164神猫 ミーちゃん、ペロとセラの強さに感動する。

 ギルドの裏の訓練場に来ています。


 絶賛しごき中です。ルーさん泥だらけ痣だらけ、それでもこの貴重な時間を惜しむべく絶剣さんに向かって行ってます。


 その隣ではジークさんとペロとセラが模擬戦をしている。



「にゃはは! これならどうにゃ!」


「にゃ!」


「クッ!」



 いつの間にかペロとセラのコンビネーションができあがっている。一緒に依頼を受けてたからな。なかなかどうして、凄いコンビネーションだよ。ジークさんを翻弄している。二人の様子を見ても本気を出していないのは明らか。



「しゃぁねぇな。遊んでやっかぁ!」



 ペロとセラの所にジンさんが参戦しました。ペロとセラに緊張が走ります。ジンさんいつもの獲物は大剣ですが、今は練習用の直剣二本を持って行きましたね。



「代わるぜ!」


「す、すみません……」


「ほれ、にゃんこ共どうした? こねぇならこっちから行くぜ!」



 二本の直剣を使い受け流し、攻撃し、受け止め攻撃。練習用の剣とは言え、二本同時に扱う力、そしてセンス、超一流です。完全に立場が逆転しました。



「ジンさん、ずるいにゃ! 剣は一本にゃ!」


「誰がそんな事決めたぁ。そっちは二人、こっちは剣が二本丁度良いじゃねぇか!」


「うにゃ……。仕方ないにゃ。セラにゃん、ジェットストリームアタックにゃ!」


「にゃ!」



 ジェットストリームアタックだとぉー!


 ジンさん正面にペロが立ち、その後ろに黒豹姿のセラがいる。



「ジェットストリームアタックにゃ!」


「にゃ!」



 ペロが、 ダッシュ、ステップ、フェイントを織り交ぜながらジンさんに仕掛ける。ペロとジンさんが打ち合った瞬間、ペロの後ろを走っていたセラが二つに分かれる。なんと分身ですか? 分身したセラの一つが飛び上がり上空からジンさんを狙う。空中機動スキルの成せる業だね。もう一つのセラはペロの足元から飛び出して、ジンさんの足元を狙う見事な三連攻撃。黒虎三連星の名に恥じぬ攻撃だ。


 しかし、敵もさることながらペロの剣撃を右手の剣で防ぎ、上空から攻撃してきたセラを左手の剣で受け止め、足元のセラを右足で踏んづけ防いでしまう。



「フンッ」



 ジンさんは全てを防ぎ、ニヤリと笑う。そう、この時ジンさんにほんの少しの、勝ったなと言う油断が生まれた。これが実戦だったら絶対に見せない油断だったろう……。



「セラにゃん! 今にゃ!」



 しかし、ペロとセラはここまで織り込み済み、ペロはそこから持っていた剣を捨て短剣を抜き攻撃を仕掛ける。


 ジンさんもペロの動きに反応。右手の剣を捨て腰の短剣を抜く、後から動いたジンさんなのにペロの短剣を防ぐ。そしてニヤリ、これがジンさんの二度目の油断。


 ペロとセラにとっては全てが筋書き通り、ジンさんの左手の剣の重みが急に無くなり、ジンさん気付けば黒い物体に顔を覆われて視界を奪われている。



「それまでよぉ~!」



 ジンさんの喉元にペロの二本目の短剣が突きつけられ、顔には猫化したセラが張り付いていた。



「フガフガフガァー!」



 やっとジンさんは張り付いたセラを引き剥がし、ゼハゼハ……と肩で息をしてます。



「し、死ぬかと思ったぜぇ……」


「ジンちゃん、今ので二回死んだわね」


「ああ、やられた……言い訳できねぇやられ方だぜ。にゃんこ共、見直した……いや、すまん完敗だ」


「まあ、この辺で勘弁してやるにゃ!」


「にゃ!」


「クックック……おめぇら、ほんと面白れぇな!」



 ジンさん、ペロとセラの頭をゴシゴシ撫でている。感動したミーちゃんもペロとセラに飛びついてペロペロの勝利の祝福を送っている。


 それにしても、油断って本当に恐ろしい……ジンさん程の実力者でさえ、油断すればこの有り様。気を付けないといけない。実力も無い俺では、瞬殺だろう。強くなりたい……そう思わせられる戦いだった。いや、強くならなければならない……。



「あ、ありがとうございました」


「うむ。剣筋は悪くない。たまに見せる思いっきりの良さも長所だろう。しかし、必ず二手目を考えて攻撃するのは良くない。格下相手なら有効だろうが、同等或いは格上には悪手だ。何度か打ち合えばすぐにわかる。一撃目の強撃が無い事がバレているので対処しやすい。気を付けたまえ」


「ご教授、感謝します」



 ルーさんの方も終わったようだね。ボロボロだけど晴れ渡った顔をしている。



「君の獲物は?」


「俺は後衛なので剣はほとんど使いません」


「ネロにちょっかい出すと痛い目みるぜ。絶剣殿」


「ほう。ジン殿にそこまで言わせるか」


「やめときな、ネロは純粋なスキル使いだ。本気でやったら俺でも勝てん」


「手合わせ願えないかな?」


「申し訳ありませんが、自分の武器は殺傷力が強すぎる為手加減ができません。他の戦い方もできますが準備が必要になります」


「それでは、いざという時どうするつもりだね」


「基本、武器はいつも携帯しています。武器の無い時はスキルでしのぎます」


「その武器とスキルの力見せてもらう訳にはいかないかな?」


「お姉さんも興味あるわぁ~」



 ジンさんに木製の皿を渡して上に投げる仕草を見せる。レーザーポインターのスイッチを入れ自然体を心掛ける。一騎打ちのガンマンの気分だ。



「良いのか」



 ジンさんの言葉に軽く頷く。



 ヒュンッ! バキッ!



 だいぶ陽の落ちた空に木片が飛び散る。



「なっ!」


「い、今のは……」


「凄い……」



 こちらに歩いて来ようとするグレンハルトさんの足元に、土スキルでほんの小さな窪みを作る。グレンハルトさんがその窪みに躓きほんの少しだけ体勢を崩す。それで十分、その生まれた隙にグレンハルトの体の周りに土スキルで石柱を作り動きを封じ込めた。



「先生!」


「大事ない。動けぬだけだ」



 石柱を訓練場の土に戻しグレンハルトさんを解放する。



「だから言ったろう。やめとけって」


「今の全てがネロ君一人の仕業なの……? 一体いくつのスキルを使ったの?」


「二つだけです。大気スキルと土スキルです」


「最後のはわかる。英雄セリオン殿の技だ。大気スキルについては見当もつかない」


「土スキルについてはその通りです。セリオンギルド長の逸話を聞いて練習しました。大気スキルについてはギルドに報告書を上げてるのでゼストギルド長に言えば見れると思います」


「ネロ、いつの間に土スキルにゃんて覚えたにゃ?」


「最近だよ」


「知らなかったにゃ」



 みんなをびっくりさせる為、ミーちゃんと隠れて練習してたからね。



「み~」




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