200神猫 ミーちゃん、記憶にございません。
最後は、王国軍と反乱軍との戦いの話。ラルくんの事は話さずに淡々と時系列毎に話を進めたよ。
「大事な事が抜けていなくて?」
「さあ、なんの事でしょう」
「み~?」
「話にあった閃光は何だったのかしら?」
王妃様はレーネ様に抱っこされてるラルくんをチラ見する。ラルくん、な~に? って顔で首を傾げる姿は可愛いね。ミーちゃんは、なんの事かしら? 記憶にございませんって顔してます。
「私もバロンに乗っていたから見えてたわ。飛竜達が動揺してたけど、恐れてる感じはしなかった。どちらかと言えば、緊張していたけどやる気満々って感じだったかな?」
そりゃそうでしょう。上位種のドラゴンの上、烈王さんの息子だからドラゴンで言う王様の息子の王子が戦場視察に来てるようなものだろう。飛竜達も良いところ見せようと頑張ったんだろうね。
「なんだったのでしょうね? あれじゃないですか、ロタリンギアがあまりにも暗躍するので神様の天罰が下ったんですよ。きっと……」
「みぃ……」
「ネロ君がそう言うのであれば、そう言う事にしておきましょう」
「それより、宗方姉弟!」
「「ハヒッ!」」
「クロスボウ以外にロタリンギアに流した知識は無いだろね?」
「「そ、それは……」」
「キリキリ吐け!」
宗方姉弟が言うには、バリスタ、コンポジットボゥの原理、火薬の原料などいくつか教えているそうだ。ちなみに、この世界に火薬の類似品は既にある。但し火力が弱い。反乱軍との戦いの時の合図に使われていた花火の原料になる。
二人にそれを書き出させる為、ニーアさんに紙とペン、別のテーブルを用意してもらう。
「ネロ君、それは武器なのかしら?」
「一長一短はありますが、強力な武器ですね。作成できれば、ゴブリンキングとの戦いに役に立つと思います」
「王宮の職人に作らせましょう。ニーア」
「承知しました」
クロスボウは防衛に、バリスタは攻城戦に、コンポジットボゥは力の弱い者でも強力な弓矢攻撃ができるようになる。この知識がロタリンギアにあるのは脅威だ。今までの戦い方が一変しかねない。特に騎馬隊の優位性が揺らぐだろうね。ちゃんと説明しないと不味い事になりそうだよ。
火薬に関してはどうしようか。原料は知っている。木炭、硫黄、硝石が黒色火薬。木炭を褐色木炭にすると銃などで使われる褐色火薬になる。配合比率は知らない。無煙火薬なんて見当もつかないね。
火薬の材料の木炭はどこにでもある。硫黄も火山や温泉を探せば見つかると思う。問題は硝石かな? この世界の自然界に存在するかも知らない、糞尿から作れる事は知っているけど詳しい作り方なんて知らない。硝石って他に使い道ってあったっけ?
二人に硝石の作り方を知っているか聞いてみたけど知らないそうだ。となると、向こうも知らないとみるべきだろう。でも、火薬と言う物を知ってしまった以上、研究すると見た方が良い。ルミエール王国でも研究する必要がでてくるな。異世界の知識、余計な物も多すぎるね。
「ロタリンギアがこの知識を得た以上、ルミエール王国でも研究しない訳にはいかなくなりました。化学の発展は見込めますが、戦争で今までより多くの犠牲が出る事でしょう」
「仕方ありませんわ。時はもう戻りません。知識を得たからには、我々も抑止力としてこの知識を利用しなければなりません。そうしなければ蹂躙されるのを待つのみとなります。父上にも協力を仰ぎましょう」
宗方姉弟は俺と王妃様の話を聞き、始めて自分達が教えた知識の重大さに気付いたようで顔を青くしている。正義は我にありと洗脳されていたのだから仕方のない事なのかも知れないけど、これからの戦争が変わって行くのは止める事ができない事実だろうね。スキルの力を使っているとはいえ、銃を作った俺には彼らを非難する事はできないけどね。
王妃様には明日からヒルデンブルグの公都ヴィルヘルムに行く事を伝える。今回の顛末を大公様に報告に行くのと、神猫商会の支店に用があると言っておく。烈王さんにもだ。
「父上に手紙を書いておきます。明日、出発前に取りに来てくれるかしら?」
「では、明日の朝に取りに伺います」
「ユリウス様がお戻り次第、ブロッケン山の件にも着手します。ネロ君の叙爵の件もあるわね」
「へぇー、ネロ君。貴族になるんだぁ。叔父上、残念がるわねぇ」
「なりたくてなるんじゃないですけど……」
「父上から叙爵されても問題はないわよ? それだけの功績はあると思うわ」
「別にいりません」
「本当は今回空いた東辺境伯に推したいのだけれど、流石にそれは無理そうなのよね」
な、なに言ってるんですか! ロタリンギアの矢面に立たせる気ですか! それに辺境伯って言ったら王様に次ぐ地位じゃないですか! 要りませんよそんなの。
東辺境領には、王様と宰相様、第一騎士団が平定に向かっている。ロタリンギアが手を出す前に平定しないと不味いからだ。王妃様の話では当面は第一騎士団が東の国境の防衛に就くらしい。こうなった以上、最重要地点になったから仕方がない。問題はゴブリンキングとの戦いに第一騎士団が参加できないと言う事だ。
課題がいっぱいで王様も宰相様も寝る時間が無くなりそうだ。ミネラルウォーターの差し入れ少し多めにしようか?
「み~」
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