203神猫 ミーちゃん、餡子の誘惑には勝てません。

 宴会に加わっていると、イルゼさんとカヤちゃんが帰って来た。今日も売り上げは順調。品切れになって戻って来たそうだ。ウハウハだね。


 宴会の中、お手伝いしていたカヤちゃんが俺の真似をしてエールをキンキンに冷やしたりフローズンにして飲んべぇ達に配ってる。完全にスキルを使いこなしてるね。これなら、あの件を実行できるかも。イルゼさんに話をしてみる。



「お酒ですか?」


「夕方の時間帯だけって事でやってみませんか?」


「売れるでしょうか?」


「売れます! この惨状を見てください。これが現実です!」


「さ、惨状……」



 まだ夕方過ぎだと言うのに、この宴会騒ぎ。この世にアルコールがある限り、無くなる事はないと言う現実。ならば、それで儲ける事は必然! 否、儲けなければならないのだ!



「み~」



 と、代表も仰っています。ハイ。


 それに神猫屋で旨い酒を提供すれば、周りの屋台も必然的に賑わう事になってwinwinの関係にもなる。周りの屋台と仲良くしておけば、変な妬みも買わないからね。


 今の屋台では酒樽を運べないので、別の台車を作ろう。多少重くなってもバロなら問題無く引いてくれるだろう。早速、図面を描こう。立ち飲み屋神猫って事で良いかな? ララさん達に暖簾とのぼりもお願いしなくちゃね。




「ネロさん! 僕達は明日から何をすれば良いのでしょう!」


「何でもしちゃうぞー!」



 そこには、この場の雰囲気に煽られナチュラルハイになった宗方姉弟が居た……。



「そ、そうだね。少しの間、俺は忙しいからペロ達と一緒に依頼を受けてみたらどうかな?」


「にゃんこの先生とでありますか!」


「にゃんこの先生! ご指導、ご鞭撻の程、よろしくお願いします!」


「ごま塩? お弁当にゃ? にゃんかわからにゃいけど、任せるにゃ!」


「あー、ルーさん。よろしくお願いしますね」


「問題ねぇよ」


「にゃ! にゃんでにゃー!」



 お、お約束だね……。



「私達武器も防具も無いんですけど……」


「そう言えば、置いて来たね」



 ミーちゃんバッグから二人に合いそうな武器と防具を出してもらう。



「ほう。良い品だな。ネロ君は武器、防具も扱っているのかね?」


「趣味と実益でしょうか。武器、防具は男のロマンですから」


「どうだろう。私の愛剣が壊れてしまってね。何か良い剣はないだろうか?」



 ミーちゃんバッグの中から、数本の売らずに取っておいた逸品を出す。



「まさか……これは黒剣か! この波紋、剣匠バルデスの作ではないのかね! こちらの剣は……」



 いつもクールなグレンハルトさんが珍しく興奮している。黒い剣って男心をくすぐるよね。俺も気に入ってる剣のうちの一本。まったく使う気はなく趣味ですけど。


 グレンハルトさんが悩みまくってる間に、宗方姉弟に装備させて問題無いか確認する。



「ロタリンギアから貰ったものより良い物のような気がしますね」


「動きやすいし、この弓とっても可愛い!」


「妖精族の弓ね……。ネロ君、いくつもってるの?」



 ローザリンデさん、そのジト目やめてください。欲しいならお売りしますよ。まだ、いくつかあるので。


 結局、グレンハルトさんは黒剣とそれと対照的な美しく輝く剣を買ってくれました。もちろん、ローザリンデさんも妖精族の弓をお買い上げ頂きました。値段は友達価格だけど、ウハウハですよ。



 翌日、ペロ達は朝早く朝食をとってハンターギルドに向ったようだ。俺はカティアさんに昨日描いた台車の設計図を渡して、大至急で作ってもらうようにお願いして王宮に向かう。


 王宮に着くと、すぐにニーアさんがやって来て、手紙と手形を渡してくれる。手形は何かあった時の為にらしい。転移装置で行くので必要ないと思うけど、わざわざ用意してくれたのでありがたく受け取っておく。俺は昨日清書した設計図をニーアさんに渡して、早急に試作品を作る事を勧めておいた。



「ネロ様がそう仰るのであれば、アンネリーゼ様にそうお伝え致します。それでは、ネロ様、ミー様、無事のお帰りをお待ちしています」



 転移装置で一瞬なんだけどね。


 一旦、うちの馬屋の横の倉庫に戻って転移装置を使い神猫商会ヴィルヘルム支店に飛ぶ。トンテンカンと音が聞こえてくるので、大工さん達はもう仕事を始めているようだ。スミレを馬舎に入れて中に入ると、もう店の前は既に大勢のお客さんでごった返していたので手伝う事にした。ミーちゃんはカウンターで接客お願いしますよ。



「み~」


「なんだ来ていたのか?」


「ミーちゃん、お元気?」


「み~」


「取り敢えず、手伝いますよ」



 ハンターさんや仕事に行く前の男性の一服にと大勢の人が訪れてくる。保存食用の餅、味噌玉も売れ行きは好調。一段落つくまで結構な時間がかかってしまった。大公様の所に行くのは午後からにしよう。


 お客の数も落ち着いて来たところでクラウディアさんが俺にお茶を出してくれ、ミーちゃんには小皿に餡子を載せ出してくれた。



「み~!」



 ミーちゃんは、働いた後の餡子は格別とばかりに無心で舐めてるね……毎日食べてるよね?



「今日はどうしたのかしら?」


「烈王さんと大公様に用事があって来ました」


「烈王様、暇してるから喜ぶわよ」


「そうだな。烈王様の相手ができる者は限られているからな」



 なるほど、明日の朝市場に行ってお土産をいっぱい買って行こう。その前に大公様の所に行って、報告して船を出してもらわないとね。



「……ペロペロ。み~♪」







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