204神猫 ミーちゃん、おばあちゃんの知恵袋知ってます。

 お昼の忙しい時間帯も手伝い、昼食を食べてから王宮に向った。流石に、顔パスとはいかず手形を兵士さんに見せる。スミレはぶるるって、失礼しちゃうわって仕草を見せている。ミーちゃんはそんなスミレの頭に乗って肉球でなでなでして宥めてるね。


 しばらくして、大公様付きのいつもの執事さんが来て大公様の元に案内してくれた。



「反乱軍を蹴散らしたと聞いておる。派手にやったそうではないか」


「はて、なんの事でしょう」



 執務室に入って挨拶も終わらないうちに、酷い言いようです。事実なんだけどね……。



「今日はいつもの者達はどうしたんじゃ?」


「急いで来たので王都の家でお留守番です」


「ほう。ベルーナに家を持ったか。神猫商会、繁盛しとるようじゃな」


「おかげさまで」



 今日はミーちゃんと俺だけなので、侍女さん達はガッカリ顔。そんな侍女さん達の所にミーちゃんテトテト歩いていて一鳴き。



「み~」



 侍女さん達も、これがモフモフして良いよの合図と悟り奪い合うように抱っこしてニンマリしてますよ。ミーちゃんはできる子猫おんなのこです。


 大公様は苦笑い。そんな大公様に王妃様から預かった手紙を渡す。



「ふむ。アンネリーゼからか」



 お茶を飲みながら大公様が読み終わるのを、ミーちゃんがモフモフされているのを見ながら待っている。



「成程のう。裏で手を引いていたのは、の国か……。詳しい話はネロ君に聞けとある。話してくれるのであろう?」


「お時間はよろしいので?」


「構わんよ」



 と言う事なので、前回ヴィルヘルムからベルーナに戻った所から話をした。




「そうか……勇者がおったか。二人は説得に応じたのであれば、重畳。それ以上は欲というものじゃな」


「そうなのかもしれませんが、ロタリンギアに利用されると思うと説得できなかった事が悔やまれます」


「ロタリンギア……危ういのう。先代の王はそれ程野心のある者ではなかった。無能ではなかったが年老いる毎に色事にかまけてのう。何度もアンネリーゼを妻にと煩かったわ」



 王妃様美人だからねぇ。



「先代の晩年には王子が次々と病死してのう、今の第五王子が王位に就いた。今の王の野心を考えると……じゃな?」


「十分に考えられますね」


「残りの三人が不憫な事にならねば良いが」


「はい」



 ここで、大公様にゼストギルド長と王妃様に語った仮説を聞いてもらう。



「更に魔王が後ろで手を引くと?」


「実際には誘導されていると言う感じでしょうか」


「しかし、今までそのような手を使った魔王は居ない。魔王にとっては力でねじ伏せるの事こそが快楽と聞いておる……うむぅ」


「人は十人十色。魔王とてそうなのではないでしょうか?」


「魔王も時代を重ね変わるか……」



 その辺はよくわからない。魔王に関する書物なんて見た事ない。王宮の図書館などにはあるのかもしれないけど、禁書とかで見れなさそう。



「烈王さんにも報告に行かなければならないのですが……」


「明後日に島に物資を運ぶ予定がある。それで行くんじゃな」


「ありがとうございます。島に行く術が無いのでどうしようかと思っていました」



 転移装置の札を置いてこようか? 今、三枚使ってるから後二枚あるけど頻繁に出入りしないんだよね。使うのがもったいないと言う訳ではないけど、いつ必要になるかわからないので持っておきたい。烈王さんに会ったら相談してみようか?


 大公様とはその後、レーネ様の事をいろいろ聞かれ秋におこなわれるレーネ様のお誕生祭に何をプレゼントしたら喜ばれるかの相談を受けた。レーネ様に今一番必要なのは人族の友達とだけ言っておいた。




 神猫商会に戻ってアレックスさん達二人の手伝いをしながら、ある事の準備をしている。大きな紙に本日限定、キンキンに冷えたエールとフローズンエールと書いて、店の前に貼る。おつまみ用にから揚げ三個を串に刺した物も用意した。ジョッキも一度洗って乾かしている。中が汚れているとエールを注いだ時に泡しかでなくなるからだ。知ってた? ビールのジョッキは洗った後、中を布巾で拭くのはNG。おばあちゃんの知恵袋でした。



「み~」



 なんて、考えてると最初のお客が来た。ちょっとくたびれた感のあるおじさんだ。



「本当に冷えてるのかい?」


「そりゃもう」


「なら、一杯もらおうか」


「へい、お待ちぃ!」


「み~」



 グビグビとうちで雇ったさくらとでも言うような感じで、一気にあおって飲み干す。



「プハァー。クゥーッ! 旨い。もう一杯!」



 何かのコマーシャルを見てるような、この既視感。それは店に来たお客のみならず、通りすがりの人達も何かを感じたようで



「俺も一杯くれ!」


「お、俺もだ!」



 って感じで伝染していくかのように注文が殺到する。他のお客さんの邪魔にならないように店の脇に寄ってもらうけど、エールを注文する客は増える一方。から揚げも瞬く間に売り切れる。


 こ、これは予想以上の展開だよ。途中からクラウディアさんにも手伝ってもらい、なんとかお客を捌いていく。結構、割高な値段設定をしているのにガンガン注文される。ヴィルヘルムは気候で言うと亜熱帯と言ったところかな、特に今の時期夏は暑いのでキンキンに冷えたエールは最高なんだろう。俺は飲んだ事ないけどね。


 でも、流石にこの状況は不味い。申し訳ないけど、売り切れでーすと言って終わりにする。お客さん達からブーイングが起きている。


 これは売れる事間違いなしだけど、対策を講じないと駄目だね。アイデアはある。商業ギルドあたりを巻き込んでやった方が良さそうだ。水スキル持ちの人材も必要になるね。少し考えよう。


 でもこれは、面白くなる予感がするぞ。ミーちゃん、どう思う?



「み~!」





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