208神猫 ミーちゃん、烈王さんに負けてられません。

 ユーリさん以外が戻ってきたところで、白狼四頭とうちに居るメンバー全員と顔合わせする。


 何故、ジンさん達も居るの?



「白狼じゃねぇか……」


「白狼だな」


「こうしてみると、モフモフで可愛いわ~」



 今日からうちで屋敷の周りと牧場の警護をしてくれると説明しておく。四頭は全員に鼻を押しつけて匂いを覚えてるようです。



「警護と言う事は、この四頭は私の部下になるんだな」



 モフモフスキーのレティさんが締まりの無い顔でニンマリし、手をワキワキさせている。レティさん、四頭がビビッてますよ……お手柔らかにね。



「ネロ様、街にモンスターを入れて大丈夫でございましょうか?」


「えっ? 駄目なんですか?」


「み~?」


「ネロ、駄目って言うよりそこは常識じゃねぇ?」


「でも、ルーくんも白狼ですよ?」


「「「……」」」



 あれ? 知らなかった? ペロとセラは四頭の頭をポンポン叩いている。やめなさい、それパワハラになるよ。



「だ、だとしても許可を取る必要があるかと……」


「誰に?」


「「「……」」」


「国かハンターギルドあたりじゃねぇのか?」


「はぁ……じゃあ、後で行って来ます」



 ヤナさんが屋敷の中に走って行き、手に何かを持って戻ってくる。大きなスカーフのようで、一頭一頭の首に巻いてあげている。



「こうすれば、少しはモンスターには見えないかなって」



 成程、野生のモンスターがスカーフなんてしてないからね。ヤナさんナイスアイデア! ヤナさんスカーフを巻くついでにモフモフをさりげなく堪能していたのは、気付かれてないと思ってる本人以外にはバレバレですよ。空気の読めなかったカヤちゃんは一緒になってモフモフに加わってます。


 夜にユーリさんが戻って来てから、カイと一緒に顔合わせ。ユーリさんは驚き顔、カイはユーリさんに抱きついて硬直状態。ミーちゃん、後でカイをペロペロしてあげてね。



「み~」



 次の日は、朝早くからヴィルヘルムに行き市場で魚介類に乾物類、珍味などを買い漁る。新鮮なうえ安いのでついつい爆買いしてしまう。しょうがないよね。烈王さんへのお土産もあるしね。


 以前乗った軍船の場所に行くと、船長さんが居たので声を掛けた。



「話は聞いている。もうすぐ出港だから乗って待ってると良い」



 スミレを引っ張って船に乗って待っていると、船長さんの言う通りすぐに出港の準備が始まり船が動き出す。船は港を出ると帆を全開にして滑るように進んでいく。海の匂いと風が気持ち良いね。



「み~」




 島につくと船長さんから一言。



「午後の三の鐘には出港する。遅れれば帰りは十日後だ、遅れるなよ」



 スミレに乗って、烈王さんの居る神殿にひとっ走り。何度か上空をドラゴンが飛んでいるのをみたけど、俺達を気にした様子はない。


 神殿について、ミーちゃんと中に入り大きな声で挨拶をする。



「ごめんくださーい。ネロとミーちゃんですけどー。烈王さん居ますかー」


「み~」


「あー。大きい声出さなくても、聞こえてるって。今そっちに行く」



 大きな建物だから聞こえないかなーって思ったんだけど、無用な配慮だったみたい。



「よっ!」



 烈王さん歩いて来て片手をあげ、なんてラフな挨拶を……。



「なんか持って来てるんだろう? 外行こう外、天気良いし」



 こんな姿を見て、実は凄いドラゴンって思う人いるのかなぁ? 表に出るとスミレがチラッとこちらをみたけど、どこ吹く風と言った様子を見せている。スミレ姐さん、大物過ぎ……。



「ほう。なかなか肝の座った女だ。嫌いじゃないぞ。よし、そんなお前に俺の加護をくれてやろう」



 スミレがぶるるって、そんなのいらないわよって仕草を見せてる。



「まあ、そう言うなって。なんか良い事あるかもしれないぞ」


「なんかって、なんなんですか?」


「知らん」



 スミレを鑑定してみると、次元竜の加護って言うのが増えている。効果はいろいろな良い効果を発揮すると出ている……なにこれ? もの凄く曖昧な効果だけど凄く良さそう。



「俺も欲しいです!」


「ん? そ、そうなの? でもな~神の眷属が傍にいるネロに勝手にやる訳にはいかないだろう?」


「み~」


「えっ? 構わないのか? じゃあ許可もらえたようだからな、特別に授けてやろう。本当に特別なんだからな」



 おお、俺にもついたよ。なんか良い事あると良いなぁ。



「烈王さん、ありがとうございます。ミーちゃんもね」


「おう、良いって事よ」


「み~」



 ミーちゃん、良かったねって顔をペロペロしてくれてます。お礼にチュッチュッしてあげるね。


 せっかく外に出たので買ったばかりの魚を焼きましょうか。薪を集めて火をつけ、魚を枝に刺して塩を振った物と、何もしない物を焼いていく。魚が焼けるまでの間は珍味類を出して、冷やしたエールをお出ししておく。



「プハァー。旨い!」



 ミーちゃんはミネラルウォーターをチロチロ飲んで、酌はできないけど烈王さんのお相手してくれてます。



「神の眷属殿も飲めれば良かったのにな」


「み~」



 魚がだいぶ焼けてきたところで、何もつけて無い魚に味噌を塗ってもう一度火に近づけて焙っていく。味噌の焼ける香ばしい匂いが食欲をそそるね。


 焼けた魚を皿に盛って差し出すと、烈王さん豪快にかぶりついてる。骨とか大丈夫なんだろうかと考えるのは……無駄な事なんだよね。


 俺も魚をほぐして、焼けた味噌と混ぜて食べる。旨い! ミーちゃんがチラッと俺を見たので、皿に少しだけ魚の身をほぐして、ちょっとだけ焼味噌をつけてあげてミーちゃんの前に置く。ミーちゃん、スンスン匂いを嗅いでから烈王さんが豪快に焼魚を食べている所を見てから、私も負けてられないとばかりに意を決したようにハムハム食べ始めたよ。おぉー、ミーちゃんがお魚食べたよー。


 嬉しくなったので、鯛のような白身魚を三枚におろして刺身にして皿に盛りつける。小皿に醤油も出す。ほんの少しお醤油をつけたお刺身を一切れミーちゃんの皿に載せると、俺の顔を一度見てからハムハム食べてくれたね。


 ミーちゃんもお魚の味に目覚めたかな?



「み~!」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る