161神猫 ミーちゃん、ちょっと寂しかったです。

 この後、いろいろ打ち合わせをしてから王妃様に家のお礼をして宰相様の執務室に戻ろうとしたら



「良いわね。王宮に来たら必ず、ここに寄る事。ミーちゃんもね」



 と念を押されてから解放して頂いた……。


 ニーアさんからは家の方でご不自由はありませんかと聞かれたので、みんな良くしてくれてますと答えておく。実際にそうだからね。


 宰相室に戻れば戻るで奇異の目で見られている。俺はパンダじゃないぞ!



「それで、アンネリーゼ様はなんと」


「基本的な計画の変更は無いと。後程、宰相様をお呼びになるそうです」


「勇者については?」


「行く手間が省けた程度、すぐに隣国に手の者を使い情報を流せと。正式な使者は後日で良いと仰っていました」


「勇者と戦えと?」


「手は打ちます。しかし、上手くいくとは確約できません」


「それも?」


「了解を得ています」


「ふむ。で、どの程度の確率だ」


「勇者は五人。最低でも二人は落したいです。その為のカードをいくつか持っていますので」


「ゼロは無いと?」


「五人居れば五つの考えがあります。皆同じと言う事はありえません。そこから切り崩していこうと思います。最初にガツンとお前達は偽勇者だ! ってところからですかね」


「その程度で感情を乱すと思うかね?」


「聞いた話では、召喚される者は正義感が強いと聞きます。プライドも高いと言う事です。ロタリンギアでは下にも置かない、それこそ腫れ物に触るか如きの扱いを受けている事でしょう。神の加護を受けてない者達であるならば、増長していてもおかしくありません」



 ジンさん達は話について来れず一言も発しない。エルフの女性は笑みを浮かべて聞き耳を立てている。理解できてる様子だ。


 宰相様が得意の仕草で睨んでくる。あれ? なんかおかしな事言ったかな?



「一つ聞きたい。神の加護とは何だね?」



 おや? もしかして、知らないの? 別に隠し立てする事じゃないし良いか。



「神の召喚によりこの地に来た勇者は、神の加護を受けている事はご存知ですね?」


「無論だ」


「神の加護とは、心を守るスキルと考えて頂ければ良いかと。負の考えを排除してくれるそうです。純真な心を保てると言う事です。金、地位、快楽などの欲に溺れる事がないそうです。本当、聖人ですね」


「それは真で、誰から聞いた事かな?」


「つい先日までヒルデンブルグに居た事はご存知ですよね?」


「大公様と言う事か」


「惜しい。烈王さんです」


「烈王?」


「ヒルデンブルグ大公国の昔ながらの盟友です」


「ドラゴンか……」


「ドラゴンに会ったのかよ!」



 ジンさんが凄い喰いつきです。竜爪って二つ名持ちだからですかね。他の方達は唖然としている。流石にエルフの女性も信じられないと言った顔をしている。



「どうして君が……と言うのは愚言だな。君の神出鬼没さには呆れるばかりだ」


「向こうからの呼び出しですからね、断れませんよ。私はブロッケン山の牙王さんとも繋がりがありますから、その繋がりで呼ばれたようです。モンスターに偏見を持ってませんので」


「話をするには適任者と言う訳か……」


「ここだけの話ですが商売もさせて頂きました。大変喜んでくださり、ぽーんっと大金を払ってくれたので公都ヴィルヘルムにうちの神猫商会の本店より先に、支店を作ってきちゃいましたよ。あははは……」


「……」


「この子、商人なの?」


「複数の肩書持ちだぜ。宰相様付きの巡察使までやってやがる。もちろん、ハンター資格も持ってるぜ。それも王都ハンターギルドのゼストギルド長の直筆サイン入りのをな」


「何者なんだね」


「さあな。悪い奴じゃねぇのは俺が保証する。例の王都ハンターギルドの職員反乱事件の首謀者でもあるな」


「本部の肝入りを追い出した話ね」


「この少年が?」


「クビになりましたけど。ちなみに、十八過ぎてますからね!」


「「「……」」」


「羨ましいわねぇ~」



 ま、また部屋が一瞬で凍りつく様な寒さに……変な声も聞こえたけど。



「よかろう。では、その件は当初の予定通り君に一任しよう。帰る前に例の物を忘れずに置いていきたまえ。過労死だけは御免被りたいのでね」


「陛下には渡さないんですか?」


「……君が渡したまえ」



 代金は国庫から出るそうです。じゃあ、王様にも献上した方が良いね。レーネ様の悲しむ顔を見たくないので。帰る前に薬学機関に寄ってもらいニコラスさんに小瓶をいくつか譲って貰った。本の整理も終わっているのでいつでも引き取りに来てくださいとも言われたよ。



「あら、どうしたの?」


「宰相様での臨床試験が終わりましたので、陛下にこれをと思いまして」



 ニーアさんに小瓶を渡すとニーアさんの手が震えている。いつもミーちゃんが飲んでる水なんだけどね。流石に、鑑定してなかったようだ。内容を王妃様に報告している。



「各自、必ず一本は身に付けておけば安心でしょう。普通に飲んで健康維持して貰っても問題ありません。実際に宰相様はそれを飲んで不眠不休で仕事をしても死ななかったようですから」


「これをどうやって?」


「妖精族の秘薬とうちに伝わる秘伝の薬とだけ言っておきます。くれぐれも、パトリック所長には内密で。漏れた場合、二度と手に入らないと思ってください」


「わかりました。他言無用、しかと心に刻みます」



 ニーアさんからは何度も何度も頭を下げられた。


 門の所に行くとジンさん達が待っていた。ハンターギルドに行くので待っててくれたみたいです。帰り道、いろいろ聞かれてスルーするのが大変でした。


 ハンターギルドに着き中に入ると、ミーちゃん、テラ、カイが飛びついて来て顔中ペロペロです。


 寂しかったのかな?



「み~」





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