166神猫 ミーちゃん、ネロの鈍感さに改めて呆れる。

 ミーちゃんとカイをララさんに預けて、ルーくんとラルくんを連れバロが引く馬車改め竜車を馬屋に連れて行く。



「バロを飼うのかのう?」


「友人のユーリさんが今日からうちで生活するので、ここからギルドに通うのに手に入れたようです」


「なら、番いになるバロも飼った方が良いのう。こう見えてバロは寂しがり屋でのう。仲間がいんと落ち着かんのじゃ」


「そうなんですか……なら飼わないと駄目ですね。ベン爺さん、お願いできますか?」



 ベン爺さんは竜車からバロを外して牧場に放してやる。バロは俺とベン爺さんをジッと見てから走って行った。ルーくんとラルくんも一緒にね。



「昼飯食ったら、一緒に連れて選んでくるが良いかのう?」


「はい、お金はルーカスさんに言ってください」



 竜車は馬屋の横の倉庫にしまっておく。まだ、何も置いていないのでがらーんとした状態です。なんか寂しいね。


 家の中に戻るとカイはミーちゃんにべったり状態。ユーリさんが言ってた通り、カイはちょっと甘えん坊さんなのかな。


 ルーカスさんに今日からユーリさんも一緒に生活する事になる事を説明しておく。



「承知しました」



 ルーカスさんにしては意味深な顔で言ってきたのが気になる……。



 お昼時になったので、ユーリさんをララさんに呼びに行ってもらい、みんなで昼食にした。


 ルーくんもラルくんもカイが一緒にいるのが嬉しくて離れる様子がない。ミーちゃんと一緒になってカイのお世話をしている。



「ユーリさん、午後の予定は?」


「持って来た荷物の整理でしょうか」


「なら、ララさんとヤナさんに手伝ってもらえば良いんじゃないかな? 早く終わるし、これから必要になってくる物も二人ならわかるから、その後に二人と買い物にでも行けば良いんじゃない?」


「いえ、でも……」


「「承りました」」


「はぅ……」



 昼食後、窓際で読書の続き、ミーちゃんとカイ、ルーくん、ラルくんがカティアさんに遊んでもらっている。するとルーくんとラルくんがまた窓の外を見始めた。


 ベン爺さんが帰って来たのかな?


 外に出るとその通りでした。違うのはバロ用の竜車ではなく、馬用の荷馬車を引かせていた事かな。



「ルーカスと話してのう。ついでに買って来たんじゃ」



 スミレが連れて来た馬達も元気になればみんなの足になってくれるから良いと思うよ。


 番いのバロは、ユーリさんのバロと全く見分けがつかない。別嬪さんじゃろうって言われたけど、曖昧な答えしか返せず苦笑い……。


 スミレと馬達の所に行くと半数は牧場に行ってるようだ。ミネラルウォーター入りの水も飲んでるようなのでこの分なら問題ないでしょう。ミネラルウォーターも追加しておく。


 ユーリさん達がララさんとヤナさんと買い物に行くようなので、外に出て来てバロとバロの引く荷馬車を見て驚いてる。おそらく、西門から出ている定期馬車を利用するとつもりだったんだろうけど、せっかくなのでそのまま乗って行ってもらおう。


 見た目ちょっと不格好だけど、我慢してもらおう。やっぱり、自由に使える馬車があるのは便利だね。




 今日の夕飯はユーリさんの歓迎会という事で俺も調理場に立つ。作るのは天ぷら、薄力粉は見つけてあります。ベーキングパウダーなんて物はありませんが重曹を代用。なんとかなると思う。


 天つゆも作りたいところだけど鰹節がない、昆布みたいなのは見つけてるので今度チャレンジしてみようと思ってる。なので、醤油と塩で食べてもらう。


 下準備は万全、三枚におろした魚、野菜、小エビと貝柱のかき揚げ、大きいエビを全部売ってしまったのは痛かった。まあ、今度の楽しみって事で。


 陽が暮れてみんなが帰って来る。ペロもルーさんもセラも汚れまくりだったので、速攻、風呂行きを命じる。どうやら、自主練して来たようだ。



 みんな揃ったので、天ぷらをみんなの前で揚げ始める。フライやから揚げは一般的だけど、天ぷらは初めてだろう。みんな興味津々です。揚げたてをみんなに配ると、ハフハフ言いながら食べるのはお約束。



「サクッとカラッと、素材の旨さを引き立てるにゃんとも高貴にゃ味ですにゃ」



 流石、食通のペロ、言う事が違うね。高貴な味かぁ~、嬉しい事を言ってくれるね。ペロには多めに揚げてあげよう。



「それにしても、あのユーリが押し掛け女房して来るとはなぁ~」


「な、何を言ってるんですか!」


「ユーリにも春かぁー。俺も身を固めてぇなぁ~」



 ヤナさんが顔を真っ赤にして咳き込み、ララさんに背中をさすってもらっている。やはり、脈ありか?



「みぃ……」



 ミ、ミーちゃん、久しぶりの残念な子を見る目。な、なんなの? ちょっとゾクゾクしちゃったよ。



 さてと、気を取り直してかき揚げを揚げていく。出来上がった物からご飯の上に載せ作って置いた天丼つゆを、サッと掛けみなさんの目の前に置く。


 俺とペロ以外はスプーンで頂くが、俺とペロは箸を使って頂く。ペロと初めて食事をした時、俺が自前で用意した箸を見て、ペロが使いたがりずっと練習していたのだ。今では普通に使っている。あのにゃんこの手……まあ、普通の猫に比べれば指は長いけど、よくあの手で使えるものだと感心してます。



「こ、これは……親子丼と世界を分かつ旨さにゃ~♪」



 いやいや、ペロくん。丼ものの奥深さはこんなもんじゃないですよ。カツ丼、海鮮丼、中華丼まだ見ぬ世界が広がっているのだよ!



「そ、そうにゃのか……ペロはまだ入り口に立っただけにゃのにゃ……。ペロは丼を食べて食べまくるにゃ。それがペロに課せられた使命にゃ!」



 勝手に使命にしないでください。結局、作るのは俺なんだからね。



「ネロ! おかわりにゃ!」


「み~♪」




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