184神猫 ミーちゃん、お客様を接待します。

 お茶とミーちゃんクッキーを食べながら、みんなと雑談をしているとレティさんが二階から降りてきてリビングに入って来た。



「少年。ギルドの者がロタリンギアの軍勢まで道案内してくれるそうだ」



 入って来たレティさんを見て、ジンさん、グレンハルトさん、ローザリンデさんが驚きと警戒の顔を見せる。



「何故、魔族が居る……」


「安心してください。彼女は神猫商会の警護担当者でレティさんって言います」


「って、ネロの部下かよ!」



 更に、ジンさん、グレンハルトさん、ローザリンデさんが驚きの顔を見せた。何に対して驚いているんだろう? この国に魔族が居る事なのか、敵対者として見ているのだろうか?



「レティさん、こちらは……」


「知っている。五闘招雷だろう」



 ですよねー。義賊ギルドに居たレティさんが知らない訳がないですよね。テラをムニュムニュしながらレティさんに座るように促す。


 カイがそんなレティさんによじ登って膝の上を陣取った。レティさん、ああ見えてモフモフに優しい。みんなにつき纏われうざいとか言う割には、頬を緩めてみんなの相手をしている。夜型の人なので、よくカイの相手をしているせいかカイが良く懐いている。



「明日の早朝出発ですが大丈夫ですか?」


「問題ない。途中で案内役と合流する手筈になっている」


「レティさんも来るんですよね?」


「仕方あるまい。面倒だが、少年に死なれるとグーたらできなくなるからな。守ってやろう」


「みぃ……」


「「「……」」」



 言っちゃったよ、この人は……本音だね、冗談に聞こえない。ミーちゃんとジンさん達が唖然としてますよ。



「だ、大丈夫なのかよ……」


「安心するにゃ。レティ姐さんは凄腕にゃ!」


「にゃ!」



 いつからレティさんは凄腕ネーチャンから姐さんになったのかな? よく夜にペロ、セラ、レティさんで模擬戦してるのは知ってたけど。レティさんが格付けで上って事なんだろうか?



「ほう。にゃんこ共にそこまで言わせるかよ」


「ふむ。手合わせしてみたいな」


「面白そう~」



 レティさんはしれっとした顔でお茶を飲んでます。甘~い紅茶をね。


 ララさんが部屋の用意ができましたと言って来たので、ジンさん達を部屋に案内してもらう。その間にレティさんから詳しくは話を聞こう。


 テラはカイが懐いているレティさんが気になるようで、テーブルの上を移動してレティさんの前にちょこんとお座りして可愛らしく鳴いて見せている。



「なんだ、お前も抱っこして欲しいのか?」


「みゅ~」


「しょうがない。特別なんだからな」



 必死にニヤケ顔を抑えようとしているけど、ここに居る者はレティさんがツンデレである事は既に承知している。素直になれば良いのにね。



「み~」



 カイとテラを抱っこして顔が緩みっぱなしのレティさんに話を聞く。



「それで、状況は?」


「あ、あぁ……。王都に進軍中だ。途中で王都の反乱軍と合流するだろう」


「軍の規模は?」


「騎馬二千、歩兵一万三千、傭兵四千、補給二千。今でも、貴族の兵が集まっているのでもう少し増えるだろう」


「よく集めましたね」


「それだけ不満を持つ貴族が多いと言う事じゃないか」


「勇者の方はどうです?」


「おとなしいものだ、ロタリンギアの兵に守られて後方に居る」


「本人達は何をするかわかって来てるんですかね」


「さあな。私にわかる訳ないだろう」



 ですよねー。


 ジンさん達が普段着に着替えてきたので食事にしますか。



「ぷはー。うめぇ」


「フォルテ産の酒だな」


「流石に商人ねぇ。よく手に入れたものだわ~」



 ジンさんのリクエストでフォルテの蒸留酒を出してます。うちの人達はエールやワインは飲むんだけど、蒸留酒は人気がないんだよね。なので、料理に使うかベン爺さんが寝酒に飲むくらいだよ。


 三人のお客様相手に、ミーちゃんが笑顔で接待してますよ。ローザリンデさんはミーちゃんをなでなでして頬が緩みっぱなし。ジンさんとグレンハルトさんはルーさんと談笑しながらお酒を楽しんでます。




「明日の朝、出発って事忘れてませんよね?」


「あったりめぇだろう。ほんのちょっと楽しむくらいだぜ」


「うむ。問題ない」


「一樽位ならへっちゃらよ~」



 そう言えば笊でしたねこの人達……。


 ルーさんとセラはエール、レティさんはワイン。他は果汁水を飲んでます。ミーちゃんとカイ、テラは仲良く猫缶をハムハム、カヤちゃんがお口を拭いたりミネラルウォーターを飲ませたり甲斐甲斐しくお世話してくれている。今日はテラも居るのでお世話するのが嬉しくてしょうがないそうです。



「うめぇ……。ネロはいつもこんなの食ってんのかよ……」


「一流の店にも引け取らない味だ」


「ネロ君の家に居たら、太っちゃいそうね……」



 お口に合ったようでなによりです。食事の後はお風呂に入ってゆっくりとしてください。明日からは大変ですからね。



「み~」



 お風呂はローザリンデさんが最初に入り、その後にジンさんとグレンハルトさんが入って今はリビングで冷えたエールを飲んでます。



「ベルーナの高級宿以上だぜ」


「王侯貴族並の待遇だ」


「それなりに稼いでいると思っていたけど、上には上が居るのね~」



 この国で五本の指に入るハンターの三人なのだから、稼いでいない訳が無い。ハンターと言う仕事柄、定住と言うのは難しいのかもしれないけど定宿は高級宿。普通のハンターなど泊まれないような宿に泊まっている。そんなに違うのかな? ヒルデンブルグの『グランド ヴィルヘルム ノルド』は別格として、ベルーナの高級宿だって一流の宿には違いないと思うんだけどね。


 まあ、この屋敷は使っていなかった王族の別荘を持って来た物だから物は良いはず。風呂は特注品って事もあるから、そこそこなのかな? どうしても基準が『グランド ヴィルヘルム ノルド』になってしまうので俺もよくわかりません。


 でも、気に入ってますよ。ね、ミーちゃん?



「み~」





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