205神猫 ミーちゃん、優しいのは当然です。

 味噌と醤油を作ってる村に行きたかったけど時間的に無理なので明日にしよう。


 アレックスさんとクラウディアさんはもう少し店を開けておくそうなので、俺は帰る事を伝えてうちに戻った。スミレからはぶるるって、もう行かないないなら行かないって言ってよねって拗ねられてしまい、帰ってから念入りにお世話致しましたよ。ハイ。


 リビングに入ると、既視感が……。



「にゃ! 姫とネロが帰って来たにゃ」


「突っ立ってねぇで、ほれ、座って飲め! 飲め!」


「ネロさん! 僕達、自分の力でお金を稼ぎました!」


「にゃんこ先生、強くてビックリ!」


「それ程でもあるかにゃ~。もっと褒めても良いにゃよ?」


「一気にパーティーの層が厚くなってやり易くなったぜ。このメンバーなら迷宮探索でも行けると思うぜ。しいて言うなら後は盾役が欲しいとこだな」


「ぼ、僕も連れってくれるんですか!」


「ヤンももう少し鍛えれば連れてけるな」


「頑張ります!」


「流れ迷宮かぁ……なんなら俺も行くか?」


「ジンちゃん、本気~?」


「盾役が居ねぇなら、盾役に徹してやるぜ。後進の指導は先達である、俺達の役目だからな」


「ジン殿がまともな事を言っている……明日は雨か?」


「うっせい!」



 宗方姉弟のハンターになったお祝いらしい……と言う事にかこつけただけで、宴会がしたかっただけのようだ。今日はレティさんも参加してる。



「少年。明日、大奥様がお会いになるそうだ。朝に馬車をここに迎えに来させる。良いな?」


「お願いします。二人共、明日は朝から出掛けるからそのつもりで」


「「はーい」」



 宴会は夜遅くまで続いたと言う……。俺は商業ギルドに持っていく企画書を書いてからすぐ寝たけどね。



 朝、朝食を食べてから眠そうな目をした宗方姉弟の尻を蹴っ飛ばして、新しい服に着替えさせて迎えに来た馬車に乗る。もちろん、レティさんも一緒に乗り込んだ。


 この間の貴族街に向かうのかと思ったら別の場所に連れて行かれ、また目隠しをされて歩かされる。正直、マップスキル持ちの俺には無意味なんだけど……連れて来られた場所は前と同じ場所の同じ部屋だった。


 彩音さんは顔色も良くてベッドの上だけど起き上がって待っててくれたみたいです。



「良く来てくれたわね。私は、神崎彩音と言います。あなた達と同郷の者よ」


「宗方香です」


「宗方歳三です」


「彩音さん、体調は良いようですね」


「ええ、眷属様の神水のお陰でだいぶ調子が良いわ」


「み~」



 ミーちゃんが、彩音さんの所に行ってスリスリ、ペロペロしてます。ミーちゃんなりの気遣いなんだろう。だいじょうぶぅ~? って、顔して彩音さんを見上げて見つめてる。



「眷属様は本当にお優しいですね」


「み~」



 ベッドの脇に椅子が三つ用意されていて、彩音さんが座るように促して来たので座る事にする。レティさんはドアに寄り掛かり、誰かが近寄って来ないか気配を探っているようだ。



 話を始める前に、焼きプリンと宮廷料理長の作ったどら焼きをミーちゃんバッグから出してみんなに配る。ミーちゃんは餡子にしか興味が無いので、俺のどら焼きの中身をあげる事にした。皮、美味しいね……。



「み~」



 みんな、故郷の味を堪能して喜んでくれている。一人、違う人が居るけど、レティさん甘党なので他の人より喜んでる節がある。



「ハァ……。あなた達は、ネロ君が居て幸せね。この世界は香辛料などの調味料は高い上に貴重でね、なかなか手に入り難いの。だから、美味しいのだけれど味が単調で、日本から来た私は苦労したのよ」


「ロタリンギアに居た時もそう思ってました。もっとこう、味のはっきりした物が食べたいって」


「王宮にいたので甘い物は食べられましたけど、果物自体にかけて食べるとか……正直信じられなかったです」



 砂糖は高いから贅沢には違いないね。ロタリンギアの食文化を知らないけど、ルミエールの宮廷料理長はいろいろ作ってるけどねぇ、お国柄なんだろうか?


 お菓子を食べ終え彩音さんとミーちゃんにミネラルウォーターを出してあげる。彩音さんには定期的にミーちゃんのミネラルウォーターを渡してある。



「甘露ね……」


「み~」


「水がそんなに美味しいんですか?」



 彩音さんが俺を見るけど、首を振っておく。



「これは貴重な水でなかなか手に入らないの。ネロ君が体調の悪い私の為に、わざわざ手に入れてくれた物なの」


「「そうなんですか~」」



 飲んでみたそうな顔をしてるけど、今度ね。今は、二人とレティさんに果汁水を渡しておく。


 一息ついた所で、今回の経緯を話して聞かせた。



「そうなの……最初から闇を抱えていたと言う事ね。とても危険だわ」


「闇落ちした訳ではないのでしょうか?」


「闇落ちすれば、神託がおりるでしょう。私以外にもね」


「後は本人次第と言う事でしょうか?」


「そうなるわ……闇落ちしないように、誰かが心を支えてあげてくれれば良いのだけれど……」


「あの先輩達は幼なじみって聞いてます」


「意外と大丈夫なんじゃないのかなぁ~」



 だと良いけどね。幼なじみって言っても所詮は他人。見た感じ、凄く仲が良いって感じには見えなかった。幼い頃は仲良しでも、思春期に入りいろいろと変化するものだからね。あの闇遠藤、王女と婚約してる事も隠していたみたいだし。


 ヤンキー君は別として、奥村さんは心配だね。



「みぃ……」





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