140神猫 ミーちゃん、ネロの服の中に逃げ込む。

 お茶と茶菓子が出て来たので遠慮なく頂く。ミーちゃんは、お仕事モードで俺の膝の上でお座りしてます。



「ふむ、こんなものか」


「あんまり、美味しくないわ」



 お茶を飲みお菓子を食べたドラゴンさん、遠慮なさ過ぎのお言葉。担当の方が愛想笑いしながら必死に汗を拭いてますよ。



「それで、神猫商会様はヴィルヘルムに支店を出されるとか」


「えぇ、大公様からご依頼を受けましたので、支店があった方がなにかと便利ですから」


「どのような用途の支店を出されるのですかな」


「事務所兼食品製造販売、後、居住スペースですかね」


「成程、住み込みの店舗と言う事ですな」


「良い場所ありますか?」


「すぐに調べさせます」



 部屋に女性が入って来て担当の方に紙を渡した。担当の方はその女性に何か指示を出している。



「こちらが納税額となります」



 紙に書かれた金額をミーちゃんに出してもらう。



「み~」



 担当者さんが呼び鈴を鳴らすと、職員さんと思われる人が二人来てお金を数え始める。


 商業ギルドの講習会で習った事だけど、お金は必ず本人の前で数えなくてはいけないそうです。それがルール!



「確かに全額頂きました。こちらが今回の納税証明書になります」


「み~」



 はいはい、これは大事な書類、早いとこファイリングしよう。支店の帳簿も作らないとね。



「それで、神猫商会様はどのような食品を扱われるご予定ですかな」


「今の時期ですと氷菓子がメイン。その他には保存食の販売をしたいと思います」


「保存食ですか……」



 担当者さんは本気ですかって顔をしている。まあ、そう言う顔になるのは予想してたけどね。あのガチガチのビスケットみたいなのを想像したんだろう。なので実演しましょう。コップを出して水を入れて、水スキルでお湯にする。ミーちゃん以外、驚いた顔になった。もちろん、ドラゴンの二人もね。


 そのコップに味噌玉を四分の一入れてスプーンでかき混ぜる。出汁も何も入っていない味噌汁だけど、この世界の人なら驚くはず。一般の人は調味料と言えば塩くらいな物だからね。


 担当者さんにコップを渡して飲む仕草をしてみせる。担当者さんは恐る恐るコップに口を近づけた。



「!?」



 フフフ……どうだ、みたか味噌の力を!



「こ、これは何ですか……」


「保存の効く固形のスープの素ですよ。そのままお湯に溶かして飲んでも良いですし、具を入れれば更に美味しくなります。大抵の食材と相性が良いので、使い方はいろいろです」


「これは保存食と言うだけでなく、調味料としても使えますな」


「その場合には、乾燥させない物が良いですね」


「それもあると?」


「『グランド ヴィルヘルム ノルド』の厨房には既に卸してますよ」



 ちなみに『グランド ヴィルヘルム ノルド』は今泊まってる宿ね。



「なんと、あの高級宿にですか!」



 さっき納税証明書と一緒に返された売買契約を担当者さんに見せる。



「ほ、本当ですな……いやはや、これはなんとも」


「まだ、知名度が低く生産量が少ないですが、この味を知ってもらえれば売れると思ってますよ」


「でしょうな……これは売れますよ」


「み~!」



 ミーちゃんの当然でしょう~って感じのドヤ顔が、ビシッと決まったね。


 そんななか、さっき来た女性が分厚いファイルを持ってきた。



「ご希望の場所はありますか?」


「メイン通り或いは、ハンターギルドの近くの人通りの多い通り沿いですかね」


「お高いですよ。ちなみに賃貸ですかご購入ですか?」


「できれば購入したいですね。賃貸だと中の間取りとかを改修できないので」


「ふむ、となるとメイン通りで三件、ハンターギルドの近くで二件ですな」



 資料を見せてもらったけど、よくわからないね。



「すぐ近くですので、今から見に行きますかな?」


「お願いします」



 一件目は東西に走る通りの東側にある大きな建物でした。大きすぎるので却下。二件目は西側の中央から少し離れているけどメイン通りの一本隣の通りの角にある、二階建ての倉庫付きの建物で裏に庭まである物件でした。三件目はメイン通り沿いの中央よりやや南側の、元は宿屋だったと言う物件。


 ハンターギルドに近い物件は、ギルドの裏の通りで商店街になってる場所に大小の建物が並んでいてその両方が物件でした。大き過ぎと小さ過ぎで却下。足して二で割れば、ここを選んでいたと思う。


 となると、庭付きの建物か、元宿屋になる。担当者さんに考えさせてくれと言って今日のところは宿に戻る事にした。


 宿ではペロ達がまだお子ちゃま達と遊んでいる。ラルくんも一緒になって走り回っているけど、全く違和感がないね。犬って事で押し通そう。うん、完璧。



「みぃ……」



 え!? 駄目ですか、言わなければわからないと思うよ。


 一生懸命、遊んでるみんなに果汁水でアイスキャンディーを作ってあげる。



「おぉー、ヒヤヒヤにゃ」



 ペロとお子ちゃま達には手で持てるように棒を付け凍らす。他の子達には皿に載せてあげた。


 部屋に戻り、ミーちゃんが膝の上で丸くなっているのを撫でながら、メイドさんが入れてくれたお茶を飲んでると



「先程のあれは異能か?」



 とアレックスさんが聞いてきた。丁度良いので、説明しようクラウディアさんにはそれをやってもらう事になるしね。



「違いますよ。水スキルです」


「え!? 氷スキルじゃないの」


「水スキルです」


「み~」



 コップに水を入れて湯気が出る程の熱湯にしてみせ、その後すぐにカチカチに凍らせて見せる。


 二人共口をポカーンと開けて固まっている。



「クラウディアさんの氷スキルってどんな事ができるんですか?」



 やっと我に返ったクラウディアさんは、別のコップの水を凍らせて見せてくれる。



「他には?」



 クラウディアさんは少し真面目な顔をしたと思うと部屋の温度がどんどん下がっていき、涼しいを通り越して寒くなってきた。メイドさん達は寒くて両肩をさすっている。ミーちゃんも寒くなって俺の服の中に入ってきた。


 ミーちゃん、猫だから寒いの苦手だもんね。ミーちゃん服から顔だけ出して、仕方ないでしょう~って顔で見つめてきたよ。



「みぃ……」





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