176神猫 ミーちゃん、引越しの手伝いをする。

 次の日の朝、レティさんを外に連れだそうとしたら外は暑いから嫌だと断られた……て、てめぇー、あれだけ長湯しといて外は暑いから嫌だとぉー! えぇぃそこに直れ成敗してくれるわぁー!


 なんて思っていたら、来客を知らせる呼び鈴が鳴った。


 ヤン君のお母さんのイルゼさんとカヤちゃんです。


 イルゼさんにソファーに座るように促し、カヤちゃんにルーくんとラルくんを紹介する。ルーくんとラルくんは、わふわふ、きゅ~きゅ~と遊んで! 遊んで! 攻撃をカヤちゃんにお見舞いし撃沈させる。ヤナさんにカヤちゃん達を見ててとお願いして、ルーくんとラルくんを外に出した。



「それで、お決まりですか?」


「はい、神猫商会さんにご厄介にならせて頂きたいと思います。ですが本当にあの条件で雇って頂けるのでしょうか?」


「ご心配なら、商業ギルドで正式な文書を作り契約を交わしても構いませんよ」


「そ、そこまでは心配していません。後は住む場所なのですけれど……」


「ララさん、イルゼさんを例の部屋にご案内して説明もお願いします」


「承知しました」



 イルゼさんがララさんに連れられて部屋を出ていく。すぐそこなんだけどね。その間、ミーちゃんとカイをモフモフして待つ。ユーリさんは今日は部屋で休んでます。カイはおとなしい子で、家ではユーリさんが嫉妬する程ミーちゃんにべったり、この甘えん坊め、ウニウニ。


「み~」


「みゅ~」



 カティアさんが入れたお茶を飲んで待ってると、イルゼさんが戻って来た。少し興奮気味です。



「本当にあの部屋を使ってよろしいのですか?」


「三人ですから、あの位が丁度良いと思いますが……気に入らなければ他の部屋を用意させますよ」


「いえ! あの部屋で十分でございます!」



 聞けば、今住んでる所より数段に広いそうです。うーん、あの部屋より狭い所に三人って、ギルド指定のタコ部屋なみ? それならすぐに移った方が良いんじゃない。



「ですが、まだ仕事をしてる訳でもありません……」


「構いません。既に屋台の方はここにありますので、こちらに移って頂き仕事内容を覚えてもらった方が手間が省けます。カティアさん、雇用契約書と借金返済の件お願いします。引っ越しは明日おこないましょう」


「明日ですか?」


「明日です。持って行く物と置いていく或いは、処分する物の仕訳だけ今日の内にやっておいてください。荷物はこちらで運びますので」


「わ、わかりました」



 外に出て、ミーちゃんに神猫屋の屋台を出してもらう。



「可愛いですね」


「母さん、これで私達お仕事するの~?」


「後で商業ギルドに行って屋台を出す場所を契約してきます。できれば、中央広場が良いですね。中央広場まではここからだと結構距離がありますから、屋台はバロに引かせて行けば良いでしょう」


「バロ、いるの~?」


「うん。可愛いのが居るよ。見てみる?」


「見てみたい!」



 という事で、ルーくんとラルくん先導の元馬屋に行く。ついでに、屋台を倉庫にしまった。


 馬屋に行くと、スミレと馬達は牧場に行ったようだけど、バロは二頭ともおとなしく馬屋で寄り添っていた。仲良いんだね。



「可愛い~!」



 バロ二頭が寄ってきて顔をすりつけてくる。ベン爺さんが言うには愛情表現らしい。ミーちゃんとカイ、ルーくんにラルくんもバロにスリスリしてる。カヤちゃんと俺も頭をなでなでしてあげてます。カヤちゃんもバロと仲良くなった、これなら問題ないでしょう。



「み~」




 翌日、ペロ達はお休みにしてもらい、ヤン君家族の引っ越しの手伝いを頼む。ララさんとカティアさんも掃除道具を持ってお手伝いをしてくれることになった。


 レティさんも誘ったけど、ヤダって断られた。こんにゃろうー!


 準備ができたのでみんなで馬車に乗り込む。スミレが連れて来た馬達の中でも比較的病状の軽い馬達は、完治してベン爺さんの調教も終わっている。ベン爺さんに言わせるとみんな賢い馬達で、調教という調教は必要なかったそうだ。スミレはそこら辺まで考えて連れて来たのかもしれないね。


 ヤン君達が住んでるのは南区の端も端、所謂貧民区と呼ばれる場所との境目辺り、多くの長屋が並ぶその一角にあった。馬車を降りるとヤン君とカヤちゃんが飛び出して出迎えてくれた。


 取り敢えず、イルゼさんにはカティアさんと一緒にこの地区の区長さんの元に行ってもらい、借金の返済と住まいの引き払いについて話をして来てもらう。


 ペロとルーさんには粗大ゴミの搬出をお願いして、俺とミーちゃんで荷物を収納していく。その後、ララさんとヤン君、カヤちゃんが掃除に入る。


 粗大ゴミは外に出すと貧民区の人達が勝手に持っていく。貧民区の人達にすれば宝の山なのかもしれない。お子ちゃま達も一生懸命運んでいるので、ミーちゃんクッキーを配ったらとても喜んでくれた。ミネラルウォーターも一杯ずつ飲ませておいた。貧富の差はどんな世界にもある。こればかりは何かしてあげたいとは思うけど、俺ではどうしようもない……。


 家具類などは部屋にあるので必要ない。家事道具もキッチンに全て揃っているから必要ないなんて選別してると、持って行く物はたいした量ではなくなっていた。



「うちってこんなに広かったんだね」


「ビックリだね~」


「み~」



 まあ、荷物を全部出せばそんなもんだよ。さあ、掃除しちゃいましょう。粗方、掃除も終わった頃、イルゼさん達がこの区の区長さんを連れて帰って来た。家の明け渡しに鍵の返却、家の中の確認もあるからだろうから。


 一通り確認も終わり、家の引き渡しも完了。家賃や借金の返済も滞り無く終わったそうです。流石、カティアさん頼りになります。


 近所への挨拶も済んだようなので家に行きましょう。慣れ親しだ家を後にするヤン君家族は感慨深いものがあるようだったね。



「み~」





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