174神猫 ミーちゃん、ネロの鈍感さに頭を抱える。

 ジンさん達の所に戻って来た。



「話は済んだのか?」


「はい」


「どんな話をされた?」


「俺と同郷の方で昔話を」


「そうか……」



 信じてないね。でも、しょうがない。こればかりは話せない。


 レティさんは後日うちに来るそうだ。彩音さんには味噌と醤油の他、プリンとミーちゃんのミネラルウォーターを五本置いてきた。無くなったらまた届けるとも言ってある。少しでも長く苦痛のないように生活して欲しい。



「み~」



 ミーちゃんの願いでもある。



 帰る為、玄関を出ると直感スキルが警報を鳴らした。すぐにジンさんの後ろに隠れる。



「どうし……おっわっ!」



 飛んできた矢をジンさんは短剣で叩き落とす。人間業じゃないよね。



「ネロ! お前、盾にしたな!」


「ジンさんなら死にそうにないし」


「お、お前ぇなぁ……。しかし、気付いていたが、まさか仕掛けてくるとはなぁ

 」


「来るぞ」



 あらあら、ぞろぞろと大勢で押しかけて来ましたね。



「義賊ギルドの客人と知っての狼藉か!」



 ミストレティシアさんが問いかけるけど返答はない。義賊ギルド側からも数名出てくるが、相手の方が余りにも多い。



「白昼堂々とよくやるわねぇ~」



 ローザリンデさんが気の抜けた声で話しながらも、矢を射って襲撃者を倒している。ジンさんもグレンハルトさんも鬼神の如き強さで相手をなぎ倒していく。


 向こうの屋敷の屋根の上から矢を射って来る奴が邪魔だね。ミーちゃんを肩に乗せ、ライフルを取り出して立ち撃ちで狙う。この距離なら外す方が難しい。撃たれた相手は何が起きたかわからないといった顔をして屋根から落ちていく。


 戦い開始から、ものの数分で決着がついた。



「さ、流石、五闘招雷ですわ……」


「ネロのそいつ、凄ぇな」


「私の活躍が霞んじゃった……」


「手加減できん理由がわかった」


「この後の後始末は我々にお任せください。まさか、堂々と攻撃を仕掛けてくるなんて……これで我々は是が非でも陛下側に付くことになりましたわね……」



 帰りは直接、うちまで馬車で送ってくれた。




「ネロ……儲けてるんだな……」


「金は天下の回り物。その日暮らしが楽で良いんでしたよね?」


「ま、負けたぜぇ……」




 家に入り全員をリビングに集める。ユーリさんには後で話をしよう。


 口外無用と言ったうえで貴族の反乱について簡単に話す。うちに居る人はある意味、陛下側の人ばかり。ルーさんとユーリさんが中立の立場なんだけど、うちに住んでる以上そうも言ってられない。


 俺以外には表立って仕掛けて来るとは思えないけど注意は必要だ。



「外出する時は気をつけてください。一人で出掛ける事のないように。できるなら、ペロやセラを連れて行ってください」


「俺も手伝うぜ」


「ルーさん助かります。それから、ユーリさんの帰りはみんなの持ち回りで迎えに行く事にします」


「み~」


「それから、うちにもう一人、住人が増える事を先に言っておきますね。神猫商会の警護担当として雇う事になりましたので仲良くしてください。部屋の準備をお願いします」


「み~」


「承知しました」



 早い所、決着をつけて欲しいね。おちおち、寝ても居られないよ。


 その日の夜、レティーツィアこと、レティさんがバック片手にうちに来た時は全員固まっていた。



「こ、こいつかよ……」


「凄腕ネーちゃんにゃ……」


「にゃ……」



 ルーくんとラルくんは新しい遊び相手……もとい住人に喜んでいます。レティさんの足元にまとわりついて離れません。レティさんはどうして良いかわからず戸惑い顔。



「少年。どうにかして欲しいんだが……」


「遊んであげてください。そのうち慣れますよ」



 今日はセラがユーリさんを迎えに行ってくれた。戻って来てからレティさんを紹介して現状の状況を話す。



「この魔族の女が神猫商会の警護担当なのですか?」



 ユーリさんにしてはキツイ言い方だね。魔族に対して何かあるのかな?



「我々エルフ族は魔族と昔から北方で争って来た間柄。ネロ君のお願いでも、すぐに馴れ合う事はできません」



 成程。魔族が魔王に下った後、魔王の侵攻を防いでいたのは北のエルフ族と本に書いてあった。ユーリさんは北のエルフ族なのかもしれない。そう言えば、最近知ったのだけど、この世界のエルフは長寿じゃないそうです。他の人族より若干長生き程度なんだって、ロリBA……ユーリさんそんな怖い顔で睨まないでください、美人が台無しですよ……。



「みぃ……」


「安心しろ。エルフに興味は無い。この身は少年に捧げたのだ。少年の意に反する事をするつもりは無い……嫌がらせはするかもしれんがな。クックックッ」


「み、み、身を捧げたですってぇ!」



 あぁ……さっそくの爆弾発言。嫌がらせって、俺に対してか?



「わ、私だってネロ君に身を捧げる覚悟くらいあります! その程度で勝ったと思わないでください!」


「ほう。あんな事や、こんな事。お嬢様のエルフ嬢にできるのかな?」


「で、できるに決まってるではないですか!」



 なんか知らんが、仲良くなったようだね。ひと先ず安心。もう、夜も遅いし寝ようか、ミーちゃん。


 あれ? どうしたのミーちゃん、頭に前足載せて身をくねらせて新しい踊りでも考えた?



「みぃ……」





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