175神猫 ミーちゃん、神猫商会壱号店の開店の時間ですよ~。

 数日後、ヴィルヘルムの神猫商会壱号店の表側が完成して店頭販売販売できるようになりました。居住スペースの方はまだですが、二人が寝起きするだけなら問題ないようなので宿を引き払いこちらに移るそうです。


 開店するにあたり、新たに暖簾とのぼり旗をララさんとヤナさんに作ってもらい。店頭販売の準備をします。


 屋台の方では、来てくださってるお客さん達にお店ができるので今後はそちらでの販売になる事を伝えてもらっている。


 そして今日、神猫商会壱号店の開店の日です。今まで売っていた物の他に、味噌汁もメニューに加え、他には、切り餅、きな粉、味噌、醤油、ニンニク油の小売り販売もします。


 メイン通りのすぐ近くで人通りも多い場所なので、立地条件も問題ないし商店街とハンターギルドがすぐ傍です。多くの人に来てもらいたいですね。


 ミーちゃん、神猫商会壱号店の開店のお時間ですよ~!


 開店と同時にお客さんが注文してきます。ミーちゃんはカウンターの上でお客さんと握手会になっている。この店のオーナー兼マスコットだからね。


 今日は開店日なので、全品半額セール。ただし小売り販売物以外ね。それでも切り餅が飛ぶように売れてます。腹持ちが良いのでハンターさんが買って行くようです。餡子も売ってくれと言われますが、それは作るのが大変なので勘弁して下さいって言って断ってます。代わりにお餅の食べ方レシピを店頭に紙に書いて貼ってますよ。


 各ギルドのお姉さん達もここぞとばかりにお団子を爆買い。他には、いつも通りアレックスさんとクラウディアさん目当てのお客さんで一杯です。


 味噌汁は売れ行きがいまいち。なので、試供品として通常の三分の一の量で無料で配り飲んでもらってます。損して得取れですよ。


 一旦、お店を二人に任せて商業ギルドに向かう。屋台販売の為の場所の解約の為です。



「これはこれは、神猫商会様。本日はどのようなご用件で」


 屋台販売の為の場所の解約に来たと伝えると、いつかの担当者さんが残念がっている。



「そうですか……屋台の方はおやめになると」


「お店の方が開店できましたので」


「そうでございますね。大変なご盛況ぶりのご様子。そうですか……屋台の方はおやめになるのですね……神猫屋さんのお陰で中央広場の他の屋台の売り上げも伸びてまして……どうでしょう、屋台もこのまま続けると言うことは無理でしょうか?」


「うーん。人手がねぇ。それにうち独自の技術でやってるので、信頼できる人じゃないと駄目なので今すぐは難しいですね」


「そうですか……残念です。屋台はどうされるのですのです?」


「ルミエール王国の王都ベルーナで使う予定です。あちらが神猫商会の本拠地なので」


「そうですか……更に残念です」



 契約解除も済んだので店に戻る。昼近くになりお客も落ち着いてきた。ミーちゃんの握手会は続いているけどね。今は街のお子ちゃま達が相手のようです。


 後ろのテーブルにお昼ご飯を用意して交代しながらお昼にする。ミーちゃんなかなかお昼ご飯が食べられません。



「みぃ……」



 頑張れ、代表!



 陽が暮れ始めてもお客さんはひっきりなし。ハンターギルドの近くに店を出したのは正解でした。結局、九の鐘がなるまで店を開けてました。


 店を閉めたからと言ってこれで終わりではありません。これから、明日の仕込みです。毎日する訳ではありませんが、今日が盛況だったので在庫がだいぶ減っている。三人で手分けして作っていきます。終わったのは十一の鐘が鳴った後でした。


 ミーちゃんバックから、夕食を出して夕食を済ませてから倉庫の屋台を収納し帰りました。


 疲れたね~。お風呂入って寝よう。



「み~」



 そして、服を脱ぎお風呂の扉を開けると、レティさんが居ました……生まれたまんまの姿で、生まれたまんまの姿でね。大事なことなので二回言ったよ。



「ふー。風呂は良いな、少年。どうした入らないのか?」


「な、なんで、レティさんが居るんですか!」


「好きな時に入って良いと言ったのは、少年だろう?」


「言いましたが、お風呂に入る時は、男女別の入浴中の札をさげておくって教えたでしょう!」


「ん? 忘れてたかな? まあ良いじゃないか、こんな美人のお姉さんの裸が見れたんだ、目の保養にはなっただろう? それより、そこにさっさと座る。お姉さんが体を洗ってあげようじゃないか」


「け、結構です。自分で洗えます」


「まあまあ、照れるな。体洗ったくらいで子はできんよ」


「そいう問題じゃないでしょう!」



 はい、綺麗に洗われました。三助さんにさえ洗われた事がないのに……グスン。ミーちゃんも綺麗になろうね……。



「み~」



「なんだ人の顔をジロジロ見て、惚れ直したか?」


「レティさんって魔族なんですよね」


「魔族……そう呼ばれてるな。本来は氷族と紅霊族のハーフが正しい」


「……」


「なんだ? 言いたい事があるなら言えば良い。今夜、しとねを共にしたいと。少年にはまだ早いが、添い寝ぐらいならしてやらんでもないぞ」


「誰が言うかぁー!」



 この人疲れる……。ミーちゃん我関せずって湯船の縁にだら~んとしてまったりしてます。頭に手拭いでも載せましょうか?



「はぁ……一つだけ、一つだけ聞かせて下さい。それによっては彩音さんに頭を下げてお願いしても良いです」


「……」


「ここに来た事に後悔はしてませんか?」


「……まだ、わからない。と言うのが本音かもしれない」



 そう言って少しの間、考え込むように無言になった。



「少年、自由とはなんだ? 自分で考える、何を考えれば良い? 私は今まで命の恩人である大奥様の言う通り生きてきて、大奥様の期待に添えるように努力してきた。この命と身体は大奥様の為に捧げると思って生きてきたら、その大奥様から少年のものになれと言われ、それ以外は全て自由だと言われた……」



 レティさんは、俺の目をジッと見て目を離そうとしない。紅と蒼の瞳に吸い込まれそうな気分になってくる。



「少年のものになるのは構わない。大奥様の最後のご命令だからな。だが、自由とはなんなんだ? 私は今まで大奥様の言う事を聞いてきた。これからはどうすれば良い? これからは少年が私に命令してくれるのか?」


「俺はレティさんにお願いする事はあっても、命令する事はないでしょう」


「なら、私はどうすれば良いんだ? 少年は私の主だ、教えてくれ、少年……」



 彩音さんがレティさんに、陽の光をを見せてあげて欲しいと言った意味がなんとなくわかった気がする。この人はずっと暗い世界に居たのだろう。自由になるなんて考えられないような世界。上の者に命令されて、それを忠実に実行する。余計な事を考えず、言われた事を機械のようにこなしていく。


 楽な生き方と言えば楽な生き方かも。命令されればなんでもやる。全てを相手に委ねて善悪の判断すら必要ない、何も考えず命令を全うすれば良い。なんて悲しい生き方だ。でもそれって、生きてるって言えるのかな?



「陽の光を浴びて生活しましょう。先ずはそこからです」


「み~」





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