202神猫 ミーちゃん、好きな物は最初に食べる主義です。
ゼストギルド長はお茶をいれて待っててくれた。
「よく来たのう。丁度、休もうかと思っとったところだ。さあ、座りなさい」
ギルド長室のソファーは二人用。ギルド長の対面に宗方姉弟を座らせ、俺はお茶が置かれているギルド長の横に失礼しますと声をかけてから座った。
「ふむ。想像していたのと、ちと違ったのう。もっと勇者! と言った感じの大男が来ると思っとった。この国を建てた勇者の肖像画を見た事があるが立派な体格をしておったからのう」
それは後世の人が描いた物じゃないのかな? 俺の予想ではこの国を建てた勇者は日本人だと思う。居ないとは言わないけど、俺くらいの体型が標準だし過去の時代の日本人なら尚小さいと思う。本人が誇張させて描かせたとも考えられるね。
ギルド長のいれてくれたお茶を飲みながら、事の顛末を話した。王妃様に話した事とほとんど変わらないけど。
「残りの勇者はロタリンギアかのう」
「亡くなってなければ、おそらく」
「ハンターギルドの方でも調べてみるかのう」
「本部を説得できたんですか?」
「まだじゃ。だが、説得できてからでは遅すぎるからのう。儂の権限で動かせる者達は既にロタリンギアに向かわせた。向こうで後続が来る準備をさせておこうと思ってのう」
流石、ゼストギルド長。先見の明があるし行動力もある。伊達に王都のギルド長をやってるわけじゃないね。
「それで、ネロ君はただ報告と顔合わせの為に来たのじゃないであろう?」
「ははは……ギルド長にお願いがありまして」
「たいした事はできんぞ」
「二人にハンターの資格証をもらえませんか?」
「そんな事なら簡単じゃが……良いのか?」
「王妃様には許可をもらっています。二人を政治の駆け引きには使わせません」
「王国の庇護下に入らんと言う事じゃな」
「当面は私達神猫商会と義賊ギルドで二人を保護します。ですが、自分達で自立及び己の命を守れるくらいにはするつもりです。もちろん本人次第ですけど」
「ふむ。その為のハンター資格証じゃな。よかろう、明日の朝までには作っておこう」
「ありがとうございます」
そこからは堅い話は無しにして談笑となった。反乱軍とロタリンギアの兵に物資を売って大儲けした話はギルド長のツボに入ったらしく大爆笑だったね。
忙しいギルド長のお邪魔をする訳にもいかないので、ギルド長の特製ブレンド茶を二杯ご馳走になったところでギルド長室を出て下に戻る。ハンターさん達が戻り始める時間なので、受付のお姉さん達も営業スマイルに戻っている。
みんな帰るよ~。カイとテラはお仕事頑張ってね。
「「みゅ~」」
「み~」
うちに戻りスミレ達の世話をすると、宗方姉弟もベン爺さんに教わりながら馬達の世話をしている。良い事だね。
リビングに入るとジンさん達がお酒を飲んでいた……まあ、良いんだけどね。ペロ達も楽しそうだから。ルーくんとラルくんもご相伴に預かろうと、しっぽをブンブン振ってみんなの輪の中に入っていく。宗方姉弟も行こうとしたので、襟を掴んで別のテーブルに移動させた。
「うぅー、私も混ざりたい~」
「キリキリ歩け!」
「姉さん、早く終わればそれだけ早く参加できるよ」
「私は好きな物は、最初に食べる主義なのよ~」
「み~」
ミーちゃん、そこは同意するところじゃないよ……。
宴会中の彼らをよそ目に、ミーちゃんは猫に小判クッションでうたた寝。俺は宗方姉弟と二人が描いた設計図を清書していく。ちゃんと清書するとなかなか詳しく描かれている事がわかる。実はヤンキー君がこの手の武器に詳しかったようで、この設計図の原案を作ったのは彼のようだ。意外とオタクだったのかな?
複合弓もこの世界の技術で十分に作れそうだ。滑車の原理も問題ないし複合弓の名たる由縁の異なる素材の使い分けもできてるね。素材を変えれば強弓も作れそう。力の弱い者でも引け、力の強い者は更に強い弓を引ける。メンテナンスは大変そうだけど強力な武器だ。
クロスボウは大型のようだ。どうしても、素材の強度が不足するようで大型化したようだ。軽金属やプラスチックを作れないこの世界ではどうしようもないのかも知れない。改良の余地はあると思う。複合弓のように滑車を利用でき強化できる。昔の大型のクロスボウは歯車などを使って、撒きあげ式もあったと歴史の授業で習った気がする。水車を利用した粉ひきがあるんだから、歯車はあるだろう。余白に書いておこう。あと、余白に騎馬隊に相性が良い事も書いておく。これは後日、説明しにいく必要がある。
バリスタに関してはよくわからん。クロスボウのでっかいのって感じかな? 王宮の職人さんに頑張ってもらおう。
火薬については知ってる事を書き足しておく。問題は硝石だね。どう説明すれば良いのかがわからない。作り方も知らないしね。
明日、この設計図を渡して早急に研究、作成、量産に入ってもらおう。ロタリンギアの事もあるけど、ゴブリンキングの方がこの国にとって間近の脅威だからね。これが量産された暁には、ゴブリンキングなぞあっという間に叩いてみせるわ! とまでは言わないけど、優位に立てる可能性のポテンシャルは充分に持っていると思う。
少しでも被害が少なく済む事が望ましいからね。おそらく、ゴブリンキング討伐の後にはロタリンギアとの戦いになるだろう。人同士の戦い、虚しいね……。
「すぴぃー」
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