199神猫 ミーちゃん、当然主賓です。

 レーネ様が俺を見て走ってくる。



「る~きゅん! らるきゅん! ペロしゃんとセラしゃんは……」



 だよねー。わかっていたさ、この事は何も言うまい……。



「ペロ達は訓練してるので今日は来れません。レーネ様」



 代わりにルーくんとラルくんがレーネ様の顔をペロペロして元気づけてる。ルカ、レア、ノアも俺の足元に来た。わかってる、何も言うな……。ミーちゃんをおろしてあげるとペロペロ合戦が始まった。


 そんな中、ルカが俺によじ登って来た。抱っこしてやるとペロペロと手を舐めてくれた。ルカ、良い子だよ~お兄ちゃん嬉しくて涙がちょちょぎれそうだよ~。


 お姉ちゃんとの挨拶も終わったレアとノアも俺によじ登って来たので、ミーちゃんと一緒に抱きあげる。レアとノアもルカと一緒に俺の顔をペロペロしてくれ、それにミーちゃんも加わって嬉しい反面大変です。



「ネロ君が羨ましい……何故、私には……」



 何故かエレナさんがへこんでいる。



「良く無事で戻りました。そちらに居るお二方が召喚された方かしら?」



 宗方姉弟は動きが硬く、まだ緊張して声が出せないでいる。彼女らにしてみれば、敵対していた国の王妃になるから当然と言えば当然。



「こちらは、ルミエール王国の現国王陛下のお妃様でアンネリーゼ様です。この二人は姉弟きょうだいで、宗方香、宗方歳三と言います」



 俺が紹介した事でなんとか再起動し、王妃様の前に片膝をつき頭を下げた。なかなか様になってる姿だね。ロタリンギアで習ったのかも。



「宗方香です」


「宗方歳三と言います」



 それでも、緊張してるせいか言葉が続かない。



「あなた達の英断に感謝しますわ。無駄な血が流れずに済みました」



 反乱軍とロタリンギアの兵士は全滅に近いけどね。



「ネロ君、何か言いたい事でも?」


「いえいえ、我が軍の勝利、誠に喜ばしい限りです」



 王妃様、いつものお美しい笑顔で俺を見て来るけど、目が笑ってませんよ。怖いから、ミーちゃん行って来て。



「み~」


「ミーちゃんも無事で良かったわ。いつもながら艶々スベスベでいてふわふわ、気品にあふれているわね」



 そりゃそうでしょう。どんなに忙しくても、ミーちゃんのブラッシングは欠かした事は一度もないですからね。



「私の髪もミーちゃんみたいにならないかなぁ……チラッ」



 なんですか? そのチラッて、エレナさんはちゃんと手入れしてないだけのように思えますが……ヘアーブラシでもお贈りしましょうか?



「みぃ……」



 グハッ! 久々のミーちゃんの冷たい目……頂きました!



 なんて事をしているうちに、できる侍女長のニーアさんはお茶の準備を済ませている。



「お茶の準備が整いました。どうぞこちらへ」



 宗方姉弟を立たせて、ニーアさん達侍女さん達がセッティングしてくれたテーブルに座る。全員が席につくとお茶が配られ、俺の所にはレアとノア用のミルクの入った皿も置かれ、ミーちゃん用の空の皿も置かれる。空の皿にミネラルウォーターを入れて、レアとノアを皿の傍におろすとお座りしたままちゃんと待ってます。レーネ様の所にはルーくんとラルくんのミルクも用意されていて、ミーちゃんが王妃様の所からやって来てお皿の前にちょこんとお座りする。



「み~」



 ミーちゃんの頂きますの一声で、みんながお茶を飲み始める。流石、ミーちゃん。誰も疑問に思わないところが凄いね。ミーちゃんが主賓で良いのかな?



「それで、ネロ君。アーデルベルトからは大まかな報告は受けていますが、詳細はネロ君に報告させるとあります。報告お願いね?」


「はぁ……わかりました。どこからお話しましょうか……」



 王都での反乱鎮圧の後からの事を、話せる範囲で話して聞かせる。王妃様達だけでなく、宗方姉弟や侍女さん達も興味津々のようで、一言も漏らさず聞こうと聞き耳を立てている。



「じゃあ、堂々と正面から入っちゃった訳?」


「袖の下はだいぶ取られましたけど、補給部隊が遅れていると情報をもらっていましたので」


「流石、ネロ君ね。費用はちゃんと支払うわ」


「必要ありません。それ以上に稼がせて頂いたので」


「み~」


「稼がせて頂いたって……そんなに利益が出たの?」


「そりゃもう、ウハウハものでした。反乱軍もロタリンギアも、できればロタリンギアの貨幣の両替をお願いしたいです」


「わかりました。ニーア、お願いね?」


「承知しました」



 そこから、召喚された者との話をして模擬戦、逃走に至る経緯を語った。



「ネロ君。油断し過ぎです。もっと自分を大事にしなさい! 相手を侮る事は一番の愚策よ! 今後は気を付けなさい!」


「み~!」


「ミーちゃんも心配だったみたいね」


「以後、気を付けます……」


「それにしても、ダスクと言う者気になりますわ。調べさせましょう。何者なのでしょうね?」


「ジクムントさんの旧知の仲……と言うか仇敵のような感じでしたね」


「ジクムント殿の……わかりました。そちら私達の方で調べます」


「でも、奥村真って子。残念だったわね。邪魔さえ入らなければ説得に応じたかもね」


「種は撒きました。後は本人次第でしょう」


「み~」



 逃げ出そうと思えば、逃げだせるはず。手は差し伸べると言ってあるから、奥村さんがどう判断し行動するかだよ。


 無理だけはせず、無事な姿で俺達の前に現れて欲しいね。



「み~」





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