211神猫 ミーちゃん、食べられるってなぁ~にぃ?って疑問に思う。

 帰りは大公様の所に船に乗せてもらったお礼を言ってから、神猫商会ヒルデンブルグ支店に戻ってきた。そうすると、知らない男女二人が居て店を手伝っている。誰?



「み~?」



 新しいドラゴンさんでした。って、早くねぇー! さっきの話だよね。もう来たの……。



「アルベルトだ。アルで良い」


「クリスティーナです。クリスと呼んでください」



 店の後ろの商談用の部屋に移って話しをしてます。二人共水スキル持ち、わざわざ水スキル持ちを選んで寄こしてくれたそうです。クラウディアさんがドラゴンの水スキル持ちの間で、水の温度変化の方法を広めてくれたそうで、この二人は既に自由に変化させられる事ができるそうだ。


 ちなみにアルさんは大男でイケメンと言うよりダンディ。クリスさんは黒髪ロングの清楚系美女。クリスさんラルくんのお姉さんでこれまた珍しい闇スキル持ちらしいです。



「父と弟がいつもお世話になっています」


「いえ、こちらこそお世話になりっぱなしで……」


「み~」


「父は話し相手ができて、最近はとても機嫌が良いんですよ。また、遊びに行ってやってくださいね」


「み~」



 クリスさん、烈王さんの娘なんだよね。二階の部屋だと不味いよね……。



「父からはみなと同じ待遇でと伝えてくれと言われてます。烈王の娘ではありますが、一族の中ではまだまだ若輩物、要らぬお心遣いは無用です」



 アルさんがテーブルにドンっと大きな袋を二つ置く。



「父から預かって参りました。お酒の代金と我々の教育費兼生活費です。お納めください」



 中身を見るのが怖いです。確実に一袋でさえ俺一人では持てないと思う。見ないでミーちゃんバッグにしまってもらったよ……。


 当面二人はここで手伝いをしてもらう。慣れれば、誰かをベルーナに連れて行こうと思う。だいたい連れて行く候補は決まってるけどね。ミーちゃん、クリスさんにモフモフされて気持ち良さそう。



「父が眷属殿と敬っておいでだったので、どんな怖いお方だと思っていましたが、とても慈愛に満ちた可愛らしいお方だったのですね」


「み~」



 二人は今日から、このまま手伝ってくれるそうです。商談用の部屋から店の方に移ると、こないだのちょっとくたびれたおじさんが引っ切り無しに何か注文するでもなく店の前を行ったり来たりしているのが見えた。



「あれ、なに?」


「み~?」


「昨日もこの時間帯に来てたわよ」


「追っ払うか?」



 成程、おおよその予想はつく。楽しみにしてるならやってあげようか。ギルドに企画書を持って行くのは明日でも良いかな。


 質の良くない紙を出して三角形の筒状に折って行く。ミーちゃん、アルさんとクリスさんは不思議そうに見てるね。アルさんとクリスさんにはミーちゃんバッグから出してもらったから揚げを、三個ずつ串に刺していってもらう。


 俺は折った紙にフライドポテトを入れていき、から揚げの横に並べていく。用意もできたので表に前回と同じ紙を張ると、おじさんが嬉しそうに寄ってきて注文してきた。



「いやぁー。待ってた甲斐があったよ。一杯もらおうか。この串も一本ね」



 グビッグビッってこっちが旨そうに思えるように飲む。



「くっうぅー。この一杯の為に生きてるって感じだな! もう一杯!」



 おじさんが合図になったかのように、お客が寄ってきて注文が入る。アルさんとクリスさんにも手伝ってもらうけど、冷やす温度がまちまちのようだ。一つ見本を作ってこの温度に統一してくれるようにお願いする。だいたい五、六度辺り、フローズンはまだ無理なようなので俺が作る。


 ミーちゃんは笑顔で接客中。お客さん達も店の邪魔にならない場所で飲んでくれている。できたお客さんだ。


 今日も凄い勢いで客が増え、注文が殺到し、エールが売れ、から揚げフライドポテトが消えていく。流石に疲れてきたので、最終奥義売り切れでーすを発動させる。前回と同じようにえぇーの声が闇の帳に包まれた街に響き渡るのだった……。


 商談用の部屋に戻り、ソファーに深く腰を埋め背伸びをする。アルさんとクリスさんも精神的に疲れた様子でソファーに座っている。ミーちゃんは俺の膝の上の特等席です。



「そんなに旨いものなのか?」


「父は大好きなようです」


「試しに飲んでみたら?」


「み~」



 そう、何気なく言ったこの一言が不味かった……烈王さんを見てたからドラゴンは酒に強いと勘違いしていたんだよ。アルさんは出してあげたエールを自分で冷やして飲み始め、クリスさんには俺がワインを注いであげる。



「あら、美味しいです」


「う、旨い……」



 二人はあれよあれよと杯をあけていく。ドラゴンだから、酒に強いんだな~って思っていたら、アルさんが急に暑いぜ! って言って服を脱ぎ棄て奇声を上げて外に走って行ってしまった……。もう一人のクリスさんと言えば、目をトロ~ンとさせて俺の顔を両手で挟みブチュ~っと口を口で塞いでしまう……。



「ネロく~んも~可愛いでしゅ~♪」



 だ、誰か助けて~、食べられる~。



「み~?」



 騒ぎを聞きつけたクラウディアさんが部屋に来て、クリスさんの後頭部に見事な踵落としの一撃を入る……。クリスさんパタっと倒れ込んだ……大丈夫かな?



「大丈夫よ。明日にはピンピンしてるわ」



 クラウディアさんはそのままクリスさんを担いで出ていった。アルさんはどうなったのかな? 店の方に行くと、アルさんが床に倒れてました……。



「急に大きな声を張り上げて出て来たんでな」



 ちゃったと?



「安心しろ、明日にはピンピンしている」



 既視感ですか?



「み~」






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