157神猫 ミーちゃん、神猫商会の代表として顔を売る。

 さぁー、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!


 商業ギルド前にテントが設営されテーブルが並べられている。魚の販売は商業ギルドでも久しくおこなわれていなかったという事で、多くの業者さんや料理人の方を呼んだ為気合が入ってるようです。もちろん、商業ギルドの職員さん達も手伝ってくれるそうです。


 テーブルに氷を敷いて魚介類を並べていき、カティアさんが紙に値段を書いて置いていく。魚屋さんになった気分。しかし、こんな値段で売れるんだろうか……買値の十倍以上の値段がつけられてる。


 カティアさんが言うには、安くすると他の商会の恨みを買いかねないそうです。それに実際に売る時に値下げ交渉があるのでこれで良いと言ってます。なので、会計係はカティアさんにお任せです。


 ミーちゃんは会計の机の上にちょこんとお座りして、神猫商会の代表して顔を売る事に徹します。


 既に多くの人が今か今かと待っていますので、準備が整った所で開店です。俺は接客係、テーブルに乗り切らない魚もあるのでお客さんの要望を聞いてミーちゃんバックから出すお仕事です。


 本当に多くの人が訪れてくれてます。今日は魚を売るだけで取引関係の話は後日おこなうと言う事にしている。同時進行には時間も人も足りないからね。


 新鮮だとか、どうやってこれだけの量を運んだんだとか聞こえてくる。通常魚を運ぶ際は、冷凍庫を備え付けた馬車で運ぶか収納スキル持ちの行商人が運ぶので、時間と手間が掛かり庶民では手が出ない程の値段になるとの事。


 王宮には魚を運ぶ為だけの専用の馬車があり、採算度外視ってギルベルト宮廷料理長が言ってたね。


 王都でも有名な料理店の料理長などは多くの料理人を引き連れて、大量買いしてくれている。多くは王都の料理店の方々が多く、他には仲介業者や貴族の料理人などが来てるみたい。魚を専門に扱っている商会もあるようだけど、金額が高いうえ量も限られているそうだ。専門といっても冷凍か干物なんだけどね。


 午前中で粗方来てくださった方達は捌けたけど、まだ多く魚は残っている。そんな時に、買い物途中の主婦らしき人が魚を売って欲しいと言ってきたので、商業ギルドの人に確認をとったら構いませんよと言ってくれたので売ってあげる事にした。


 それを見ていた人達が、自分にも売ってくれと言って来て自前で持って来た桶を持った人々で午前中以上にごった返している。所謂、高級魚と言われる魚は完売してるけど、一般の方でも買いやすい値段の魚が多く残っているのでどんどんおまけしたり、値引きして売り捌いていく。専門の商会や行商人さんは高級魚以外運ばないから、こうして一般の方向けの魚は珍しいんだろう。それでも、高い値で売れていく……カティアさん、もっとまけてあげて!


 お客さんが一杯でミーちゃんもみんなに愛想を振りまくのに大忙し。それでも、夕方前には、ほぼ売り切りました。残りはうちで食べれば良いでしょう。ミーちゃんもやりきったって良い表情をしています。


 今回の件で神猫商会の代表及びマスコットキャラクターとしての地位を十分に確立した事でしょう。


 撤収後に商業ギルドの一室で集計をおこない税金を納める。それでも、六百万レトの利益が出た。元手が八十万レト位だったはずなので、ウハウハです。


 商業ギルドの方達も久しぶりの大規模イベントで、商業ギルドの面目躍如なんだそうです。今回は一般客も受け入れた事から商業ギルドの株は更に上がると喜んでいて、神猫商会様様ですって言ってくれてます。ミーちゃんもドヤ顔ですよ。


 帰りにウイラー道具店に寄りシュバルツさんとカティアさんとの顔合わせをして、売れ残りだけど魚をシュバルツさんに差し上げた。たいしたものじゃないけど、とても喜んでくれました。


 翌日からは、午前中は魚の定期取引をしたいと言う方達が訪れて来てカティアさんと対応し、午後はウイラー道具店に行って荷ほどきのお手伝いをするという忙しい日々を送った。


 そんなある日、ユーリさんとカイが珍しい人を連れて家を訪れて来た。



「立派なお屋敷ですね……」


「ネロって金持ちだったんだな……」



 カイはミーちゃん達からペロペロされています。ユーリさんは今日、お休みのようです。ちなみに、珍しい人とは蒼竜の咆哮のルーチルさんことルーさんです。



「いやぁー、俺には合わねぇわ」



 ルーさん、ゴブリン討伐の個人依頼を受けたようですが、殺伐とし過ぎていて気が滅入ると言って依頼をキャンセル。暗闇の牙のパーティーと流れ迷宮の探索をしようとしたようですが、マッパーが居なく下層のモンスターのレベルも高くなり困難を極めて断念したらしいです。


 ハンターギルドもゴブリンとの戦いが始まった今、探索より二階層でのロックリザード狩りを優先させる方針に切り替えたので、それならとユーリさんの居る王都に来たそうです。



「あっちはハンターやら傭兵でごった返しているからよう。こっちで依頼を受けて稼ごうかなって思ってな、ユーリに相談したらここに連れてこられたのよ」


「そうなんですね。最近、ペロとセラがハンターギルドの依頼を受けてますから、王都に慣れるまで一緒にパーティー組んだら良いんじゃないですか」


「ペロにゃん、ハンター資格持ってるのか?」


「王都のハンターギルドのゼストギルド長に作って頂きました」


「ネロって何気に良いコネを持ってるよな……」


「部屋も一杯ありますから、好きな部屋使ってください」


「おっ、マジで! 王都の宿って良い金額すんのな。助かるわぁー」


「羨ましいです……」



 カイがうちに居ればミーちゃん達が喜ぶからユーリさんも移って来ても構いませんけど、ハンターギルドに通うには大変ですよ? ここ王都の端っこですから。



「す、少し時間をください!」



 俺は全然構いませんよ。ミーちゃんもカイと一緒に居れば嬉しいと思うからね。



「みゅ~」


「み~」





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