165神猫 ミーちゃん、カイが同居する事になり喜ぶ。
今の一連の動きは想定通りで良かったと思う。相手に反撃させる時間を与えず、相手に隙を作らせ二手三手先までの余裕を作りその間に止めを刺す。
その為のスキルのコンビネーションパターンもいくつか作っている。これに痺れ薬などを織り交ぜて戦うのが、俺の戦い方。
しかし
「なんて卑怯な戦い方だ! 恥を知りたまえ!」
となる。
ジークさんは俺に剣先を向け、怒りの炎に包まれている。
「なんとでも言ってください。俺はあなたのように体格に恵まれておらず、力も弱い。剣で戦ったら勝ち目はありませんよ。そんな俺が、わざわざ自分にとって不利なあなたの得意な戦い方をすると思っているのですか? そう思っているなら、それこそ愚の骨頂。そんなあなたと戦えば百戦して百勝する自信がありますね」
「グッ……」
「やめよ、ジーク。ネロ殿の言う通りだ。それに、今の事を卑怯と言うなら、英雄セリオン殿も卑怯と言う事になるぞ」
「しかし、先生!」
「セリオン殿も体格に恵まれなかった。だからこそ、スキルの力を磨いたのだ。我らが剣術を磨くのと同じようにな。ネロ殿、我が弟子の戯言許されよ。ジークも頭でわかっていても、心がまだ未熟ゆえに感情に流される」
「いえ、お気になさらずに」
「そうにゃ! ネロが本気にゃら、もっと卑怯にゃ手を使うにゃ!」
「「「……」」」
ぺ、ペロ……それ、全然フォローになってないからね。あらぬ誤解を生んだだけだよ。きっと……。
「みぃ……」
ギルド内に戻る時ルーさんにミネラルウォーターを渡すと、顔を引きつらせながらも飲んでいたよ。
「少し見ない間に、ネロ強くなってねぇ?」
「俺だって日々進歩してるんですよ」
「大気スキルもすげぇけど、土スキルは別格だな」
「そうですね。攻めて良し守って良しのスキルです。唯一の欠点は木でできた建物の中では無力と言う事ぐらいでしょうか」
「でも、ネロには大気スキルもある。死角無しじゃん」
「今日、確信しました。戦いで一番大事な事。戦いの最中はどんな事があっても気を抜いては駄目だと言う事。油断、傲り、侮りが最も犯してはいけない行為であると言う事です」
「嘉言よねぇ~」
「うるせぇー」
さてと、帰りますか。ミーちゃん良いかな?
「み~」
ミーちゃんテラとカイに張り付かれ身動きできない状態。嬉し悲しの複雑な顔でお別れのペロペロを始めました。
家までの帰り道
「俺、なんか目覚めた気がするわ」
「ペロもにゃ!」
「にゃ!」
目覚めるって……変な事に目覚めないでくださいよ。
「よし、明日から俺達なりの鍛錬しようぜ!」
「賛成にゃ! 世のにゃか強い人が一杯にゃ。一人にゃ無理でも二人にゃら、二人で駄目にゃら三人にゃ!」
「にゃ!」
「俺達、最高のパーティーだぜ!」
「にゃん援隊にゃ!」
「にゃ!」
なんか燃え上がっています。異常な程に……ほどほどにね。ヤン君も居るんだから。
翌朝、夜が明けきらぬ内に西門の衛兵さんがやって来た。スミレが戻って来たみたい。すぐに着替えてスミレを迎えに行く。ミーちゃんはまだコックリ、コックリの状態。
西門に着くとスミレの他に八頭の馬がいた。みんな貧相な姿なのでびっくり。鑑定してみると、重病なんてのもいる。成程、スミレの意図が読めましたよ。
ミーちゃん、スミレにお帰りのスリスリ。俺もスミレを撫でてやる。取り敢えず、家に戻ろう。
馬屋にみんなを入れ、起きてきたペロとルーさんにベン爺さんと手分けして体を洗ってあげる。その後に全ての水の入った桶にミネラルウォーターを一本ずつ入れていく。それを見たルーさんがギョッとした目で見ている。
「なんとも貧相な馬達ばかりじゃのう。みな、若いのが救いと言う所じゃな」
「スミレはワザとそう言う子達を集めて来たんですよ。スミレも俺達と初めて会った時はもっと酷い状態でしたが、こうして元気になってます。ここにくれば良くなる事を理解した上で、自然界では生き残れないと思われる子達を連れて来たんです」
ぶるるって、当然でしょ! って顔されてます。疲れたでしょう。ゆっくり休んでね。
ベン爺さんに後の事を頼み家に戻る。ペロとセラ、ルーさんは急いで朝食を食べ出掛けて行った。
今日こそは、ゆっくりしよう。
「み~」
窓際の椅子に座って本を読む。ミーちゃんは膝の上、ルーくんとラルくんも足元でうたた寝。うーん、このまったり感がなんとも。
一度、ヴィルヘルムの様子を見に行こうかな、なんて考えてたりしたらルーくんとラルくんがむくっと起き上がり窓の外を見ている。誰か来たのかな?
しばらくすると、来客を知らせる呼び鈴が鳴りルーカスさんが応対に出たみたい。
「ネロ様、ユーリ様がお越しでございます」
ユーリさん? 何の用だろう?
部屋に呼んでもらうと
「不束者ではございますがよろしくお願いします!」
大きなバックと、カイの入った籠を持った状態で頭を下げてきた。
ああ、部屋の件だね。
「みぃ……」
えっ、ち、違うの?
と、取り敢えず、座ってもらってお茶でも頂こうよ。
カイが籠から出てきてミーちゃんにこんにちわ、ミーちゃんがお返事代わりのペロペロ。ルーくんとラルくんも加わって楽しそう。
「荷物はそれだけですか?」
「いえ、まだ外に……」
外に出ると玄関前に小さいバムが引く一人用の馬車が止まっていた。後で聞いたけどバムではなく、バムの小型種のバロと言うそうです。近寄って見ると、なんとも愛嬌のある顔をしている。
ミーちゃんが頭に飛び乗っても、ちょっと目を動かしただけで動かない。バム同様におとなしい種族のようです。
馬車? から荷物を収納して部屋に戻り、ユーリさんに今日の仕事はどうしたのか聞くとお休みをもらったそうです。それなら、もっとゆっくりくれば良かったのに。いつも夜遅くまで働いてるから大変でしょうに。
ララさんから部屋の用意ができましたと声が掛かったのでユーリさんを案内する。部屋に荷物を置きお昼まで二時間程あるのでそれまで休む事を勧める。
「ですが……」
「疲れてるでしょう。馬車はしまっておきますから、少しでも休んでください」
「み~」
「はい、そうさせてもらいます」
「カイは預かりますね」
ミーちゃんと一緒に抱っこする。カイはミーちゃんにスリスリして甘えてる。ミーちゃんこれからカイが一緒に住む事になり嬉しそうだね。
「み~」
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