同じ、チョキは勇者が地方の人だったのか親指と人差し指のチョキでした。掛け声はじゃんけんだけど、手を出す時の掛け声はグーが盾チョキが剣パーが鎧と言ってやるようです。とても言い難い……。


 でも、ミーちゃんは何故か大喜び。じゃんけん好きなの?



「み~♪」







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